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バタンッと勢いよく扉が閉められその扉を背中で押さえながら荒い息を整える二人、まるで恐ろしい化け物から命からがら逃げてきたかのような有様だった。少し冷静さを取り戻した二人は互いの顔を見合わせると自分たちの滑稽な姿に堪えきれないように吹き出すと大きな笑い声をあげた。
「ごめんな、いつもはあそこまでじゃないんだけど院長は好みのタイプの人を見るとあんな感じになっちまうんだ。あれがなければ最高の母親兼父親なんだけどなー」
笑いすぎて溜まった涙を指で拭いながらアキナが口を開く。
「いや、ごろつき達なんかより全然身の危険感じたよ凄い人だな。勢いに押されて何も話せなかったぞ。」
勇者としての数百年に渡る年月を経て様々な人物と交流があったアダムから見ても、院長のタカシは随分変わった性格をしているようで、彼?彼女?からは中々経験のしたことの無い勢いと圧力を感じていた。
「アタシを助けてくれたからっていうのもあるかもしれないけど、いつもよりすごい反応だったから、オッサンの事を気に入ったのかも、二人っきりの時は気を付けてね・・・。」
と深刻そうな表情でアキナに告げられアダムは顔を少し引き攣らせる。銃を突きつけられていても乱れなかったその表情があっさりと歪んだことに堪えきれずに彼女は再び大声で笑い出した。
「冗談だよじょーだん!院長は嫌がる人には強引には迫らないし、私の魅力で振り向かせてみせるわ~んって口癖のように言ってるから安心してもいいよ。・・・スキンシップは激しいかもしれないけど!」
院長の真似なのか妙にクネクネとした動きを取りながら笑っているアキナを見ながら孤児院での生活に多少の不安を覚えるが、これ程子供から信頼されている人物がおかしなことをしてくる事は無いだろうと心の中で自分に言い聞かせていた。
「ま、まぁ上手く付き合っていけるように頑張るとしよう。しかしこんなちゃんとした部屋使っていいのか?物置とかでも構わないんだが?」
そう言いながら部屋を見渡すと多少埃っぽい所はあるが最低限生活に必要な家具は揃っており清潔な寝具も用意されていた。それはアダムが良く知る場末の宿屋等と比べると遥かに上等な物でこれほどの部屋を無料で使わせて貰えると考えていなかったアダムは少し申し訳なさそうにしている。
「あぁ大丈夫だよ、空いてる部屋は沢山あるんだそんなに頻繁に掃除できる訳じゃないから、ちょっと埃っぽいかもしれないけどそれは我慢してくれよな!」
「泊まるところが無ければ野宿するしかないんだ、それをこんな上等な部屋に泊めて貰って、文句を言ってたらそれこそ罰が当たるってもんだ。」
丁寧に謝意を伝え、アダムが戦利品の入ったバックパックを下ろすと同時に部屋の中にグゥーと音が響く。音がした方に振り向くと顔を紅潮させたアキナがお腹を抑えているのが見える。その様子から先ほどの音は彼女の腹の虫が鳴いたのだろうと推察できる。
「そろそろ院長のご飯の用意が出来たかも知れないからアタシ食堂を見て来るよっ!」
腹の虫の音を聞かれたのが照れくさかったのかアキナはまくし立てる様にそう告げると部屋を飛び出していった。走り去っていく足音を聞きながら食堂の場所を知らされていないアダムは少し困ったように佇んでいたが、アキナが走り去っていった方向に食堂があるのは間違いない事なので院内の探索がてらそちらの方向へ向かう事にした。




