34
孤児院地下の訓練場には断続的に銃撃音が響いている。射撃の間隔もまちまちだったが、射撃位置からおよそ10m程離れた所にある標的に弾丸が当たる回数は最初の頃に比べると格段に増えている様だ。もっともそのほとんどはアキナが撃ったもののようで、アダム自身は慣れない武器に苦労している様だ。
(感覚としては魔法を使って敵を狙うようなもんだが魔法はもう少し狙いは大雑把でいいからな。こんなに小さな弾丸を標的に当てようとするのは中々難しいもんだが、アキナはどんどん上達してるようだな。)
始めの内は射撃の結果に一喜一憂していた彼女だが今は完全に黙ってしまい黙々と訓練を続けている。その甲斐あってか苦戦するアダムを尻目にかなりの上達を見せている。
(最低限銃を扱えるぐらいの訓練はしないといけないが、やはり俺は剣を振り回していた方が気が楽でいいな。同じ銃を使い同じ弾を使っている以上差は生まれないだろうし、銃の扱いはアキナに任せれば問題ないだろう。俺が前衛を張ってアキナが後ろから銃で攻撃すればバランスも取れるだろう。)
元来仲間を守るために前に出て戦う事の多かったアダムからすればそれが一番やりやすい形であり、銃と呼ばれる武器が遠距離からの攻撃を得意とする事はアキナを守りやすくなる事から僥倖とも言える。
(アキナが実戦に出るのは当分先だろうが一番面倒の見やすい形に収まりそうだな。その時が来るまでに俺もこの世界に少しでも慣れて万全を期したい所だが・・・。)
考え事を始めると途端に射撃の精度が悪くなり小さく舌打ちをすると雑念を振り払うアダムだったが、何やら視線を感じ振り向くといつの間にかアキナが顔を覗かせていた。
「オッサンにも苦手な事あるんだね~教えてあげようか~?」
アダムの化け物じみた能力を間近で目撃しているアキナは戦闘に関する事でアダムを上回れたのが余程嬉しかったのかニヤニヤと薄ら笑いを浮かべながら近づいて来る。
「それはありがたい話だが今は銃の腕を磨くことを考えておいた方がいいんじゃないか?俺の事を気にするのはそれからで構わないぞ?」
「えーっ!そんな事言わずに何かアタシに聞きたい事ないのかよ!」
自分以上の初心者であるアダムに教えの一つでも授けようかと思っていたが、肩透かしを食らったアキナが不満そうにしているとタカシが大きな箱を抱えて戻ってくる。
「アキナちゃん貴女は人の事を気にするよりアダムちゃんの言う通り自分の腕を磨くことに集中なさい。アダムちゃんの事はワタシがじ~っくり相手してあげるからねっ。」
渋々といった様子で返事をするアキナを尻目に持ってきた箱を床に置くとドスンと重い音が響き渡る。
「院長すごく重そうだったけどこれ何が入ってるの?」
「アキナちゃんの訓練に使う物よー開けてごらんなさい。」
自身の訓練に使う物だと言われ一体何が入っているのだろうかと少しワクワクしながら箱を開けたアキナだったが、箱を開けた瞬間うめき声をあげ動きが止まる。一体何が入っているのかとアダムがその後ろから覗き込んでみると箱の中には隙間なくびっしりとマガジンや弾薬が敷き詰められていた。
「驚いてるわね?アキナちゃんにはとりあえずの目標としてこの箱の中の弾丸を全て撃ち切って貰いま~す。勿論ただ撃つだけじゃなくてしっかり狙った所を撃てるようにならないと訓練終了にはならないからね。」
「これがとんでもない量だというのは分かるが訓練でそんなに使ってしまっても大丈夫なのか?」
大の大人が抱えるようにして持たなければいけないほどの大きさの箱に詰められた大量の弾薬に圧倒されながらも質問するアダムだったが、タカシは安心しろとでも言いたげに大きく胸を叩いて見せる。
「ワタシが現役のころから集めてたものだから正確な数は分からないけどこれ以外にもまだ沢山あるから気にする必要は無いわよ?弾は何処でも手に入るし安いから手に入れてもあんまり売れないのよね。だからずっとここに保管してた物だから気にせず使っちゃっても構わないわよ。ほら、アキナちゃん呆けてないで訓練を始めるわよ。待望の射撃練習なんだからシャキッとしなさいな。」
呆けたように動かないアキナに気合を入れるように背中をはたくと箱からマガジンを取り出しレーンに積み上げていく。
「アダムちゃんはどうする?もう少し撃っていく?気に入らなかったらここまででも構わないわよ?」
ガチャガチャと音を鳴らしながら箱からマガジン取り出し続けるタカシに問われると立ち去ったほうがいいかもしれないという思いがよぎったが、アキナを残してこのまま立ち去るのも何やから申し訳ない気がして覚悟を決める。
「せっかく教えて貰えるならもう少し扱えるようになりたいからな今日はつき合わせて貰うさ。」




