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 いつもは一人で歩く通りも、三馬鹿と一緒だと妙に賑やかだった。露店が集まる広場まで、取り留めのない話が続いている。目立つ見た目をしたアダムが子供を引き連れて歩いていると普段と比べても周りの視線を集めていたが、特に後ろめたい事がある訳でも無いので気にすることなく進んで行く。


「ところでどの露店で材料を買うかは決まってるのか?」


 足を止めたアダムが後ろに続く三人へ声を掛けるとリーダー格のマサが答える。


「色んな品を扱ってる何でも屋みたいな露店があるからそこで買おうと思ってんだ。こっちの方にあるよ。」


 先導する立場を入れ替え子供達が先に進んで行く。道中はいつも通り敷物の上にガラクタを並べて売る者から、屋台で料理を振る舞う者まで、様々な連中が商売に励んでいた。人ごみを縫うようにして歩き続けて広場の端の方までやってくると一際大きな露店が見えて来る。何処かで見た事のあるようなその露店の前で立ち止まると子供たちはアダムの方を振り向いた。


「ここでよかったのか?」


「そうだよ、この露店街の中なら値段はともかく品揃えは一番なんだ。」


「ガキ共、一言余計だぞ。」


 釘を刺すように店の中から顔を出した店主は子供達の後ろに立つアダムに視線をやると意外そうな表情を浮かべる。


「なんだ?アダムじゃないか。今日はちゃんと売り物になる物を持ってきたんだろうな?」


 小柄なその男は、アダムとアキナが出会うきっかけとなったごろつき達の装備を買い取ってくれた露店商、クマゾウだった。体格に似合わない名を持つが、この辺りでは腕の立つ商人として知られている。あれ以降も度々やり取りを行った、この世界で数少ない「顔の利く相手」と言ってよかった。


「見覚えがあると思ったらあんたの店だったのか、今日は普通に客として来たんだが、いつもの場所で店を出していなかったから分からなかったぞ。」


「あぁ、俺としたことが今回は出遅れちまってな、場所取りを失敗したんだ。次の場所取りの時期まではここで店を出すしかないって訳だ。まぁお前らに関係の無い話だったな。それで?今日はどんな物がいるんだ?」


この場所に露店を出店するのにもルールがあるらしく軽く愚痴をこぼしたクマゾウだったが気を取り直して商売人としての顔を覗かせる。


「金を払うのは俺だが今回は付き添いみたいなもんでね。上手くいけば上客になるかもしれないから愛想よくしておいた方がいいぞ。」


 その言葉に訝し気な表情を浮かべ、三人の姿を見るが、子供にとっては大金と言える取引に尻込みしているのか中々話を切り出せずにいる。


「ちっ、仕方ねぇなあ?昨日来た時に言っていた物でいいんだろ?量までは覚えてねえがどれぐらいいるんだ?」


 言葉は荒っぽいがまごつく子供達に助け船に出すようにクマゾウが声を掛けると、おどおどとしながらもマサがポケットからくしゃくしゃになった紙を取り出す。何やら文字が書かれておりどうやら必要な材料と量をあらかじめメモしておいたようだ。


「これに書いてある量を売れば良いって事だな?」


 手渡された紙に目を通したクマゾウに聞かれると勢いよく首を縦に振る。並べられている品や手元に保存している物からクマゾウが商品を選び袋の中に詰めていく。アダムが想像していたより遥かに多い量が袋に入れられており、子供だけで持つには多少苦労しそうな程の量に見えた。


「これがメモ通りの品150クレジット分だ、お前とアキナから買い取った物で随分稼がせてもらったから少しずつおまけしておいてやるよ。」


「いいのか?そんなこと気にしなくてもいいんだが。」


「ま、少しでも恩に思うなら探索で得た物はなるべく俺に回してくれりゃあそれでいい。」


「確約は出来ないが頭には入れておくよ。今後俺の代わりにこの子らが同じ物を買いに来るかもしれないがその時はよろしく頼む。」


 財布からクレジットを取り出し支払いながらアダムがそう言うとその後ろで様子を見ていた三人は揃って頭を下げる。その様子を視界の端に留めながら品物が入った袋を手渡した。


「ガキ共を使って何をするかは知らんが上手くやるんだな。」


「任せてくれ上手くいけば効率的にクレジットを稼げるかもしれないからな。その時は売り上げに貢献させて貰うよ。」


 自信あり気な表情で白い歯を見せるアダムは袋を持って振り返ると様子を伺っていた三人を促し露店を後にした。

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