第39話 公国を襲う天災編その3 完成? スペースシップ
「みんな、心配しなくていいぞ! 公国の誇る魔法学院と高等技術学校の秀才たちが、総力を挙げて対策を考えている。 何より、最強のSSクラス魔導士、このリリ様がいるのだ!」
「特に女の子たち……不安に思ったら、オレの所に来い……最高の安心をプレゼントしてやるぜ?」
抜けるような青空のもと、オレ達は壇上から、集まった群衆に向けて演説を行っていた。
……きゃー! リリ様素敵!……おお、彼女たちが魔法学院が誇るSクラス魔導士コンビか……あれほどの人材がそろっているなら安心だ……
……うわ、かわいい娘たちね、ファンになっちゃいそう……
熱を帯びるオレの演説に、歓声が起きる。 みんな安心してくれたようだ。
何故このような事になってるかというと……
隕石が公国に落ちてくる事が分かって1週間、隕石が放つ不気味な光は地上からも見えるようになってきた。
当然のごとく、メルゼブルクや他の街の住民たちの間に、不安が広がる。
これを重く見た公国政府は、事態の解決と住民の不安の緩和を正式に魔法学院に依頼、そこでオレたちが一肌ぬぎ、記者会見と演説を行ったというわけだ。
ちなみにこの模様は、魔導通信端末を通して公国中に配信された。
ふっ……これでまたオレのファンが数万単位で生まれてしまったな……事実、学院のお膝元であるメルゼブルクでは、大勢の市民たちが不安を和らげるべく、学院を訪ねていた。
市民を安心させるのも、SSクラス魔導士の立派な仕事である! オレは、迷える子羊ちゃん(女の子に限る)を選りすぐると、最高の安心(意味深)を与えていた。
ちなみに、男とターゲット外の女性は、グスタフとかその他もろもろの人間に押し付けておいた。
適材適所である。
「なんというか、リリ様って本当にリリ様ですよね……尊敬しちゃいます」
「リリ、底なし……公国……いや世界一」
サナとフィノも、オレの偉業にお手上げのようだ。
なにしろ、オレ自慢の光の尻尾には、”弾切れ”という概念がないからな! がはは!
「おーい、リリ、サナ、フィノ。 作戦用の魔導ロケットが出来たぞ……フィッティングするから、研究棟横の格納庫まで来てくれ」
「ういっぷ……魔力をずっとキープしてるから、飲み過ぎた……」
オレがこの世の春を満喫していると、イレーネ先生がオレ達を呼びに来る。
……そういえばそんな物もあったな……めんどくさい……
「……リリ様、世界の危機っていうのを忘れてませんか?」
仕方ない、英雄の義務を果たすか……オレは、徹夜作業続きでアルコール焼けしているイレーネ先生の後に続き、魔法学院と高等技術学校の技術者たちが待つ格納庫へ向かった。
*** ***
「みたまえ! これが魔導スペースシップ、アポロディーテ13だ!」
「「「…………」」」
ここは研究棟に隣接する格納庫。
キラキラと照明が当てられた、魔導スペースシップとやらを指さしドヤ顔を披露するイレーネ先生とは対照的に、オレ達は呆然としていた。
”シップ”とはいうものの、その形は船とは程遠い。 直径3メートル、長さ10メートルほどの円形の魔導金属の筒が地面からそそり立っている。
筒の根元部分を、支えるように4本の鉛筆型の小さな筒が囲む。
それぞれの筒の根元には、複雑な魔導術式が描かれており、ここに魔力を充てんするようだ。
真ん中のメイン筒?の先端部分は切れ込みになっており、3人分の座席が見え、大きく船の名前が書かれている。
突貫工事で作ったのだろう。 塗装もされておらず、銀色の魔導金属の地肌がむき出しになっている。
なにより不安になるのは、”アポロディーテ”という名前だ。 確か爆炎魔法をつかさどる神の名前だ。
これで飛ぶというのに、爆発の神の名を冠するとは、なにかの嫌がらせだろうか?
さらにさらに、大きく書かれた”スペースシップ”の文字、スペルを間違えていやがる……これじゃ”スパイスシップ”だ。 退屈な人生にスパイスを……ってやかましいわ!
”シップ”というよりも、どこから見ても空飛ぶ(そもそも飛ぶのかこれは?)棺桶にしか見えない。
「……先生、色々と……色々と聞きたいことがあるんですがいいですか?」
オレは頭痛のする額を抑えながら、疑問点を一つずつ聞いていく。
「ん? なにか不安があるのか? いいぞ、何でも聞いてくれたまえ」
「じゃあ、まず一つ目……これって試験用の試作機だよな? 本番前に試験をするという理解であってますよね?」
まず、一番大事なことを聞いておくべきだ。 こんな子供の工作のような道具で、星界に行くのはイヤだぞ……。
「なにをいってるんだ? キミも知っているように、魔導金属は加工に時間がかかるし、貴重な素材だ……予備機などないし、試験をしている時間もない」
「やっぱりいいいぃい!?」
予想通りといえば予想通りな答えに、オレの絶叫が格納庫に響くのだった。




