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 自由にしていいと言われても初めて訪れる家で堂々とくつろぐことは出来ず所在なさげにしていたが、空き時間の間に借りている情報端末の操作に慣れておこうとぽちぽちと不器用ながらに操作を確認していると、思いの外時間が経っていたのか扉の開く音が聞こえてきた。ほとんど無意識に顔をあげ音が聞こえた方へと視線を向けるとバスローブ一枚しか身に着けていないシンディの姿があった。湯上りのようで頬を少し紅潮させた彼女の豊満な身体はかろうじてバスローブによって隠されているだけで、少しでも激しい動きをすれば色々な部分が零れ落ちそうな程危ういバランスを保っていた。


「・・・あんたの家にはまともな服は無いのか?」


 てっきりまともな服装で戻って来るのかと思っていたが先ほどのネグリジェと大差無い恰好で戻って来たシンディの姿を見てアダムは頭を抱える。シンディはその反応を見てケラケラと笑いながらも見せつける様にポーズを取って見せる。


「そんな事言っても本当は嬉しいんだろう?もてなしてあげようと思って着てるんだ遠慮なく見てくれていいんだよ?」


如何に自分を魅力的に魅せるかを熟知しているシンディはその魅力に極力抗おうとするアダムの反応を完全に面白がっている。視線を逸らそうにも目の前でコロコロとポーズを変えられるとその美貌に否が応でも視線を誘導されてしまう。


「ほら!やっぱり興味あるんじゃないのさ。やせ我慢なんてしなけりゃいいのにねぇ。」


「あんたが魅力的なのは十分理解できたし認めるからさっさと準備に移ってくれないか?」


本能的に抗い難い誘惑に屈してしまったアダムは軽く舌打ちをすると大袈裟に顔を背けてしまう。意地でも思い通りにはならないとでも言いたげな様子にシンディは笑みを深くすると冷蔵庫から飲み物を取り出しアダムの隣に腰を下ろそうとする。


「待て待て待て、その恰好で座ろうとするんじゃあない。」


 慌てて立ち上がると座ろうとするシンディを押しとどめるとアダムは少し離れた位置に座りなおす。


「なんだい別にいつも着てるドレスとそう変わりはないじゃないか。昨日だって気にせずに隣で飲んでただろうに。」


「状況が違うだろう状況がっ!それに昨日の事は殆ど覚えてないからな、とにかく落ち着かんからさっさと着替えて来い!」


「えー!?昨日やったあんな事やこんな事まで覚えてないのかい?私だって少しは恥ずかしい思いをしたのにそりゃ勿体ない事をしたねぇ。」


 湯上りの火照りとは別物として少し頬を染めるシンディの反応に昨晩の自分が一体何をしたのかと不安が頭を過ぎるが思い出すのも不味い気がしてアダムはその件に触れる事はしなかった。むっつりと黙り込んでしまった様子にこれ以上からかい続けるのは得策ではないと判断したのかシンディは飲み物を飲み干すとソファから立ち上がった。


「もう少しお喋りしたい所だったけど仕方ないねぇ。着替えて来るから少し待ってな。」


 ようやくこの時間が終わるのかと安堵を滲ませるアダムを見て満足気に笑いながら鼻歌混じりにリビングを出て行ったシンディを見送り、残されたアダムはどっと疲れた気がして力を抜いてソファに身体を預けると目を瞑った。


(一体シンディは何がしたかったんだ?俺に過剰にサービスをする必要も無いと思うんだが。実際眼福ではあるんだが何か裏があるんじゃないと勘繰ってしまうな。)


 僅か二週間余りの関係でそれほど好意を寄せられるような事もしていないにも関わらずグイグイとアピールされており美女に迫られるのは悪い気はしないものの、多少ひっかかりを覚える事には間違いなかった。目を瞑りながらそんなことを考えていると先ほどまでのやたらと挑発的なポーズをとっていたシンディの姿が浮かんでくるが、それを振り払うように頭を振ると再度目を瞑り乱れた心を整えようとする。それから暫くの間静かなリビングにはアダムの規則正しい呼吸の音だけが響いていた。


 暫く静かな時間が流れた後、いつも酒場で来ているようなドレスでも身体のラインが隠れた私服でもなく一見するとスカベンジャーのような実用性重視の服装に着替えたシンディがリビングに戻ってくる。部屋の中では扉が開閉する音にも反応することなく先ほどと同じ位置に腰掛けアダムは瞑目し続けており、近づいてみても反応する事は無かった。


(待たせすぎちゃったかねぇ?ま、もう少し寝かしておいてあげようか。)


 寝息を立てているアダムを見ながら優し気な微笑みを浮かべると、眠りの邪魔にならないように静かにキッチンへと移動し、軽食の準備を始める。


(アダムさんの分も一応用意しておこうか。)


 手際よく調理を進めていくシンディはあっという間にシンプルなサンドウィッチを作り上げる。完成した物を皿に乗せるとアダムが眠るソファへと腰掛け食事を始める。


(男前を眺めながら摂る食事ってのもいいもんだね。対して上手くない材料でもおいしく感じるってもんさ)


 機嫌よく食べ進めていると美しい彫像の様に微動だにしなかったアダムの瞑られていた瞳が開き透き通るような碧眼と目が合う。


「悪い。眠ってしまっていたようだ。」


 申し訳なさそうな表情を浮かべるアダムに気にする必要は無いと笑いかけると自ら作ったサンドウィッチを差し出す。


「もし食事が作っておいたからこれを食べな。いらないなら私が食べ終わったら出発するよ。」


「ならお言葉に甘えて頂くとするよ。」

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