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もそもそと一人で食事を続けていると隣の椅子が引かれ誰かが腰掛ける、カウンターについているのはアダムだけで他の席も空いているのにも関わらず態々隣に座ってくるのはどういった人物かとちらりと視線を向ける。隣に座ったのは女性のようだが野暮ったい服装にぼさぼさの髪を垂らしている上に分厚い眼鏡を掛けておりその表情は伺い知る事は出来ない。着席するや否や力無くカウンターに伏せる女性に見覚えは無かったが、アダムはその女性に何か引っかかりを覚えたが余り他人をジロジロと眺めるのは不味いかと視線を逸らす。そのアダムの様子に何故かくすりと小さく笑みをこぼした女性は注文の為に従業員に身振りでアピールする、その動きに合わせて芳しい花の香りのようなものが漂って来る。この辺りの枯れた土地では珍しいその香りにアダムが珍しく思っていると、おばちゃんが近づいて来てその女性に親し気に声を掛けた。


「あら、シンディ今日はいつもより少し早いじゃないか?どうしたんだい?」


「いつもより早く目が覚めちゃってね。二度寝する気分でも無かったから早めに顔を出しとこうと思ってね。とりあえず何か気合の入る飲み物頂戴よ。」


聞こえて来た言葉に一瞬動きを止めるアダム。二人はとても親し気に話しており気安い関係だと分かる。酒場の実質的な№2である年配の女性従業員と仲が良くシンディと呼ばれたと言う事は、自分の隣に座っている女性は酒場のオーナーであるシンディであると示していた。この二週間で何度かこの酒場で言葉も交わしていたがどれも美しいドレスや露出の大きい服装で着飾り、髪もしっかり整えており今の姿からは同一人物であると言われても中々受け入れることは出来なかった。


「本当にシンディなのか?オーナーの?」


アダムが驚きの表情を浮かべながら声を漏らすと。二人は可笑しそうに笑いだす。


「アダムさんおばちゃんが名前出すまで本当に気づかなかったんだ?ちらちらこっち見てたからそうじゃないかと思ったんだよ。ほらこれで分かるだろう?」


そう言って楽しそうに笑いながら眼鏡を外すと、椅子ごとアダムの方を向くと腕を掴んで逃がさないようにしてから一気に距離を詰め、自身の顔が良く見えるようにとグイと近づいて来る。


「どうだい?よーく見ておくれよ!」


額が付くほどの距離でその整った顔に悪戯っぽい表情を浮かべているのは、雰囲気こそいつもと違うが間違いなくシンディだった。


「よーくわかったからそんなに近づかなくて大丈夫だ。あんたの取り巻き連中に見つかったら面倒な事になるだろうから離れていくれ。」


「そんなに嫌がらなくていいじゃないか。あいつ等なら日が沈んでからじゃないと来ないから大丈夫だよ。」


シンディに掴まれた腕をほどこうとするアダムとそれをさせまいと楽し気に抵抗するシンディは少しの間揉み合っていたが、ふとした拍子にシンディがバランスを崩し椅子ごと倒れそうになる。アダムが咄嗟に立ち上がると抱き留めるようにしてシンディを支え事なきを得たが、倒れた椅子の音が店内に響き渡り、その大きな音に少ないながら店内にいる他の客からの視線が集まるのを感じる。しまったなと思いながらも、自分の腕の中で驚きからか、身を固くするシンディに声を掛ける。


「大丈夫だったか?」


その声にシンディはピクリと反応する。バランスを崩して倒れるかと思った次の瞬間には太い腕にすっぽりと抱きかかえられていた。図らずとも抱き着くような形になっており心配するようなアダムの声に、かあっと顔が紅く染まる。


「あ、あぁ。だ、大丈夫だよっ!だ、抱きとめてくれてありがとねっ!」


しどろもどろになりながらもいそいそとアダムから距離を取り倒れてしまった椅子を起こすとカウンターの中でニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべる女性従業員の姿が目に入る。


「何か言いたそうだね?」


「何時も男共を手のひらの上で転がしているとは思えない姿じゃないか。ま、アダムさんはこの辺りじゃ見かけない男前だから仕方ないかもしれないねぇ。私も抱きしめられたら十年は若返るだろうにうらやましいもんだよ。」


「俺は誰であれ同じような状況なら、今と同じように助けるぞ。まぁ女性の方が役得がある分うれしいがな。」


ワハハと豪快に笑いながらそう言うアダムに自身が抱き留められた際に色々な部分がアダムの身体に触れていたことを思い出し、更に体温が上がるが平静を装いながら会話に割って入る。


「ど、どうでもいい話は置いといて折角だからアダムさんを呼んだ理由から話そうじゃないか。」

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