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結局タカシによる訓練は食事による休憩を挟んだもののその後も再開されかなりの長時間続く事となった。今まで経験した事の無かった訓練で貯まった疲労はかなりの物で身体を休めようとアダムは自室でぐったりとしていた。


(途中からはタカシも興奮して男口調に戻っていたが厳しく教わったおかげで俺も最低限だが銃の扱いを覚える事が出来たし、ある程度のレベルまでは習得するのも近接武器に比べると簡単みたいだな。)


高い実力を得るには数十年に渡る研鑽が必要な剣を代表とする近接武器に比べると銃の習得はかなり容易いものに感じる。勿論それは十分に整備された銃と消費しきるのも大変な大量の弾薬に加え的確な指示を出しサポートしてくれるタカシという存在があっての事だとはアダムも理解しているがそれでもこの上達の速度は目を見張るものだった。


(まだまだ実戦に出れるレベルでは無いんだろうが、それでもあれだけ厳しく注意されてもへこたれずに食らいついていけるなら俺が思っているよりも早く一緒に探索に出る事になるかもしれないな。それまでに俺もなるべくこの世界に慣れなければ。)


 アダムから見ても訓練中のタカシの態度は厳しいものだった。しかしアキナはそれにへこたれる事無く食らいついていき結果として訓練終盤にはかなりの精度で標的に射撃を加える事に成功していた。訓練を終えた後辛くないのかと問いかけてもケロリとしており肉体的、体力的に厳しい基礎訓練に比べると大分マシでむしろ楽しんでいるとまで言っていた。


(まぁ確かに体力向上の為に筋トレやランニングを延々と繰り返しているよりは楽だったんだろうがあれほど長時間の訓練を続けてられるのも大したもんだな。あの年頃の子供なら普通なら嫌になりそうなもんだがよく続いている、それほどスカベンジャーになりたいって事か。)


 この二週間の間大人でも根を上げそうな訓練を続けているアキナの頑張りを今日改めて目の当たりにして、彼女の強い意志と決意を感じる事となった。


(あの頑張りを見せられると俺ももう少し頑張らないといけないかもな、依頼をこなしてクレジットを稼ぎながらこの世界の事を調べてできれば装備も整えたい。特に酒場のおばちゃん曰くスカベンジャーとしてやっていくなら情報端末が無いと不便らしいがこの街じゃ官営店でしかまともに扱われていない商品らしいしかなりの金額になりそうだな。客もそう多く無いらしいし一度顔を出して商品を見せて貰うか?)


 露店を探して回ればもしかすると状態の悪い情報端末ぐらいは見つかるかもしれないが、品質の保証など無く手を出すのは憚られる。そう考えると官営店に赴き聞いてみるのが一番間違い起きにくい選択ではあった。


(俺が手を出せるぐらいの商品があればいいんだが、高すぎて手が出せなければ最低限の機能の商品を取り寄せて貰う事も考えておいた方がよさそうだ。)


 考え込んでいると部屋の扉が控えめにノックされる。一瞬アキナが訪れたのかと思ったが、アキナであるならノックなどせずに勝手に部屋に上がり込んで来るだろう。基本的に来客の少ないアダムの部屋に誰がやってきたのかは分からないがこの孤児院の住人である事は間違いないので扉を開けるが扉の前には誰の姿も見えなかった。気のせいだったのだろうかと辺りを見回すと扉の前に小さな小石のような物が幾つか転がっていた。


(なんだこれは?部屋に入る時は無かったが・・・?)


 しゃがみ込むようにして確認すると本当に何の変哲もないただの小石であることが分かる。そんな物が屋内転がっている事を不思議に思い、しゃがみ込み確認するアダムの背後から何かが飛んでくる。反射的に振り返り飛んできた物を叩き落そうとするが手に触れた瞬間に破裂し粉末状の物が辺りを舞う。アダムの嗅覚が刺激臭を感じ嫌な予感がよぎった次の瞬間には鼻と口更には目に強烈な痛みが走った。ボロボロと出て来る涙を拭いながら異物が飛んできた方を振り向くと涙でぼんやりとした視界の隅に走り去っていく三つの影が見えた。それを呼び止めようとしても呼吸の際に吸い込んでしまった粉末がアダムの口と鼻に襲い掛かる。涙に加え咳とくしゃみまで止まらなくなったアダムはその影を追うことも出来ずに蹲る。涙を流しながら盛大に咳をくしゃみを繰り返していると誰かの足音が近づいてくる。


「アダムさん!?どうかしたんですか!?」


 声からするとヒナのようで、蹲るアダムに近づくと心配そうに背中をさすってくる。


「何があったんですか?大丈夫ですか?」


「と、扉がノックされたから、ぐすっ、外に出たんだが、誰も居なくてな、俺に向かって何か飛んできたから、ゴホッ、手で払ったらそれが破裂して、出てきた粉を吸ったらこんなことに。」


 言い終えると盛大にくしゃみを一つすると苦しそうにうめき声をあげるアダムの様子に何かピンと来た様子のヒナは声を上げる。


「アダムさんマサ、ヒロ、カズの三馬鹿の姿を見たんじゃないですか?」


「涙でよく見えなかったんだが、ここから去っていく、三つの人影だけなら見えたような気がするが。」


 苦しそうに言葉を区切りながらアダムがそう答えると、背中をさする手を止めたヒナはやっぱり、と呟くと立ち上がる。


「ノゾミちゃん、アダムさんの事を看ていてあげてね。私はこの事を院長に伝えて来るから!今日こそ三馬鹿にキツめにお灸をすえてやらないと!」


 そう言い残してパタパタと駆け足で去っていったヒナの足音が遠ざかっていくと小さな足音が近づいてくる。気配を探る余裕など無かったがどうやらノゾミもヒナと一緒にこの場に来ていたようで心配そうに声を掛けてきた。


「おじちゃんだいじょうぶ?」

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