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サービスによってボリューム感が増した食事を片付けた二人は依頼が貼りだされた掲示板を見上げている。他のスカベンジャー達が朝の内に依頼を受けて行ったのか空白が目立っていたが、確かにアキナの言う通りミュータントの討伐に関連する汎用依頼が多く残されていた。
(依頼見る限りやはりスカベンジャーは冒険者と似たようなもんだな、汎用依頼は収集、巡回、討伐の三種類が大半を占めてるみたいだな。しかし命を掛ける値段にしては随分報酬が安い気がするがこの辺りが人気の無さに拍車をかける事になってるのか?)
報酬額の低さは気になるが様々な知識が足りない今最低限でもクレジットを得る手段が用意されているというのはアダムに取っては大きいと言える。
「オッサンどう?何か気になる奴ある?」
「ミュータントと種類で討伐の難易度は変わって来るんだよな?どれを倒してきたのか判別するの方法はあるのか?」
隣で同じようにして掲示板を見上げるアキナに問いかけると彼女は少し考え込むようにしながらも口を開く。
「そうだなぁ~オッサンなら別にどれでもいいんだろうけど倒した証が必要だから化けネズミとかでいいんじゃないの?ぱっと見ただのデカいネズミで分かりやすいし尻尾切って持ってくるだけでいいっぽいし嵩張らなくて良いんじゃない?」
「倒した証が必要なのか。ならソイツの依頼を受けてみるか。」
アキナにおススメされた依頼を掲示板から剥がすとそのままカウンターまで持っていくと先ほどの女性従業員に差し出す。
「あら?アダムさんその依頼を受けるって言うのかい?」
「この辺りに流れてきたのは昨日だからなとりあえず生活費が欲しくてな。受けて問題無いか?」
差し出された討伐依頼とアダムの姿を交互に眺め少し考えていたが剣とはいえ武装しており服の上からでもはっきりと分かる程鍛えられた肉体からミュータントを相手にしても問題無いと判断したのか手続きを進めて行く。
「そりゃ問題は無いけれど、討伐依頼だからねぇ。くれぐれも欲張って無茶だけはするんじゃあ無いよ。」
「その辺りは任せてくれ引き際はわきまえているからな。」
手際よく処理を済ませた従業員の女性は依頼の内容が記された書類をカウンターにしまい込んだ。
「じゃあ報告は何時でも出来るから頑張ってきな。倒した証を忘れるんじゃないよ。」
無事に依頼を受ける事が出来たアダムはその声に送られるようにして酒場の出口へ向かって歩いて行く。
(まぁ確かに命を掛ける報酬にしては低い気がするが、俺の手を煩わせる程の生き物なんてそうはいないだろう。とりあえず今日の所はこの剣の試し切り程度にしておくとしよう初めて受ける依頼で目立ちすぎても問題だしな。)
この世界の住人の戦闘能力についてはアダムは想像出来ないが、多少制限が掛かっていたとしても自らの能力が一般人とはかけ離れていることぐらいは理解出来ており、あまり派手に動きすぎないようにしようと考えるだけの分別は持ち合わせていた。
(この世界の戦前の技術とやらで武装した実力者がいるなら相当派手に動いて良さそうだが、この街は田舎だと言うしな。程々に見極めながらやって行くとするか。)
腰に佩いた両手剣に手を添わせ優しく撫でるように触れながら歩くアダムは鞘に収められているその剣を開放する瞬間を想像すると、思いの外自らが高揚している事に気が付く。遠い昔勇者としての使命を帯び始めて冒険に出た頃に感じていたようなその感覚は、ここ百数十年程では味わったことのない懐かしい物で自身の行動に大きく制限のかかったこの世界で始まった新生活を思った以上に楽しみにしている事を自覚する。
(初めて冒険に出た時ももこんな感じだったか、どんなものが待ち受けてるかも分からずに無性にワクワクしたもんだ、あれから数百年経ったがまだこんな気持ちになれるとはな。)
にやりと一人で笑みを浮かべると足取り軽く酒場を出るアダムは外で待ってくれていたアキナに合流する。
「オッサンちゃんと依頼受けれたの?」
「あぁ、問題なく受けれたぞ、これでスカベンジャーの第一歩だな」
そういって屈託も無く笑うアダムの様子にアキナは呆れたような目を向ける。
「この街のスカベンジャーなんて自称だし言ったもん勝ちだけどな。とりあえずオッサンは依頼受けたんだし探索に行くでしょ?アタシは院長に報告もしたいし院に帰って置くから。まぁオッサンがミュータントにやられるなんて思えないからそんなに心配はしてないけど遅くなりすぎないでね?ウチのチビ達にも紹介しないといけないから。」
「無理はしないから安心してくれ、日が暮れるまでには帰れるように努力するさ。」
そう言うとくるりと背を向けてジャンクヤードの方に歩いていくアダムの後姿をアキナは暫く眺めた後孤児院へ向けて帰っていった。




