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アダムのその言葉に次の商品を紹介しようとしていた店員は動きを止めると申し訳なさそうな表情を浮かべる。
「お気に召しませんでしたか?やはり剣を好んで使われるお客様に紹介するには無難すぎるチョイスでしたかね。この後の商品ならご満足頂けるかと思うんですが本当によろしいので?」
確かにカウンターに並んでいる残りの商品は使い方の想像がつかない物が多かったが、珍妙な物ほど良く分からない技術が使われておりその分値段も上がっていく事だろう。この世界の高級品で出来る事を知るのもいいが、目下の目標である自身の手の届く範囲での目安となりそうな物は知ることが出来たのでアダムとしては十分な収穫を得ることが出来た。
「別に俺は奇抜な品を求めている訳でもないからな!?情報端末に関しては操作の簡単で使いやすい物の方がありがたいんだ。とりあえず次はちゃんと予算の事も有る程度目途が付いたら寄せて貰うからその時に改めて教えてくれ。」
「分かりました。今日の所はさわりの部分だけでも紹介出来てよかったです。」
残念そうにしながらカウンターに並べられた商品を片付けていく店員の男は、時折端末を操作し何もない場所に映像を流したりしてアダムが興味を示さないかチラチラと様子を確認していた。
(ここで興味を示したらまた紹介を始めようとしているのだろうか?営業熱心なのか俺を使って暇つぶしをしているのか分からんがとりあえず反応はしないでおくか。)
どうやっているのか分からないがアダムの周囲に纏わりつかせるように様々な動物の映像などを流していたがどれにも反応をせずにいるとふっと掻き消える様に姿を消し少し肩を落とした店員が戻ってきた。
「後は何かご用件はありますか?なければ本日の営業はほとんど終了になってしまうんですが。」
まだ日も高い時間帯であるにも関わらずそんなことを言う店員の様子にそれほどまでにこの店は暇しているのかと同情していまう。
「いくらこの店の商品が高額とは言えそんなに暇なのか?」
「自慢じゃありませんがお客様が前回来店されてから今日までに売れた商品は消耗品の類だけですよ。官営店じゃなければとっくに潰れているんでしょうね。」
ハハハと乾いた笑みを浮かべる店員の男は遠い目をしていた。
「そもそも売り上げに繋がらないなら何でジャンクタウンに出店してるんだ?」
二週間程しかこの世界で過ごしていないアダムであってもこの辺りの住民の懐具合と官営店が狙っている客層がかけ離れいる事は理解しており赤字を出しながらも営業を続ける意味は無く、理由が無ければすぐに撤退した方がいいのは明らかだった。
「ジャンクヤードってのは未だに周辺住人が捨てるゴミや後ろ暗い物等で膨張を続けているんですが、ジャンクタウンは三十年ほど前まではジャンクヤードを超えた先にある大規模な遺跡群に最も近い街だったんですよ。最終戦争で滅んだ大都市の姿を残す遺跡群は暴走機械に占拠されていて危険だったようですがその分リターンも大きくスカベンジャーだけではなく企業の傭兵や国の部隊も調査に訪れたりと賑わっていたらしいですよ。今は見る影もありませんがね。」
「そんなに重要そうな物があったのなら維持の為に人員を割けばよかったんじゃないのか?」
「当然当時は国が主導して膨張するジャンクヤードのゴミを減らそうと動いていたらしいですが撤去しようとすると遺跡群とジャンクヤードの中から暴走機械が湧き出るように出現してかなり激しい攻防が繰り広げられていたそうですよ。大都市に残る機能を使って無尽蔵と言える物量で押してくる機械達に少しずつ押されていった人類側の部隊は核の部分たる奥部を囲む壁を建造すると一時的に後退していったんですが、丁度他の地域でもゴタゴタが起きて奪還どころじゃなくなってしまい、膨張を止められずに今に至るといった状況だそうですよ。私もここに送られる前に教わった内容ですがね。」
「なるほどな、今はその遺跡群とやらには行く事はできないのか?」
「今もかなり大回りをすれば他に道もあるようですが、時間を大幅に取られるので他の遺跡や遺構に行く人が殆どだそうですね。現在どうなっているかの情報は殆ど出回っておりません。」
殆ど未踏の地域になっている戦前の大都市というのは冒険者としての血が少し騒ぐ内容の話で少し興味がそそられたが、問題は山積みであり個人ではどうする事も出来なさそうだった。
「面白い話を聞かせてくれた礼に、消耗品ぐらいしか買えんが少し売り上げに貢献させてくれ。」
「本当ですか!?いやー有難いですよ!どういった商品が必要ですか!?」
どんなに小さい物であっても商機に飢えていたのか食いついて来る速度と勢いにタジタジになりながらもアダムは言葉を続ける。
「この剣を研ぐことが出来る砥石のような物があれば欲しいんだが取り扱っているか?」
「一応そちらの品を取り扱うようになった際に砥石も幾つか仕入れはしてると思いますが、アダムさんは砥石を使って剣を研ぐこともされるんですか?」
「あぁ、俺の故郷じゃあ自分の相棒はなるべく手入れする事が多かったしなこんな武器を使ってるんだそれぐらい出来て当然だろ?」
「そう言われればそうですね。一応取り扱いはしていると思いますが砥石が何処に保管されているかの引継ぎはされていないので倉庫を探さないといけない分時間が掛かるかもしれませんがよろしいですか?」
「人気薄の商品を頼んでいるのはこっちだからなそれぐらい喜んで待つさ。店内を回ってるから焦らず探しておいてくれ。」
申し訳なさそうにしている店員の男にそう告げると彼は店の奥へと下がって行った。
(そう言えば口座には幾ら入金されているんだったか、あれから確認はしていないが、依頼料を色々振り込んでいるからそこそこの額は貯まっていると思うんだが、丁度いいし確認だけしておくか)
恐らくすぐには店員の男も戻ってこないだろうと考えカウンター脇の小部屋に入り残高を確認することにした。




