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ごろつき達からの戦利品を思いの外高額で取引できた事に上機嫌のアキナは足取り軽く露店が並ぶ広場を出ると次の目的地に向けて歩き出す。
「ちなみに次の取引相手の伝手はあるのか?」
「うーん、この広場で露店出してる連中でクマゾウと同じぐらいの規模の取引が出来る店との伝手は無いしアイツの査定を信じるなら気は進まないけど官営店に行くしかないかなぁ。」
何がそんなに気に食わないのかは分からないがアキナは上機嫌だった表情を曇らせると若干の嫌悪感を滲ませる。
「その店に行くのが何故そんなに気が進まないんだ?他の店とはそんなに違うのか?」
「オッサンも行って見ればすぐに分かるよ!国が運営してるから高品質の商品を取り扱ってるからって店の前には警備員立たしたり防犯カメラ設置してアタシらの事盗人か何かと思ってるんだよ。」
話している内に段々とヒートアップしていくアキナだったがアダム自身はその店を見た事も無いのでその話の真偽については何の判断を下す事も出来なかった。
「そこまで言うならアキナは実際にその店を訪れた事があるんだよな?」
その言葉にアキナは足を止めると顔を俯かせると黙り込んでしまった。アダムは次の言葉を待っていたがよく見ると小刻みに震えている彼女が閉ざした口を開くまでは少し時間を擁すことになった。
「・・・ない。」
ようやく口を開いたアキナだったがその声は消え入るような大きさでアダムは聞き取る事が出来なかった。少し眉を顰めたアダムが聞き直すと伏せていた顔を勢いよく顔を上げながら勢いよく喋り始めた。
「行った事無いって言ったの!怖いんだもん!店の前に立ってる警備員は近づくだけでめちゃくちゃ睨んでくるし、監視カメラもずっと追尾してくるんだぜ!たまに店に入っていくのは強そうな奴らばっかりだしアタシなんて場違いだからいれてもらえねーよ!」
「実際に入ろうとして止められたのか?」
取り乱して駄々をこねるアキナにそう問いかけると、アキナは無いけどそうに違いないとトーンダウンした声で答える。
「相手も商売なんだ取引相手をえり好みするような事はしないんじゃないのか?」
「じゃあオッサンが先に入ってよ!アタシは後ろからついてくから!」
諭すように喋るアダムに対して拗ねたような態度を取ると、アダムの背中に隠れるように後ろに回りこのままこの通りを進めば見えてくるからと指示を出す。アダムは困ったように頭を掻きながらもその指示に従う。
そのまま少し歩くと噂の店舗がらしきものが見えてくる。アキナの言った通り、武装した体格のいい警備員が店の脇に立っておりその立ち姿に隙は無い事からかなりの実力者であることが伺えた。警備員は近づいてくるアダムに視線を向けるがそれを阻止するような素振りは無いのでそのまま歩みを進めていく。店舗の入り口付近まで近づくと監視カメラが起動しアダムの動きに合わせて首を振り追尾してくる。その様子にアキナはアダムの背中に隠れると恐る恐るついて来る。ドアに手をかけても警備員は特に何も言う事は無くアダムはそのまま店内に入っていった。
「ほらな、入店を拒否されるなんてことは無いんだよ。」
そう話すも雰囲気に圧倒されているのかアキナの反応は無い、薄暗い店内は様々な装備品に加え探索に使えそうな道具や用途不明の機械が展示されている。他にもどこからか機械の稼働音のようなものも聞こえており、おそらく店内の監視や警備の為に何らかの機械が稼働している事が伺えた。アダムにとっては展示されている商品は見たことも無い物の集まりではあったが、数多くの商品が並べられており世界が違えども武具を扱う店の雰囲気はどこも似たような物だと感じていた。しかし店員のようなものは見当たらず、店先の警備員に話を聞きに戻ろうかと思っていた矢先に、急に店内の照明が点灯し薄暗かった店内が明るく照らされる。それと同時に誰も居なかったはずの背後からいらっしゃ~いと声がかけられる。
アダムの背中に隠れて歩いていたアキナはその声に驚き叫び声をあげながらアダムの背中に飛びついた。まとわりついて来るアキナを気にしながらも後ろを振り向くがそこに人の姿は無い。すると店の奥のカウンターの辺りから再び声が聞こえる。
「こっちですよお客様少しお待ちくださいね、今見えるようにしますんで。」
楽しそうな声が聞こえてくる辺りを注視すると陽炎のようなものが揺らめいていた。揺らめいていた部分が徐々に輪郭を現し最終的には全身を包むスーツを身に纏った人の姿が浮かび上がってきた。
「新しく送られてきた戦闘用スーツの光学迷彩機能をテストしてまして、驚かせてしまったならすいません。官営武器取扱店ジャンクヤード支店へようこそおいでくださいました。本日はどういったご用件で?購入希望ですか?それとも何か買い取らせて頂きましょうか?」
もみ手をしながら現れたのは武具などを扱っている店の店員にしてはひどく不釣り合いに思える色白で細身の若い男だった。その見た目のひ弱さと腰の低さにアダムの首におぶさる様にして捕まっていたアキナはするすると背中から下りるといつもの調子を取り戻したようで元気よくバックパックの中身を取り出していく。
「なんだよビビらせるんじゃねーよ!これを買い取ってほしいんだよ!」
愛想よくアキナと会話しながらカウンターに置かれた品を確認する店員の姿を見ながらもアダムは、その背筋に冷たい汗が流れるのを感じていた。
(馬鹿なっ!俺が気付かなかっただと…!?)
間違いなく店員の男が姿を現すまでこの店内にアキナ以外の気配は感じられなかった。
その事実に愕然としているアダムの様子を横目で視界に入れつつも作業を進める店員の男はアキナに小声で尋ねる。
「お連れさんを怒らせてしまいましたかね?首都でしかお目に掛かれないような高性能なスーツだったんで思わず営業中に着てしまった上に出来心で驚かせてしまったんですが。」
「いやーあれは結構怒ってるぜ!オッサンの怒りを鎮めるためにもサービスしといたほうがいいんじゃねぇの~?」
コソコソ小声で会話しながらもこれ幸いとサービスを要求するアキナに、自身の行動が原因ではあるので多少後ろめたい店員と、光学迷彩を着た相手に対抗する手段を考えるアダム、三者三葉の反応を見せながら時間は流れていく。




