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二人は昼食の為に酒場へと足を向けるが通りを歩く住人の殆どは朝とは違いジャンクヤードの方へ歩いて行く。誰も彼も申し訳程度に武装しているようだが官営店で売っているような銃を持っている者はも殆ど見られなかった。それどころかジャンクードで拾った廃材を加工しただけの武器というにはお粗末な物をぶら下げる者やアキナと同じように着の身着のままで探索に出ようとしている者の姿も多数見受けられる。


「出会った時のアキナもそうだが本当にあんな格好でも探索に出ても大丈夫なのか?」


「戦闘を目的にしてる訳じゃないからあれでいいんだよ。装備を重くすると、外周に迷い込んできたミュータントに出会った時に逃げられなくなるからね」


「つまり、最初から戦わない前提か」


「うん。この街でミュータントが出る辺りまで潜れるような腕の立つスカベンジャーは、稼ぎが合わないって言ってさっさと別の街に行っちゃうしね。残ってるのは外周を漁るのが精一杯って人ばっかり」


「なるほど……それなら無理に武装しない理由も分かるな。そういう事なら今ミュータントを倒すことが出来るならクレジットを稼げるって事か?」


 この世界で生活するにあたってやらなければいけない事は色々あるが、まずは先立つ物が必要になるのは間違いない。スカベンジャーに関する知識がまるで無いアダムに出来る事と言えば官営店で購入した剣を振るう事ぐらいな物だった。


「普通に倒すだけじゃ無理だけど今から行く酒場がこの辺りの依頼を取り仕切る顔役なんだよ。だからあそこに行けば何かしら討伐依頼が残ってると思うよ?」


「なら飯のついでに見てみるか。だが俺みたいな流れ者が急に依頼を受けてもいい物なのか?」


 依頼を受けるために冒険者ギルドの様に本人の情報を登録する事が必要になってくると異世界の住人であるアダムに取っては多少都合が悪いものがあった。


「んー?誰も受けない依頼をこなしてくれるって言うなら誰も止めやしないんじゃない?まぁ心配なら知らない仲じゃ無いし店の人にアタシが紹介してあげるよ。」


「何から何まで世話してもらって悪いな。」


 ここまで何から何までをアキナに任せてしまっているアダムは申し訳なさそうに頭を下げるがアキナは慌てながらそれを止めようとする。


「何でオッサンが謝るんだよ。良く分からない街に飛ばされたんだから色々分からないのは当然じゃん。さっきも言ったけどオッサンはアタシの命の恩人だよ?これぐらいじゃ恩返しの内にも入らないっしょ。」


 長年勇者として長年に渡り生きて来たアダムからすれば危機的状況にある者を救うのは至極当然の事で最早見返りを求めて行う事でも無かった。そして数多の人々を救ってきた事でその感覚も麻痺しており今回アキナを救った事もこれ程までに感謝されるような事では無いと考えていた。


「そうか?俺からすれば十分返して貰ったような気もするがな?」


「そんな事無いって!これぐらいで返せてたらヤバイだろ!」


 アダムからすれば拠点となる住居と街の案内で十分すぎる程恩を返して貰えたと思っているが、救われた方はそうは思っていない様でアダムの言葉に動揺を見せていた。


「分かった分かったアキナがそう言うならこれからも頼らせて貰うとしよう。ところでその話で思い出したんだが、あのごろつき達が言っていた情報ってのは本当に知らないのか?」


「あーその話かぁ。・・・本当に知りたい?」


 昨晩自信を危機的状況に追い込んだとされる情報の話を振られ多少言いにくそうにしたアキナだったがアダムが頷くのを見ると意を決した様に話し始めた。


「最近探索に出た時にゴミ山の中に埋もれた地下への抜け道を運良く見つけたんだ。入口を塞いでるゴミを退かして中に入ろうかなって思ってたら内部から物音が聞こえてきてさ!慌てて逃げだしたんだけど中がどうなってるのか気になるじゃん?院長に相談した所で怒られるだけだろうしクマゾウに何か知らないか聞きに行ったんだけど、アイツ院長に聞いて来いの一点張りでさー取り付く島も無かったんだよ。そんで泣く泣く諦めたんだけど多分そん時にあのごろつき達が盗み聞ぎしてたんだろうね。んで昨日探索に出た時に襲われたって訳。」


「成程な。実際アキナはその抜け道とやらが儲け話に繋がると思ってるのか?」


「当たり前じゃん!あれは絶対人の手で作られてたし殆どゴミに埋まってたから他の誰も気づいて無いかもしれないんだよ?万が一地下に当時の物が残ってればそれだけで大金持ちになれるかもしれないんだから夢はあるっしょ?」


「それはそうだが中からした物音ってのがちょっと引っ掛かるな。中に何かが潜んでいるならそこを探索するのは危ないかもしれないぞ。」


「オッサンもそう思う?実はアタシもそれが気になってたんだよね。何が潜んでても対処できるように院長に鍛えて貰ってからじゃあ他のスカベンジャーに先を越されるかもしれないから、場所を教えるからオッサン一人で行ってみる?オッサンになら任せてもいいかと思ってるんだよね。」


 命を掛けてでも守ろうとした情報を譲るというアキナの言葉にアダムは首を振る。そこへ一人で向かえば探索も容易に済ませる事が出来る上に金も稼ぐことが出来るだろう。だがそれで財を成した所で彼女の手柄を横取りしただけでアダムにとっては何も意味の無い事だった。


「そう言ってくれて嬉しいが俺は一人では行かんぞ?行くとすればアキナが探索に出れるようになった時に付いていくぐらいだな。それなら訓練に励むいい口実にもなるし一石二鳥だろう?」


「本当にそれでいいのかよ?アタシを待ってる間に他のスカベンジャーに漁られるかもしれないんだよ?」


「別に構わんさ。自分で発見した場所は自分の目で確かめたいだろ?もし別のスカベンジャーに漁られてしまったとしても別の事で稼げばいいだろ?」


 未踏破の地域を冒険する高揚感と緊張感を誰よりも理解しているアダムに自分の味方をしてくれるという少女からその楽しみを奪うという選択肢は無かったが、その答えを予想していなかったのかアキナは驚き目を見開いている。


「その辺のスカベンジャーが同じことを言っていてもまるで信じられないけどオッサンが言うと何か説得力があるね。じゃあその言葉に甘えちゃおっかな。」


「始めから遠慮せずにそう言っていたら良かったんだよ。」


 そう言って朗らかな笑みを浮かべたアダムはその大きな手でアキナの頭をワシワシと撫でる。最初は少しくすぐったそうにしていたが見る見る乱れていく髪に徐々に抵抗を始めるアキナだったがアダムの手は止まる事は無かった。じゃれ合うようにも見える二人の姿は仲のいい親子のようにも見え道行く住民は微笑ましい物を見る様に見守っている。


 その生暖かい視線に気づいたアキナは恥ずかしそうに顔を赤らめながらも未だに動き続けている腕を叩き出した。二度三度続けた所でようやく頭の上を動き回っていた手から解放されると急いで距離を取り乱れた髪の毛を整えながら駆け出すと少し距離を取ってアダムの方を振り返り舌をべーっと出すと踵を返して走り去っていった。


アキナを放し叩かれた事によって少し赤くなっている腕の様子を見ていたアダムだったが、それを見て意地の悪い笑みを浮かべると逃げるアキナの背中を楽しそうに追いかけて行った。

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