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「それじゃ今日はここまでにしておきましょうか。」


 その声を聞くと同時に隣で座るアキナから一気に力が抜け机の上に突っ伏すように倒れてしまう。あれから何と眠る事は避けていたが、身体を使った訓練では見せなかったような辛そうな姿を見せていた。


「ほ~らっ、アキナちゃん身体を動かす訓練だけじゃなくてお勉強も頑張りましょうね。」


 机に突っ伏しているアキナの身体に触れ、励ますように声を掛けるがアキナは両手で耳を塞ぎ目を閉じると分かりやすくタカシの言葉を拒絶する様子を露わにしている。その姿を見てため息を一つ吐き出すと隣に座るアダムに掛ける。


「アダムちゃんは今日もよく頑張っていたわね。教える甲斐があってうれしいわ~午後はお出かけするから座学は受けないって事でよかったのよね?」


「あぁ、ちょっとした用事を済ませてから呼び出しを受けてるんで酒場に顔を出さなくちゃいけないんでな。」


「まだ二週間程の新顔で顔役であるシンディちゃんに呼び出されるとは大した物ねぇ。アダムちゃんが頑張ってる証拠よ。」


 アダム自身は目立ちすぎないように行動しているつもりだったが、そもそも複数体のミュータントというのは、ある程度装備の整った一端のスカベンジャーであっても油断をすれば後れを取ることがある相手である。それを剣という時代錯誤の武器を使い、単独で、しかも毎日の様にこなしているとなると、目を引く存在と認識されるのは仕方のない事だった。


「俺としてはなるべく早く新しい環境に慣れようとしてるだけなんだが。」


「まぁ今のこの街にはきちんとした実力を持ったスカベンジャーは殆どいないから仕方ないわねぇ。流石にあの子もウチに居候しているアダムちゃんに無茶は言わないと思うから、安心して行ってきなさいな。」


 そう言ってアダムに笑いかけると未だ突っ伏しているアキナに近づき耳元で囁き声をあげる。


「そういう事だから午後はみっちりマンツーマンで教えてあげるからお楽しみにね。」


 優し気に呟かれたその声にうめき声を上げながら身をよじるアキナだったがタカシは気にすることなく部屋を後にした。足音が遠ざかっていくと大きなため息を一つ吐きアキナがノロノロ体を起こす。体を使うトレーニングにはかなりの忍耐強さを発揮しているアキナだったが座学の際は毎度の様にこういった姿を見せていた。


「トレーニングにはずいぶん慣れたみたいだが、こっちはまだまだみたいだな。」


「慣れる訳ないじゃん、勉強しても探索に出るまでは活かすところも無いんだぜ。本当に覚えたことが役に立つのかわかんねーんだもん。」


「元々かなりの実力者だったらしい院長が教えてくれてるんだ役立つ物ばかりだろ?実際俺も院長に教わって換金できそうな物を少しは見分けられるようになったからな。」


「なら院長に許可貰えるまでアタシは実感できてないってことじゃん!」


「まぁそうだな。当分はその時を想像しながら地道に頑張るしかないんじゃないか?」


「それは分かってるんだけど座学がなぁ」


「苦手なのは分かるが頑張れよ。俺はアキナと探索する時に備えて色々準備しておくからな。」


 そう言うと立ち上がるアダムは少ししょんぼりしているアキナを励ますように肩に手を置くと部屋を後にする。一人部屋に残されたアキナは午後からの座学の事を考えて大きくため息をついた。

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