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けたたましい音が室内に響く。ベッドの上に横たわっていた男はゆっくりと身体を起こすと、ノソノソと騒音の元である情報端末へ向かった。操作方法に手間取りながらも目覚まし機能を止める、いったい誰が設定したのかは分からなかったが、とにかく午前の内に起きれたので待ち合わせ時間に遅れる事は無いだろう。
「・・・この感覚も久しぶりだな。」
数十年ぶりの二日酔いによりズキンズキンと痛む頭を押さえながら眉を顰めるとふらふらと部屋の扉と開けると洗面所の方へ歩いていく。昨晩の記憶は断片的にしか覚えておらず何時ごろに帰宅したのかも定かでは無かったが、自分の部屋で目覚めたので帰って来る事には成功したようだ。のそのそとゆっくりとした足取りで進むアダムは歩くたびに迫りくる吐き気と戦いながら洗面所にたどり着くと冷たい水でバシャバシャと顔を洗う。
「ひでぇ顔だなこりゃ・・・」
寝不足と二日酔いから軽いクマを浮かべ真っ青な顔で鏡に映る自分の表情を見つめながそう呟くと、逆流してきた物を戻さないように口を押える。ゴクリとそれを飲み込み口を濯ぐと大きくため息をついた。
「飲み過ぎるといつもこうなるのは分かってるってのに、一度飲みだすとこうなるんだよな・・・」
ブツブツと後悔の独り言を続けていたが何かを決めたように顔を上げる。誰も聞いている者は居ないのにドクターに会いに行くのにこの体調ではな、などと言い訳を口にする。
『光の女神に連なる者達よ我が体内に宿る毒素を浄化し癒す力をお貸しください。解毒魔法』
アダムの詠唱に答えるように柔らかな光が一瞬身体を包むと、身体を蝕んでいた二日酔いが随分と楽になる。
「この程度の二日酔い無詠唱でも問題なく治せたのに、ここでは詠唱まで入れても完全に治る事はしないか、だがまぁこれで動けない事はないだろう。」
威力が落ちるとはいえ先ほどまでとは違い格段に身体は楽になり、顔色も良くなっている。目立つことは避けるために魔法はなるべく使わない等と心に決めていたが、結局は二日酔いの辛さに負け魔法を使ってしまっていた。
(マナが回復しずらいとは言え、全くしないわけでは無いからな消費はデカいが数日大人しくしていれば問題ないだろう。)
そんなことを考えながら洗面所を後にして食堂へと向かうアダムだったが、食堂への扉の前に立ちふさがるように待ち構える三馬鹿と一纏めに呼ばれている少年達とばったり出くわした。
「おう、おはよう。どうしたんだそんなところで?」
「おはようじゃないんだよ、おっちゃん!俺達ちゃんと露店巡ってアレ作るのにいくらかかるか調べたのになんで昨日帰ってこなかったんだよ!」
呑気に片手をあげて挨拶するアダムに勢いよく食って掛かってくるヒロだったが後ろに控える二人も止めないため、同じ気持ちなのだろう。律儀にも頼まれた翌日には言われた通りにきちんと取引の為に動いてくれていたらしい。それなのにそれを頼んだ張本人が戻ってこなかったので憤りを見せているのだろう。
「すまんすまん、昨日は俺も用事があってな、それで幾らぐらいで作れそうなんだ?」
誤魔化すように笑いながら食堂の扉を開くアダムに三人は揃って疑わしそうな目を向けているが、渋々その後に続く。
「大体一個10クレジットぐらいで作れっけど、始めは材料もある程度まとめ買いしないといけねーし150クレジットぐらいかかるってさ。値段は俺が言ってるんじゃなくて露店のおっさんがそれぐらいだって言ってただけだからな!」
孤児院の子供達にとっては150クレジットと言えど大金であるためもしかしたら断られるのではないかという焦りから早口で説明する三人のリーダー格であるヒロは、自分の方を見ずに食堂の机に置かれている水差しから水を飲んでいるアダムを見上げている。何も反応を返して貰えないのでやはり高すぎたんだろうかと不安がよぎったが、水を飲み終えコップを机に置いたアダムが振り返る。
「よしわかった、それで?お前らの取り分はいくらぐらいほしいんだ?」
特に考える様子も無くそう言われた三人の頭の上には?マークが浮かぶ。お互いの顔を見合わせぽかんとしている三人の様子を見てアダムは一つ手を叩く。その音に反応して注目を自分に向けるとよく考えるようにと前置きをして話し始めた。
「なら俺は今からシャワーを浴びるから俺が上がって出てくるまでにいくら欲しいか決めておいてくれよ。何だったらそのまま露店まで材料を買いに行くの付き合ってやるよ。」
それだけ言い残すと食堂から出ていくアダムを三人はぼーっと目線で追い姿が見えなくなったところで我に返ったように顔を寄せ合って相談を始める。即決されるとは思っていなかったので何も考えていなかった三人は短い時間の間に結論を出さないといけない為焦りを見せながらも考えを巡らせている。




