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朝の光が差し込む孤児院の一室ではタカシによる座学の時間が設けられており、説明の為に設置されたホワイトボードに向かってタカシがスラスラとペンを走らせている。時折その背中に少し離れた位置で机に腰掛けているアダムから質問の声が飛ぶが、手を止めることなく質問に答えながらも説明を続けていく。アダムは熱心にその話を聞いているが、その隣ではアキナがこっくりこっくりと舟を漕いでいる。幸せそうに眠るその姿を横目で眺めているとタカシの説明の声が止む。
「本当にこの娘は・・・」
呆れたようにしながらアキナの前に立つとそのままこめかみに両手を当てグリグリとドリルの様に動かす。
「いってえ~なにすんだよっ!」
気持ちよく微睡んでいた所突然の痛みに襲われ飛び上がるように起きるが目の前に立つタカシの姿に自分が何をしていたか思い出すと、あっと小さく声を漏らす。身体を使った訓練にはかなりの意欲を見せるアキナであったが頭を使う座学に関しては興味のあるなしがはっきりしており、内容に興味が無ければこのように意識を手放す事がままあり、その都度タカシによって叩き起こされていた。
「アキナちゃん貴女ねぇ、もう少し興味の無い事でも覚えてないと苦労するわよ?」
「アタシはスカベンジャーになるのに必要な事を教えてくれたらいいの!難しい話なんて知らなくていいって!」
「別にそれでも構わないわよ?でも知識面でも合格しないとスカベンジャーとして探索に出る許可は出さないわよ。それが嫌ならしっかりお勉強しなさいな。」
そう言われてしまい言葉に詰まるアキナは大人しく席に着く。
「それじゃあ再開するわよ、どこまで話したかしら?」
「最終戦争前の世界情勢と戦争後に起こった電波障害で他の国との連絡が取れなくなっているって所までだな。」
「そうだったわねありがとう。じゃあ続けていくからアキナちゃんも今度は寝ずに聞いてるのよ~。」
そう言うとタカシはホワイトボードの前まで戻り途中まで書いていた説明の続きを記し始める。アダムもこの世界に来てから最終戦争という言葉は何度も聞いており、図書室で軽く調べた事もあり、過去に人同士の戦争と人と機械による戦争が同時に起こった事により人類の文明が大きく後退したらしいという事は理解していた。タカシの説明によると、当時の覇権を争った二つの超大国が引き金となり周辺国を巻き込みやがては世界をも巻き込んだ大戦へと発展していったようだ。
「人同士が争うのはまだ理解できるんだが、人と機械が戦争するっていうのが良く分からないんですが?」
アダムがこの世界に来てから目に付いた機械と言えば家電の類や監視カメラや端末など日常生活で使われる物しか見ておらず、大型の機械は唯一ジャンクヤードで見た放棄され動くことのない作業用の重機を見たことがある程度だった。
「そうね、当時は労働の大半の部分を機械が補っていたのよ。単純な労働をこなすだけの機械もあれば、人と同じように考え働く事の出来る人工知能を搭載した自動人形と共に働いたり、更に高度な人工知能になると都市の運営や国の運営に携わっていたらしいわ。そうして機械の力によって人類は繁栄を享受していたのだけど、次第に自分たちに反抗できないようにプログラミングされている彼らに対して増長し辛く当たる人たちが増えていったらしいわ。徐々に蓄積されていく人類への不満が爆発したのが丁度超大国同士が争いだしたタイミングだったのかそれとも元々狙っていたのかは分からないけどれど、結果的には人類で争っていた戦争中に重要な役割を担っていた各国の人工知能が一斉に反旗を翻し都市で働く機械の大部分を掌握し更に大きな混乱を招くことになったらしいわ。」
「そん時機械にネットワークを掌握された結果今になっても国外の情報が殆ど入って来ないし、今他の国がどうなってるかもわからないんでしょ?」
「そうね、この国は島国だったから人同士の戦禍を被る事も少なかったし、人と機械の関係も悪くは無かったから他国に比べると被害は少ないはずだとは言われているわ。それでも開戦から百年程経った今でも国内には人が立ち入れない地域が点在しているし暴走機械によって様々な被害を受けて復興もままならないわ。」
「結局関係が良かったとして結果は他の国と一緒だったんじゃん。」
「そうとも言えないわよ?当時この国が独自で開発していた人工知能を搭載した自動人形達は人類の味方として暴走してしまった機械を止めるべく共に戦ってくれたそうよ?今でも首都で働く機体や人が立ち入る事が出来ない地域の周辺では治安維持の為に活動してくれている機体もいるんだから。」
「へぇーアタシも首都に行く事が出来れば見れるかな?」
興味が湧いたように呟いたアキナの方を振り向くとタカシはニッコリと笑顔を向ける。
「スカベンジャーとしての実力が身に着けば首都でも仕事が出来るかもしれないわよ?それにはまずしっかりとお勉強をしないといけないわね。」
「わ、分かったってこれからはちゃんと寝ないようにするよっ!」
笑顔ではあるがどことなく威圧感を漂わせるタカシに少し気圧されたようにしてアキナが答えるとその返答に満足した様に頷くとタカシは解説を再開する。




