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「続いての商品はこれにしましょうか。」
そう言って店員の男が手に取ったのは兜と帽子の中間といったような形をしている端末とそれに付属しているらしいアダムには馴染みの無い奇妙な見た目をした機械だった。
「これはどういう風に使うんだ?さっきの二つとはかなり様子が変わってるが?」
「こちらは説明するより実際に使って貰った方がいいかもしれないですねぇ」
そう言うと立ち上がりアダムの後ろへ回ると頭に端末を装着する。見た目の上では明らかにサイズが合わないように見えたが驚くほどすんなりと装着できた。そのまま付属する機械の部分を耳の裏に通すと機械その物が生きているかのように動き出し頭にぴったりとフィットする。その奇妙な感覚にアダムは思わず手で触れるようにして確認する。
「これはどういう原理で動いてるんだ?サイズ的にも装着できないと思ったんだが。」
「あーっとそうですねぇ。この部分は極小機械群で形成されておりまして着用者に合わせてサイズを自動で調節できるんですよ。自己修復もしてくれますし便利な物でしょう?」
聞いたことの無い名称が出てきた事によって疑問の表情を浮かべるアダムを見て店員の男は更に言葉を続ける。
「戦前の技術ってすげー!で流してしまってもいいんですが、数少ないお客様なのでもう少し掘り下げて説明いたしましょうか?」
「理解できないような技術の総称だと思っているんだが違うのか?」
「それも間違いでは無いんですが、一口に戦前の技術と言いましても色々ありまして。当時の情報が残っておらず現在の技術では再現、修復が不可能な物、断片的な情報を元に現在の技術で再現、修復は可能ではあるがコストがかかる物、今つけて頂いている商品はこちらですね。最後に情報も作り方も確立されており当時と同じように量産して問題なく使える物ですね。後者に分類されるものは日常の中で使っているあらゆる製品も含まれていますが、あえてそう表現することはありません。ほとんどの場合は高級品の箔付けの為や進んだ技術であると強調する場合に使われる事が多いんです。」
「なるほどな俺からすればどれも優れた技術に思えるが色々あるんだな、実際量産できるらしい口座ですら良く分からんまま使ってるしな。」
「そうでしょう?お客様は勿論、取り扱っている我々もさほど理解している訳じゃないですからね、なので理解しがたい複雑な説明を省ける戦前の技術ってすげーって言葉が重宝されるんですよ。」
自分の店で扱っている商品の詳細をイマイチ理解していないと放言する店員だったが、その言葉には説得力が有り納得した様に頷くアダムだったが、そうなると自分の頭に乗っているこの商品は再現できるとはいえ戦前の技術を謡っておりかなりの値段になるんであろうと推察できる。
「という事はこれも高級品って事だな?」
「まぁまぁまぁ、値段は置いておいてせっかくなので試しに使って見て下さいよ。」
アダムの問いに答えることなくそう促してくる店員の態度に予想通りかなり高額なのであろうと分かったが、物は試しだと開き直って試してみる事にする。
「ご理解いただけて何よりです。ちなみにそちらの商品は持ち主の声を登録して音声認識で起動することが可能となっております。今は誰でも起動できるようになっていますので、そのまま声に出して起動とおっしゃって頂けば自動で起動できますよ。」
頭に?マークを浮かべているが、アダムは促されるままに『起動』と声に出すとすぐに端末が反応を示す。
『ようこそ、ゲスト様本日も良い一日を。』
「うおっ!?」
突然聞こえて来る抑揚のない女性の声に驚きの声が漏れる。店内には他の人影など無く聞こえて来るはずの無い声の主を探そうと当たりを見回すアダムだったが楽しそうにしている店員に止められる。
「そちらはサポート用の機械音声なので今は気になさらないでください。それよりも着け心地に違和感などはありませんか?」
「あ、あぁ。特に問題は無いと思う。」
質問の意図が良く分からなかったがそう答えると少し待つようにと言われ店員の男は席を外す。そのままバックヤードへ入っていくとすぐに戻ってくる。
「こちらは端末と連動させて使う事の出来るサポート用のアイテムになるんですが好みの方はありますか?」
そう言って差し出されたのは透明な板とサングラスだったどちらかを手に取るようにと促され、訳も分からずサングラスを手に取ると身に着ける。その瞬間、視界に文字の羅列が流れ出す。
「今文字が流れてると思いますが初期設定なので気にしないでください」
突然の出来事に身体を強張らせるアダムに声を掛ける店員はその新鮮な反応に笑みを浮かべる。そうしているうちに設定が終わった様で流れて来る文字が収まるとサングラスをつけているはずだが視界が明るくなり明確に鮮明さが増す。それどころか視界の端の方には現在の時刻や店内の様子が分かるマップのような物が表示されている。
「こりゃいったい、なんなんだぁ!?」
驚いたように声をあげながら視界の端に映る物に触れようとするが手に当たる事は無くすり抜けていく。何度か繰り返していると声が掛けられる。
「どうです?音声認識で操作の負担を減らし端末からの補正で視界に直接情報を表示していちいち画面を確認する手間もかからない素晴らしい商品でしょう?勿論性能面でも先ほど紹介した商品を上回っていますし。戦闘時は危険度の低い位置や敵対者の位置をハイライト表示したり脅威度の判別なども行える高性能機なんです。」
「再現可能とはいえ戦前の技術を使っているだけあると言う事だな。」
「戦前の遺構や遺跡が多く残る大きな都市で多くの方に選ばれている製品なので自信を持っておススメできる逸品ですね。」
自信有り気な店員の話を聞きながら辺りを見回していると、情報端末の補正を受けた視界は自らの目で見るよりもクリアな視界で細かい文字などもはっきりと見える上に注視していると視界の端に拡大表示することも出来たが、慣れない操作に目の疲労を感じ端末を取り外した。
「性能が凄いのは分かるんだが、いろんな機能のせいで目が疲れやしないか?」
「皆さんそうおっしゃいが使い続ければ自然となれるらしいですよ。それにお客様をサポートするための音声認識システムですし直感的にはお使い頂けると思います。」
「皆さんと言うがこの辺りでこれを使ってるスカベンジャーなんて居ないだろう?」
街中で見かけるスカベンジャーは殆どは情報端末は持っておらず、たまに端末を持っている者も精々が最初に紹介された小型の端末を使っており先ほど紹介された品ですら使っている者を見かける事は無かった。そもそも再現されているとはいえ戦前の技術が使われている商品を買えるほどの稼ぎをジャンクヤードで得る事が出来るとも思えない。
「まぁそうですね。この辺りですとジャンクヤードの奥部にでも挑戦しない限りは必要ない代物ですからね。」
「それで?この商品は幾らぐらいするんだ?」
「40000クレジットになります。高額だとお思いかもしれませんが性能を考えるとかなり良心的な価格なんですよ。」
「なんにせよ俺には手が出せる値段ではないな、とりあえず参考に出来そうな品は見せて貰ったからこれぐらいで大丈夫だ。ありがとう」




