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少々迷いながらも食堂にたどり着くと、アキナはすでに席について食事を始めていた。すまし顔を装ってはいるものの、ちらりとこちらを窺う視線に、腹の虫の件をまだ気にしているのがありありと分かる。
アダムの姿を確認すると、タカシは無言で配膳を始めた。
「お腹がすいたってうるさいから、先に食べさせてたのよ。他の子たちの後だから、残り物になっちゃったけど」
「十分です。部屋まで貸してもらって、食事まで出してもらうなんて」
そう言って席に着き、差し出された料理に手を伸ばす。豆の入ったスープとパンという簡素な食事だったが、警戒していた異文化の味ではなく、どこか懐かしさすら覚えるものだった。
「お口に合えばいいんだけど」
「ええ、美味いです」
短くそう答えると、タカシは満足そうに笑った。一足先に食べ終えたアキナは、食器を手に立ち上がる。
「洗い物はアタシがやっとくから、院長はオッサンの相手してよ」
「あら助かるわ。でもその前に、収納部屋から着替えを探してきてちょうだい。さすがにその格好はね」
銃撃で傷んだ服装を一瞥され、アダムは肩をすくめる。アキナは軽く返事をすると食堂を出ていった。
入れ替わるように、タカシが向かいの席に腰を下ろす。
「早速だが、お前さんに一つ頼みがある」
空気が一変する。先ほどまでの柔らかさは消え、年季の入った眼差しがアダムを射抜いた。
「アキナのことだ。面倒を見てやってほしい」
「…具体的には?」
「アキナがスカベンジャーになりたがってるのは知ってたがまさか仕事に行くふりをしてジャンクヤードに通っていたとはな。今回、運よくお前さんがいなきゃ恐らく死んでただろう」
事実のみを述べる淡々とした口調が、かえって事の重さを際立たせる。
「まだあいつにゃ早すぎると思っていたがこうも無茶しちまうとなると仕方がねえ俺が鍛える事にする。だが俺の目が届かない時間もあるその間は気にかけてやってほしいんだ。別に今すぐじゃなくていい」
かなり力を入れて話しているのか手を組みながら話すタカシの腕には深い筋が浮かび上がっている。アダムはそれに気づかない振りをして食べ終えた食器を静かに置いた。
「力になれるなら、喜んで。できれば…すべてとは言わないが教えを受けるとき、俺も一緒にいていいか?」
「構わねえ。むしろ助かる」
タカシはそう言って、ふっと表情を緩めた。
「それと、そんなに畏まらなくていい。普通に話せ」
「じゃあ遠慮なく。これから世話になる、よろしく頼む」
立ち上がって食器を運ぼうとした瞬間、ガシリと腕を掴まれる。
「それは私がやるわ~。アダムちゃんはさっさとシャワー浴びて休みなさい」
いつの間にか、あの調子に戻っていた。呆気に取られていると、ちょうど食堂の入口からアキナが戻ってくる。
「オッサン、着替え持ってきたぞ! 早くシャワー行こうぜ、ジャンクヤードの後って結構臭うんだよ!」
背中を押されながら食堂を出るアダムの耳に、「明日からよろしく頼んだわよ~」という声が飛んできた。意味が分からず首を傾げるアキナに、アダムは「気にするな」とだけ告げ、浴場へと向かうのだった。




