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やっとの事でアキナが酒場の前までたどり着き乱れた呼吸を落ち着けている。すると少し遅れてアダムがやって来て余裕綽綽の表情を浮かべながら辛そうにしているアキナを楽しげに眺めている。
「うーん。これじゃあ一緒に探索に出れるようになるのは随分先になるかもしれんなぁ。」
「うっさいオッサンと比べないでよ!アタシの訓練はこれからなんだから当たり前だろ!」
「まぁこれからの成長に期待しているぞ目標の為に頑張ってくれ。」
腹立たしい笑顔を浮かべたアダムに励ますように肩を叩かれたアキナは苛立ちを感じさせる手付きでそれを払うと酒場の方へと歩いて行く。昨晩は賑やかな声に包まれていた酒場も、昼間は意外なほど静かだった。漂う香りから察するに、この時間帯は酒場というより食堂に近い扱いなのだろう。武装した者は少なく、近辺で暮らす住民の姿が目立っていた。
酒場の中へと入ったアダムの目に飛び込んできたのは広々としたホールとその奥に設置されたカウンターとの間を行き交う従業員の姿だった。昨晩より静かとは言えそれなりに席は埋まっているようで皆小走りで動き回っていた。ホールの端には二階へと続く階段もあるようだが客も従業員も近づいておらずこの時間は使われてはいないようだ。
アダムが店内の観察を続けている間もアキナは先に進んでいて既にカウンターへと腰掛けると近づいて来た年配の女性従業員と親し気に会話をしているようだった。遅れるようにして彼女の隣にアダムが腰掛けると視線がアダムに向けられるこの辺りでは珍しいらしい彼の整った容貌を食い入るように見つめると知り合いらしいアキナへと勢いよく視線を向ける。
「んまっ!アキナちゃんこの男前はお友達かい?それならおばちゃんにも紹介して頂戴よ!」
「オ・・・オッサンは昨日からうちに居候することになったアダムってんだ。暫くの間スカベンジャーとしてこの辺で活動するらしいから今日は案内がてら連れて来たんだけど。あねさんは今居ないの?」
従業員の女性の勢いに少し押されながらもアキナがアダムを紹介すると従業員の女性はアダムの手をしっかりと握ると挨拶をする。
「アダムさんって言うのね!これからよろしく。朝昼は私が依頼の受付をこなす事が多いからよろしく頼むよ!夕方以降はウチのオーナーが請け負う事になるけどあの子はまだ寝てるから紹介は次の機会になっちまうんだよすまないねぇ。」
「そっか、ならあねさんに紹介するのはまた今度になっちゃうかな?じゃあ仕方ないしご飯にしようか。オッサンは何か食べたいものある?特にないならアタシは日替わりランチがおススメだけど。」
メニューを見てもどういった物が出てくるか想像は出来なかったが、昨晩出て来たタカシの料理から考えるとそうひどい物は出てこないだろうと考えたアダムはアキナの言う通り日替わりランチで構わないと告げるとそのまま注文が通る。
「それじゃあおばちゃん腕によりをかけて作ってくるから。アダムさんも楽しみにして頂戴ね。」
そう言うと従業員の女性はキッチンの方へ下がっていった。それを見送ったアダムは二人の親し気な様子を疑問に思い口を開く。
「ずいぶん仲がいいみたいだがここにはよく来るのか?」
「元々院長がここの先代オーナーと仲良くってさ。その後を継いだあねさんとも仲いいんだよね。その伝手でアタシも少しの間面倒見て貰ったんだけどおばちゃんにはその時特に世話になったんだ。」
「そういう事か、だからこの街のスカベンジャーの事情に詳しかったんだな。」
「実際に探索に出たらあんまり役に立たなかったけどね。」
スカベンジャーに関する知識だけならアダムより遥かに持ち合わせているアキナだが一人前と呼ぶにはまだまだ足りない様だ。
「独学にも限界はあるだろうからな。しっかり院長に教わればいいさ。」
しみじみと何かを思い出すように頷くアダムは初めて冒険に出た瞬間から殆どの事を自らの身体を教材として実戦で学ぶことが多くその辛さも嫌という程知っていた。そのためどんな些細な事でも教われるなら教わっておいた方がいいと考えている。
「それで?依頼ってのはどうやって受ければいいさっきの女性に頼めばいいのか?」
「おばちゃんやあねさんが直接依頼を紹介してくれるのはある程度実力が認められるようになってからかな。基本的に新米スカベンジャーが受けれるのはあそこの掲示板に出てる汎用依頼が殆どだから後で見てみればいいんじゃない?」
アキナが指を指した方には壁に添わせるように大きな掲示板が設置されており何らかの依頼が貼りだされているようだった。掲示板の大きさと比べると張り出されている依頼の枚数は少なく空白が目立っていた。
「汎用依頼を受けるならあそこから剥がして従業員に渡せばいいのか?」
「基本的には一番処理の早い人がカウンターにいるからその人に渡せば間違いないよ、大体はさっきのおばちゃんかあねさんだとは思うけどね。後、新米は危険だから夜に依頼は受けれないんだってさ。」
「なるほどな、新米が一人前だと認められるには何か基準があるのか?」
「それは流石にアタシにも分かんないかな。もし気になるなら院長にでも聞いてみたら?大体の目安ぐらいは教えてくれるかもよ?」
アキナの口振りからするとその辺りの事は明確な基準が設けられている訳では無さそうだった。ある程度依頼を出す側が個人の裁量で依頼を回している可能性がある。とはいえその判断基準がどの様なものなのか分からないので現状は普通に依頼をこなしていくしか無いだろう。
「ほらオッサンおばちゃんが戻って来たから考え事は飯の後にしようぜ!」
アキナのその言葉に顔を上げるとちょうど先ほどの従業員の女性が二人分の食事を持ってこちらへ歩いてくる所だった。
「ほら少しサービスしといたからたーんとお食べ!」
二人は従業員の女性に礼を言うとカウンターに置かれたランチに手を伸ばし食事を始めた。




