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アキナと別れた後ジャンクヤードへと足を踏み入れたアダムだったが、陽の光の元で改めて見る膨大な量のゴミの山に圧倒されていた。外周と呼ばれる外部との境界に近い辺りでもアダムの膝下程度までゴミが積みあがっていた。昨晩はあまり気にならなかったが陽光に照らされ気温が上がっているせいが多少鼻に付く臭いが漂っておりあまり衛生的では無い事が伺える。そんなジャンクヤードの外周を昨晩ごろつき達を引き摺って歩いた道を遡るようにアダムは進んで行く。引き摺った跡の上に幾つか足跡が残っている事から他のスカベンジャーも探索に訪れている様だ。
(本当にこの辺りを漁っているスカベンジャーは多いみたいだな。視界もそう悪い訳でも無いしミュータントとやらが出て来ても逃げやすいってのは間違いなさそうだな。)
移動する間にも離れた場所で動く人影がチラホラ確認できる事からアキナの言う通りこの外周を探索している者は多いのだろう。ただアダムが道を辿って行くにつれ積みあがるゴミの量も増えていきアキナと出会った広場の辺りまで来た頃には他のスカベンジャーの姿は殆ど見えなくなっていた。
(ジャンクヤードと外の境界からさほど奥に来たわけでは無いとはずだがこの辺りですら人影が少なくなるんだな。さて、とりあえずこれに登ってみて周囲の確認が出来ればいいんだが。)
アダムの視線の先には女神によって転移させられた際にその頂上付近に落下する事になったゴミで出来た小山が見える。およそ数メートルはあろうかというゴミの山の前に立ちアダムは頂上を見上げる。大量のゴミが積み重なり出来た山はかなり崩れやすいようで昨晩アダムが転げ落ちて来た辺りは大きく崩れている。勾配はさほど急では無いが登るのに苦労しそうなゴミ山をアダムは眺めていたが少し離れて助走をつけると一足飛びに駆け上がっていく。その崩れやすい足元の不安などまるで感じないかのような軽やかな足取りでゴミ山の頂点までたどり着くと周辺を見渡し始める。
(かなり広そうな場所だと思っていたがこりゃとんでもないな。いったいどこまで広がってるんだ?)
ゴミの山から見下ろすジャンクヤードはかなり広大な敷地を持っており積みあがるゴミの量は奥へ進むにつれ更に増えているようで今登ったゴミの山が幾つも出来上がりちょっとした丘陵地帯の様になっていたがその中でもアダムの目を特に引いたのは遠くに見える巨大な壁に囲まれた場所があると言う事だった。
(あれは明らかに人の手で作られているがあれが暴走機械が封じ込められてる奥部って奴か?何処から入るのかも分からん以上足を踏み入れる事は出来なさそうだしあそこの事は後回しで良さそうだな。)
かなりの距離が離れているにも関わらず存在感を放つ巨大な壁に興味は惹かれるが、広いジャンクヤードにはそれ以外にも人の手によって作られたであろう建造物の残骸やアダムが見た事も無いほどの大きさを持つ機械の様な物が各地に点在している様で探索の際の目印にする事が出来そうだった。
(何故ああいった物が放置されているかは分からんがやみくもに歩き回るよりかは目印があったほうがやりやすいからな。とりあえずは最も近場にある物を目標にして進んでみるとしよう。)
外周部に近い辺りは足を踏み入れる者が多く見通しも良い為通り道もしっかり確保されていたがゴミ山の上から見る限り進んで行けば行くほどその道は狭く不規則に広がっている事からここを探索に訪れたスカベンジャーが思い思いにゴミを崩して道を切り開いたのではないかと想像できる。高所から目標に出来そうなものを見定めたアダムは自らが登って来た広場側とは逆方向へと器用に滑り降りるとさらに奥へと進んで行く。
(この辺りまで来ると視界も悪いし何かが飛び出してきてもおかしくは無さそうだが今の所そういった気配は感じないな。)
大体の当たりを付けた目標に向けてそちらの方へ進んで行くと徐々に積みあがるゴミの量が増えていき、ついにはアダムの胸元程の高さになる。周囲の雰囲気も明らかに変わってきており何処からともなく生き物が飛び出してきてもおかしくは無さそうだった。それを示すかのように銃と呼ばれる武器の残骸の様な物や何らかの機械部品等もゴミの中に混ざり出している。
(こういった物が換金出来たりするんだろうか?全く分からんが何かの役に立つかもしれんし幾つか拾って帰ってみてもいいかもな。)
アダムは周囲に散らばるゴミの中から目に付いた部品を拾い集めながら先に進んで行く。すると進行方向に複数の動く気配に気づく。気配の主はこちらには気づいていないようなので慎重にそちらの方へ近づいていくとちょっとした空き地程度に切り開かれた空間にたどり着く。スカベンジャーの休憩所にでもなっていたのか廃材を組み合わせて作られたテーブルや焚き火の跡等が残されていた。そんな空き地の端で重なり合うようにして身体を寄せ合い轟く三体の黒い影を発見する。中型犬程の大きさで異常に発達した歯を使い一心不乱にゴミを漁り食事をしている様子のソレはネズミと言うにはあまりにも大きく、まさしく化けネズミと呼ばれるにふさわしい見た目をしていた。
(確かにアキナの言っていた通り巨大化したネズミと言う表現が相応しい見た目だな。あまり衛生的では無い環境に生息してることから噛みつかれたりすれば傷口から良くない物も入り込みそうだな。魔法の無い世界だし一般人に取っては意外と厄介な相手なのかもしれないな。)
見られている事に気づくことも無く食事を続ける三体のネズミの様子を観察しながらアダムは進んで行く。異常発達した歯で噛みつかれた所で自身の脅威にならないであろう事を理解しているアダムは剣を抜くこともせずにずんずんと距離を詰めていく。数メートルほどの距離まで近づいたあたりでようやく気付いたのかネズミ達が振り向いた。
ネズミ達は突然現れたかのような人間を威嚇するようにキーキーと鳴き声をあげながらアダムを囲うようにしてにじり寄ってくる。臨戦態勢に入っているネズミ達とは裏腹にアダムは未だに剣を抜くことも無く平然としながらネズミ達の様子を眺めていた。ある一定の距離まで両者が近づいた瞬間、様子を伺っていた三体のネズミ達は示し合わせたかのように三方向から一斉に飛び掛かった。
棒立ちしていたアダムに飛び掛かったはずがそこにアダムの姿は無く、三体のネズミは不思議そうにその姿を探していた、少し離れた場所に移動していたアダムの姿を見つけ仲間達ともう一度飛び掛かろうとしたが、そこで何故か自分が地面に寝そべっている事に気づいた。それと同時に視界の端で血を流しながら地に伏せる自身の身体を目撃するが何故そんな事になっているのか理解する前に意識が遠のいていった。




