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 晩酌の後片付けを済ませ、自分の部屋へ戻ったアダムはジャンクヤードで拾ってきた部品を机の上に並べ指ではじきながらこれからの事について考えているようだがその表情は曇っておりいい考えは浮かんではいないというのがありありと見て取れる。


(何をするにしてもまず知識が圧倒的に足りてないな。とりあえず拾って帰って来た物も価値があるのかどうかも分からんし、探索に出てミュータントを倒して帰って来るぐらいしか今は出来なさそうだな。)


 ミュータントに襲われた所でどうとでも対処できるアダムは他のスカベンジャーに比べると探索効率という点では圧倒的に上回っているがこの世界についての知識を持ち合わせていないためその効率を十分には生かせていない。そこの改善をするためにタカシに何か教わる事も約束していたがそれ以外にも何か自分で出来ないかと考えていると、昨日食堂を探して孤児院内を歩いていた時に図書室があった事を思い出す。分からないことだらけの自分にとって為になる本が所蔵されているかもしれないと考えたアダムは図書室の本を調べてみることにした。


 孤児院内を移動し図書室の前までやってくると、昨日はついていなかった図書室の明かりが灯されており部屋の中に先客がいるようだった。誰かがいるならその先客にスカベンジャー向けの本が無いか聞いてみるのもいいだろうと思い扉を開ける。本棚が並べられている広い図書室にはテーブルと何台かのソファが並べられていた。そのうちの一つにちょこんと座り絵本を広げているノゾミの姿があった。扉を開けて入ってきたアダムの姿を見て驚いたようにフードの下の目を見開いていた。


「すまんそんなつもりは無かったんだが驚かせてしまったか?」


 幼い少女が驚く様に何か悪い事をしてしまったような気がしてバツの悪そうな表情を浮かべるアダムに対してノゾミは小さく首を振った。


「みんなは図書室にはあまりこないからびっくりしただけ。」


「そうなのか?こんなに立派な図書室なのに勿体ない話だな。」


感心した様に本棚に並べられた書物を眺めるアダムの様子を興味深そうにノゾミは見つめている。


「本を見て勉強するより身体を動かしている方がみんなたのしいって。」


 あまり読書に興味を持たない他の子供たちに対して憤慨しているのか少し頬を膨らませているノゾミは本に囲まれるようにして座っていた。自分一人しか図書室を使う者がいない事を理解しているのかよく見ると他のソファの置かれている位置と比べると本棚に近い位置に陣取っており楽に本の出し入れが出来るようにしているようだった。


「アダムおじちゃんは何しに来たの?調べもの?それとも読みたいおはなしがあるの?」


「どちらかというと調べものだな、スカベンジャーとして為になるような本が無い物かと思って探しに来たんだが、ノゾミは何か心当たりは無いか?」


「わかんない。院長が難しい内容の本はあっちの奥にある部屋にまとめて移動したから本棚にはあんまりおじちゃんの探しているような本は少ないかも」


 探してみるといいとノゾミが指さした先には確かに小部屋が存在しておりドアノブには資料室と札が掛けられていた。扉を開ける際に巻き起こった微弱な空気の流れによって積もっていた埃が宙を舞いアダムに襲い掛かる。その埃の量がこの資料室を使っている者がしばらくいないと言う事を如実に表していた。その光景にしばし言葉を失うも意を決して一歩足を踏み出してみる。


 埃を吸い込み咳き込みながらも資料室の小さな窓を開け換気を行うと夜の帳が下り暗くなった周囲に明かりが差しその光の中を資料室から漏れ出た埃が靄となって漂っていく。パタパタとそれを扇ぎながら空気の流れを作っていたアダムは手を止め埃っぽい資料室の中を見渡す、本棚だけでは無く机の上や床にも無造作に本は積まれており、種類や内容などもばらばらのようで統一もされておらず本当にただ移動させただけといった有様だった。


(参考に出来そうなものがあるのかどうかもわからんが、とにかく探してみるしかないだろうな。何か参考に出来るような物が見つかればいいが。)


荒れ放題といった様子にため息を漏らしたアダムだが観念した様に積み上げられた本の一つを手に取るとその内容を調べ始めた。


 アダムが資料室の中に入って暫く経ったが資料室から戻ってくる気配はなく、ガサゴソと中で動き回る音だけが聞こえていた。定位置で読書を続けるノゾミが何冊目かの絵本を読み終わり、本棚へ読み終えた本を戻していると、資料室の扉が開き一冊の本を抱えたアダムが戻ってくる。


「おじちゃん必要な本は見つけられた?」


「あぁ、まだまだ調べるべき所は残ってるんだが、とりあえず良さそうなのがあったからこの辺りにしておこうかと思ってな。これを読み終えたらまた探しに来る事にするよ。」


 そう言って本をはたくと埃が少し舞う、それを振り払っているとノゾミが上目遣いに見上げてくる。


「ここでよむ?」


「大分埃も被ったんでな、風呂にも入りたいし今日は部屋に持って帰って読むことにするよ。ここで読むのはまた今度時間があるときにだな。」


 そう言うと分かったとだけ答えたノゾミは少し寂し気にしており、何やら悪い事をしてしまったかのように感じて後ろめたく感じてしまう。


「分かった分かった。今日は無理だが今度からはなるべくここで読むことにするよ。それならいいか?」


「ほんとう?いいの?」


「あぁ、だがそう頻繁に来れる訳じゃないからな、それでもいいか?」


 この孤児院では貴重な読書仲間が出来た事にノゾミは機嫌を良くしたのか読んでいた本を胸に抱えると嬉しそうにはにかんで見せる。


「わかった。まってるね。」


 機嫌を直したノゾミに見送られるようにしてアダムは図書室を後にする。

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