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三馬鹿と呼ばれる子供達を地面に座らせ叱りつけるタカシの表情は背後からは伺えなかったが、沈み込んだ三馬鹿の表情からかなり絞られているのだろうとは想像できる。言葉遣いも男の物に戻っており迫力を増していたが、近づいてくる足音に気づいたのかこちらを振り向くと表情を少し緩める。


「あら?アダムちゃんじゃないこのお馬鹿さん達の事は気にしなくていいわよ?ワタシがキッチリお灸を据えておくから。」


「あー実際ひどい目にはあったんだが俺は特には気にしていないし、それよりもその子らに頼みたい事があるんでそれぐらいにしてやれないか?」


被害を受けた張本人の口から出た犯人達を庇うような言葉に訝し気な表情を浮かべるタカシだったが神妙な面持ちの三人の事をジロリと睨みつけると大きくため息を一つ吐いた。


「被害を受けたアダムちゃんがそう言うならこれぐらいにしておいてあげようかしら。ただ貴女達あまり度の越えた悪戯ばかりしているようならワタシにも考えがあるから気を付けるようにね?」


言葉遣いこそ母親としての物だがその表情には獰猛な物が浮かんでおりそれに押されたのか三馬鹿は勢いよく首を縦に振っている。


「頼みたい事と言うのが何かは知らないけどこの子達が悪い事には違い無いからこき使ってくれて構わないわよ。貴方達もアダムちゃんの言う事をちゃんと聞くのよ?分かってるわね?」


念を押すように一言掛けると孤児院の方へ戻っていくタカシ。その背中が去っていくにつれ三馬鹿と呼ばれる子供達は安堵の表情を浮かべていた。


「よーしそれじゃあ院長が戻って安心した所でビジネスの話をするとしよう。」


緊張が解けてきた所に投げかけられた言葉の意味が理解出来ず、三人は顔を見合わせて「?」を飛ばしていた。そんな彼らにアダムは一つ笑いかけると提案を始める。


「お前達がさっき俺に使ったあの道具をもう少し大きくした物を作れるか?出来るようなら材料費も出すし俺が思うような効果を上げれれば更に成功報酬も払ってやるが?」


 自分達でも今回は流石にやりすぎたかなと思っていたが庇われた上に更に大きく威力を増したものを作れないかと提案され驚いたように顔を見合わせる三人はこの風変わりな居候の発言の真意を分かりかねていた。


「改良するのにも時間がかかるんだけどいつまでに作ればいいのさ?」


 恐る恐るといった様子で道具を作成しているらしいカズが質問するとアダムは首を振る。


「期限は特に決めていないがなるべく早くがいいな。別に出来なくても金を返せなんて言わないし。出来が良ければ今後も何度か頼むかもしれないがどうする?」


 暮らしに不自由は無いが決して裕福とは言えない孤児院では小遣いなど無く、働ける程の年齢でもないためにクレジットを稼ぐ手段を持たない子供達にとっては、孤児院の中の物や街中で拾ってきた物で作った悪戯道具なんかに代金まで払ってくれる上に失敗しても文句は言わないという破格の条件だった。三人は肩を寄せ合いアダムの依頼を受けるかどうかを話し合いを始める。


「…本当に失敗しても怒らねえの?」


疑うようにヒロが見上げてくる。


「あぁそうだ、これでもそれなりに稼いでいるからな馬鹿げた額でもない限りは文句は言わないさ。」


 そんなにうまい話がある訳が無いと内心思いながらも、三馬鹿とまとめられる少年達は結局のところは遊びで作った道具にクレジットが発生するという降って湧いた儲け話に抗えずにアダムの提案を受けると伝える。


「よし、なら決まりだな。材料費は幾らぐらい掛かるか分かるか?」


「わかんないよ。いつもは院内にある物や街中で使えそうなゴミが拾えた時に作ってるから材料費なんてかからねーもん」


「なら調べてみて幾らぐらい掛かるか分かれば俺に教えてくれ。」


「こっちに任せていいのかよ?吹っ掛けるかもしれないぜ」


 リーダー格のマサがそう言うとアダムは不敵な笑みを浮かべ立ち上がる。


「まぁそん時はお前らがクレジットを得る機会が無くなるだけだからな残念だが俺も諦めるさ。

 継続的にやり取りできるぐらいの値段にしてくれることを祈ってるよ。」


 そう言い残して孤児院の中に戻っていくアダムを見送ると残された三人は地面に座ったまま材料集めの方法を議論し始めていた。


 孤児院の中に戻るとアキナが腕を組み仁王立ちで待ち構えていた。三人組をあっさりと許したことが聞こえていたのか不満げな表情を浮かべていた。


「おや?ヒナとノゾミは戻ったのか?」


「ノゾミちゃんが眠そうだったからね。ヒナが部屋まで連れて行ってくれたよ。」


「なるほどな、アキナも訓練で疲れているだろう?早く部屋に戻って休めよ。明日も朝から座学だったろ?」


「そんなことはわかってるよ!そんなことより何であいつらを簡単に許したんだよ!もっときつく言ってやらないと反省しねーじゃんか。」


 話を逸らしてさっさと部屋に帰りたかったが目論見が外れたアダムは小さくため息をつく。


「改良したらかなり使える物になりそうだったからな、叱られた事で作らなくなるのはもったいないと思ってな。・・・何だ?不満そうじゃないか?」


「あったりまえだろ!許すどころかあいつ等に頼み事までするなんてどうかしてるって!」


「まぁそう言うなって、上手くやればミュータントと戦う時に使えそうな物だったから気分よく作ってもらいたくてな。完成したらジャンクヤード探索にかなり役立つぞ」


 自信を見せるアダムだったが、日頃よく彼らとやり合っているらしいアキナからすれば信用など出来る訳もなく、彼らの作った物が探索に役立つとは思えなかった。


「ほんとにぃ?失敗して危険な目にあってもしらないからね!」


「いーや、あれは絶対に対人でも対ミュータントでも効果があると思うぞ、実際に喰らった俺が言うんだから間違いない。」


「まぁ損することになるのはオッサンだろうからいいけどさぁ、アタシはちゃんと止めたからね。後で後悔してもしらないから!」


「そうなったら笑ってくれればいいさ、ほら、俺はもう明日の座学に備えて部屋に戻って休むからな、アキナも早く休めよ疲れが抜けないぞ。」


「アタシはオッサンと違ってそんなに疲れてないんだけどまぁいいや、おやすみー」


 減らず口を聞きながらも手を振るアキナと別れて各々の部屋に帰っていった。

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