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いつの間にかカウンターの上に置かれていたグラスを手に取り注がれていた液体を一息で飲み干すと、自らを落ち着かせるようにひとつ大きく息を吐いたシンディはまだ少し頬を紅潮させているものの、少し落ち着きを取り戻したようだ。
「大体予想は出来てると思うけどアダムさんには依頼を回そうと思っていてね。多少危険度はあがっちゃうけど構わないかい?」
「それぐらいは構わんさ、報酬が上がれば危険度も上がるのは当然だろう?」
「そう言って貰えて助かるよ、最近人手が足りなくってねぇ。受け手が居なくて焦げ付いた依頼が沢山あるんだよ。」
そのシンディの言葉から、現在のジャンクタウン周辺で活動するスカベンジャーの質が伺い知れる。官営武器店の閑散とした様子で薄々感じてはいたが、やはりこの辺りで一定以上の水準の実力を持ったスカベンジャーの数は少ないらしい。
「例えばどういった物があるんだ?俺に出来そうな依頼があるなら今受けてもいいが。」
人手不足に悩んでいた立場からすると、アダムの発言はまさに救いの手を差し伸べる救世主が如くでシンディからはその大きな背中に後光が差しているような錯覚が見える。実際女神の加護を得ているため似たような存在である事は間違いないのだが、この世界の住人にはそれは知る由もない事なので、あくまで焦げ付いた依頼と言うストレスの元から解放された事によるシンディの意識が生み出したイメージのような物だった。
「そんなこと言われちゃうと私もアダムさんの好意に甘えちゃうよ?」
「甘えるも何も俺はクレジットが欲しい、シンディは依頼を捌ける、両者得しかないじゃないかそうだろう?」
アダムはそう言うと気にするなとでも言いたげな様子で親指を立てニヤっと笑みを見せる。
「アダムさんがそう言うならお願いしちゃおうかな。おばちゃん端末よろしくねー。」
「あいよ、ちょっと待って頂戴よ。」
腰をかかがめるようにしてカウンターの下に納められているであろう依頼に関係した物の中をおばちゃんが探し出す。ガサゴソと響く音が止むと体を起こしカウンターの上に端末と依頼に関する資料なのか分厚い紙の束も並べられる。
「焦げ付いてる依頼だけでもこれだけあるんだけど後悔してない?」
カウンターに置かれた紙束は図書室で調べ物をする際に見かけるような辞書や図鑑といった比較的分厚い書物より厚みがあり、纏められてからそれなりの時間が経過している物もあるのか、独特の威圧感を放っていた。
「・・・まぁ想像より多かったのは確かだが構わないさ、それでどれから手を付ければいいんだ?」
「そうだねぇ、ならこの辺からお願いできるかい?」
何ページか毎に纏められている分厚い紙束をめくりその中の一つを掴むとアダムに手渡す。紙質はさほど劣化しておらず、この中では比較的新しい物らしい。手渡された資料に目を落とすと依頼の概要が記されていた。
「これはジャンクヤード内の危険な地域の調査になるのか?にしては外周も含まれているようだが?」
「スカベンジャーは命を懸けて探索する訳だから帰ってこないっていう事はそういう事なんだけど、ここ一年ぐらいで足取りが掴めなくなるスカベンジャーが増えてきていてね。酒場に来る連中から情報を集めてみたら、この辺りが怪しいんじゃないかって所はいくつか判明したんだけどね。肝心の調査に送り出したスカベンジャー達も戻ってこなかったんだ。この辺りじゃそれなりの実力のある面子も含まれてたんだけどね。その事実が広まると皆ビビっちまってそこの近くに看板まで建てて近づかないようになったから被害は減ったんだけど、結局解決はしてないのさ。」
シンディの話を聞きながら紙をパラパラと捲り内容を確認すると、被害に遭ったとされるスカベンジャーは分かっているだけでも百名以上は居るらしい探索に出た時刻や何名で行動していたかも記されているが、てんでバラバラで共通点は見つけられなかった。
「なるほどな、何があったのかは全く分からない訳だ。」
「新人だけならミュータントにやられたんだろうで片付くんだけど、群れに出会っても全滅することは無いだろうって奴らも戻ってこなかったからねぇ、もしヤバそうな気配を感じたらアダムさんもさっさと引いてくれても構わないよ。」
「一応聞いとくが調査ってのはどうしたらいいんだ?」
「そうだねぇ。気になる物を見つけたら拾って戻ってくるか、これで撮影してくれればOKだよ。おや?使い方が分からないって顔だね?なら私がまず手本を見せてあげようかね。」
従業員の女性はカウンターに置いてある情報端末に手を伸ばすと様子を見ているアダムの方へ向け何やら操作をする。すると端末から突然強い光が発せられる。
「ぐわっ!」
「ありゃ、フラッシュが設定されてたみたいだねぇ。まぁとりあえずこれで分かるからいいかしらね?」
強い光に驚き目を瞑るアダムと思った様に撮れなかった事に残念がる従業員の女性は渋々と言った様子で端末を差し出してくる。
「慣れてないと眩しいのは仕方ないね。どれどれ、上手く撮れてるじゃないか。」
くすくすと笑うシンディの声に恐る恐る目をあけると端末の画面には突然の光に驚き目の前を覆っている金髪の男が映っていた。




