表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/89

55

 露店が立ち並ぶ広場の中には休憩用のスペースが設けられており、露店で買った軽食を摂ったり手に入れた物を確認している人の姿が見える。その一角でアダム達も集まり、備え付けられたテーブルに腰掛けてクマゾウの露店で買った物の確認をしていた。


「間違いなく材料は揃ってるな?他に必要な物があったりもしないな?もしあるなら今のうちに言ってくれ。」


 念を押すようにアダムが確認すると袋の中身を確認していたカズが顔を上げる。


「予定より多い量を入れて貰ったみたいだし大丈夫だよ。」


「よし、なら買い出しはこれで終わりだ。お前らへの報酬も今渡せるが渡しておこうか?」


 財布から小銭を取り出しアダムがそう言うと手に握られるクレジットを見てヒロがピクリと反応したが口を開く前にマサが口を塞ぐ。モゴモゴと何か言おうとしていたようだが意味のある言葉にはならなかった。その隙にカズが口を開く。


「俺らもおっちゃんが求める物を作れるか分からないから流石に今は受け取れないよ。」


「そうか、なら後払いにしておこう。だが別に作るのを失敗しても報酬は払うから気にしなくていいからな気楽に作ってみてくれ。」


 口を塞がれながらも視線でアダムの財布を追っていたヒロは口を塞いだマサの手を剥がそうとしていたがカズも加わりその動きも塞がれていた。わちゃわちゃとやり合っている三人を尻目にアダムは席を立つ。


「じゃあ俺は用事があるからもう行くぞ。三人で持って帰れるよな?」


「「大丈夫!おっちゃんありがとう!」」


 声を揃えて答えるマサとカズの声を背に受けながら端末を片手にシンディの自宅へと向かっていった。

 アダムの姿が遠ざかってから解放されたヒロは不満げに二人を見つめる。


「先に貰えるなら貰っておけばよかったじゃんか。」


「最初は大人しくするって話し合って決めただろうが、このバカっ」


「そうだよ。下手な事言っておっちゃんが怒ったらどうすんだよ。」


 マサとカズに詰められるが納得がいかないのか反論するヒロ、仲がいい故に歯に衣着せぬ物言いで続けられる口論はその後も止められる事も無く暫く続いていた。


 一方アダムはというと片手に持った情報端末のマップ情報を頼りにジャンクタウンの北側に向かって進んでいた。ジャンクヤードとは真逆の方向にあるこの区画は比較的倒壊の少ないようで孤児院の周辺の建物と比べても立派な建物が多いようだった。道行く住民の数もぐっと少なくなり、その身なりも随分と良くなっている上に、辺りを巡回している警備員の姿も見えた。


(シンディが住居を構えているのも頷けるな。この辺りでスカベンジャーのような恰好をしているだけで目立つし治安もかなりいいんだろうな。)


 辺りを見回しながら歩いているアダムの姿もかなり浮いており、巡回する警備員からも警戒の視線が向けられている事がよく分かる。背中に突き刺さる視線を感じながらもマップを頼りに進んで行くと、一際綺麗に整備されている大きな一軒家が見えて来る。家の周囲を鉄柵のついた塀に囲まれていた。


(マップが示しているのはこの家のようだが、入り口は何処にあるんだ?)


 家を囲っている塀に沿うように歩いていくとアダムの目に立派な門が映る。アダムが門の前に立っても開くことは無かったが門の脇に小さなボタンのついた機械を見つける。用途こそ良く分からなかったが門につけられている以上何らかの意味はあるだろうとボタンを押してみるが、特に何も起きる訳でもなく静かな時が流れる。何度かボタンを押してみるがやはり変化は見られなかった。時刻は正午を少し回っているが、明確に何時ごろに来るようにとは言われてはいなかったため少し早すぎたか、とアダムが考え引き返そうかと思った矢先に小さな機械から声が聞こえた。


「・・・何度もうるさいねぇ。いったい誰だい?」


 機械を通したせいなのか少し違和感はあったがその声は間違いなくシンディのようだった。


「俺だ、アダムだ。昼頃に来いと言われていたんで来たんだがまだ早かったか?もしそうならもう少し時間をつぶしてくるが?」


 少し申し訳なさそうにしながらアダムが機械に向けて声を掛けると応答は無かったがひとりでに門が開く。他に人影もないのに勝手に開いた門に少し目を見開くが、この世界で見かける未知の技術に驚かされて来て少し耐性のついたアダムはそれ程の動揺を見せなかった。


(門が開いたって事は入れって事だろ?とりあえず進んでみるか。)


 住居に向かって歩き出すと背後で門が閉まる音が聞こえる。中で操作したのかはたまた自動で閉まるものなのかは分からないがセキュリティはしっかりしているようだった。敷地内は広く一人で住んでいるとすれば少々手の余りそうな広さをしており、アダムがよく知る世界では中堅貴族の屋敷と言われても遜色ないような見事な外観をしていた。感心した様に住居に近づいていくと、玄関口の扉が開く。また自動で開いたのかと思ったがそこには気だるげな表情のシンディが立っていた。


「あんた自分の家だからってなんて恰好をしてるんだ・・・。」


驚きを通り越して呆れかえっているアダムの目の前でドアを支えるようにして佇むシンディの恰好は肌が透ける程の薄さのネグリジェでその魅惑の身体を包むだけといった有様で、かろうじで大事な部分は隠せているが非常に刺激の強いものになっていた。


「あら?私が自分の家でどんな格好をしていてもいいじゃないのさ。別に恥じる物でも無いしアダムさんだって目の保養になるじゃない。昨日随分飲んで愉快な事になってたからダウンしてるかと思って元気付けてあげようと思ったんだけど必要無かったみたいだね。」


 欠伸をかみころしながらアダムを招き入れるシンディはそのまま屋内を先導するように進み二階へと続く階段を上っていく。後に続く以上必然的に目の前で揺れる事になるシンディの尻をなるべく見ないようにしながらも広いリビングに到着する。


「とりあえずその辺に座って自由にくつろいでくれていいよ。私も準備してくるから。」


 眠そうな目をこすりながらリビングから出ていくシンディを見送るとアダムは広々としたソファに腰掛け準備が終わるのを待つことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ