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しばらくの間金属片が消えた辺りを触ったり、手のひらを開いたり閉じたりしながら動作に異常が無いかを確認していたアキナは我に返り、微笑みを浮かべてこちらを見ていた店員の男に掴みかかった。
「お前なにしてくれてんだ!あんなんで口座が作れてるのか!?本当に大丈夫なんだろうな!」
アキナに身体掴まれ激しく揺さぶられながらも店員の男は余裕の笑みを浮かべたままなすがままにされている。
「心配されるようなことは何一つありませんのでご安心ください。こちらは戦前の技術の一つでしてね。口座の開設に必要な情報が含まれていたんですよ。体内に取り込んでも人体に有害な物ではないそうなんで心配はいりません。あの一瞬で口座開設自体は終わっているんですよ凄く便利でしょう?嘘だと思うならこちらへどうぞ。」
ガクガクと揺れながらも淀みなく説明してのけた店員の男の話に納得したのかアキナは彼から手を離した。ようやく解放された店員の男は乱れた服装を整えると不審そうに見てくる二人をカウンター横の小部屋に案内する。そこには大きな機械が設置されており何らかの操作が出来るようになっている様だ。
「こちらは口座情報を読み取れる機械でしてこちらに手をかざしてみてください。」
店員の指示に従いながらも半信半疑と言った様子でアキナが手をかざすと端末の画面に口座の情報が表示される。
「それでは今から入金しますので、もう一度確認してみてください。」
アキナが再度確認すると間違い無く6000クレジットが振り込まれておりどういう原理かは分からないが間違い無く口座が開設され運用できるようになっているようだ。
「気持ちわりい!どうなってんだこれ。」
アキナは金属片を取り込んだ手のひらを信じられない物でも見る様に眺めている。
「えー実際の所、私たちにもよく分かっていません。恐らく口座を持っているほとんどの人が理解していませんね。戦前の技術は便利な物が多いですが現在を生きる私たちには理解の及ばない物が多いのでもしそういう物に出会ったときは戦前の技術ってすげー!と唱えると気分が楽になるでおススメですよ。想像がしづらければ口座ではなくて、財布が手首に収納されていると思って使うとわかりやすいかと。」
「良く分かってないのに皆使ってんのかよ・・・オッサンどう思う?」
「あぁ意味が分からん。」
顔を見合わせ首を振る二人、存在は知っていてもこれ程訳の分からない技術だったのかと驚くアキナと理解することをあきらめたアダムだが二人とも考えている事は同じだった。
((戦前の技術ってすげー!))
「おおよその使い方は以上になります。細かい操作はさておき、“使える”という点だけ覚えていただければ十分ですよ。あとは使っているうちに慣れるでしょうから、何か質問は?」
簡潔すぎる説明に拍子抜けする二人だったがよくわからない技術に圧倒されたように首を横に振った。
「分からないことだらけだが、これ以上説明を聞いても分からないだろういう事もはっきりと理解できる。もう少し使って見てそれでも分からない事があれば聞きに来ても構わないか?」
「勿論構いませんよその時をお待ちしております。この辺りではうちの商品が必要になる事はそう無いとは思いますが、そのおかげでいつも暇しているのでもしご来店いただけた時にはサービスさせて頂きますよ。それでは私はあちらに戻りますが、もしお二人で口座操作の練習がしたければこちらの端末をお使いください。戦前の技術は理解出来ていなくても実際に使ってしまえば意外とすんなり扱えるようになりますので是非お試しください。」
そう言うと小部屋から出ていく店員の姿を眺めながら二人は恐る恐るといった様子で口座を通してのやり取りを試みるのであった。




