第33話 サナの帰郷編その2 本気のリリと、恐怖のティフナ村
次の日。
さわやかな朝日に照らされながら、オレはこの渓谷を強引に突破するための準備を進めていた。
さて、いっちょやるか!
まず、オレとサナ、フィノを魔導で強化した牛皮で出来た、強力なハーネスでつなぐ。
キィン……
次に、安全のため、衝撃吸収を兼ねた、防御陣をオレ達の周りに展開する。
「……リリ様、なんかわたし、とても嫌な予感がするのですが」
「……わくわく」
異様に厳重な防護に、冷や汗を垂らしながら聞いてくるサナ。
対照的に、フィノはわくわくしているようだ。
「心配すんな、大したことねーよ。 ちょっとドラゴンの力を全開にして、オーラを円錐状に展開、爆炎魔法の反動で一直線に村までぶっ飛ばすだけだから」
「ああ、途中で魔力切れになると思うから、サナ、適時回復魔法を頼む。 魔力切れになると防御陣が消失して、崖に衝突してバラバラになるから、タイミング大事よ」
「すごく責任重大ですっ!?」
サナはビビっているよーだが、ドラゴンの力を使うオレと、チート魔力回復魔法を使いこなすサナが協力すれば、問題なくこなせるだろう……Sランク越えコンビは伊達じゃないのだ。
「……ねえリリ、アタシは何をすればいい?」
「そうだな……サナが酔って気絶しないよう、押さえておけ……それと、女神に祈りを」
「神頼みなんですかっ!?」
サナが大げさにのけぞっているが、もちろん冗談だ。
心配すんな、最強リリ様に不可能はない!
「さあ! いっくぜええぇぇぇ!!」
ドン……!!
オレは、ドラゴンの力を解放した。
髪が逆立ち、目は金色に輝き、ドラゴンのオーラが辺りにまき散らされる。
慎重にオーラを円錐状に調整すると、ふたりをぎゅっと抱き寄せる。
「安心しな、サナ。 手を離すなよ?」
「ううう、はい、リリ様……」
覚悟を決めたサナが、目を固く閉じる。
「よっし、まず……ひとーつ!!」
ズドォン!
オレ達の真後ろで、効果範囲を絞ったSSランク爆炎魔法、”フレア・レーザー”を発動させる!
「うわ……これマジヤバっ♪」
フィノの歓声が聞こえる。
背後の防御陣に膨大な爆圧がかかり、反動でオレ達は一気に加速し、空中に飛び出す。
目の前に落石と崖が迫るが、円錐形に展開されたドラゴン・オーラが、それらをバターの様に切り裂いていく。
「次……ふたーつ!!」
ズドォン! ズドォン!
今後は2発の”フレア・レーザー”が炸裂し、落ちかけていたスピードが回復する。
「……っっっっ~~~!」
すかさず、回復してくれるサナ……よし、ナイスタイミングだ!
このまま渓谷を突っ切るぜ!
*** ***
1時間後……
百キロ以上の距離を突破したオレ達は、渓谷を抜け、ティフナ村まで徒歩で2時間ほどの場所で、小休止していた。
「……凄かった……ちょうエキサイティング……リリ、凄い! 今度またやって」
目まぐるしく繰り返される加減速と、瞬間10Gを超える重力加速度。
こういうのが好きなのか、ぶんぶんと腕を振りながら興奮しているフィノ。
それに比べて……
「うぷっ……えろえろえろえろ(自主規制)」
朝飯を柔らかくしたうえで、小川のお魚さんにあげているサナは、重力酔いで苦しそうだった。
「足クサ剛毛なうえ、痴女でゲロインとは……ヒロイン界に新たな足跡を刻んだな!」
「すごく属性過多。 アタシ、真似できない」
オレの愛人は凄いな! 思わず感心するオレとフィノ。
「げほっ……ひどいぃ……言わないでぐだざい~」
「……はぁ、酷い目にあいました」
小川で口をゆすぎ、げっそりとした表情でサナが戻ってくる。
「ここまでくれば、ティフナ村までもうすぐだな……魔力もだいぶ消耗したし、今日はここで休むか……サナ、小川で魚取ってきてくれ」
「うう、自分のゲ○を食べた魚とか、嫌です~!」
「……ぷっ」
オレのひどい指示に、フィノは思わず吹き出すのだった。
*** ***
翌朝、オレ達は徒歩でティフナ村まで向かっていた。
「くんくん……香水使ったけど、まだ匂うかなぁ……早く洗濯してお風呂入りたいですっ」
サナはしきりに自分の匂いを気にしている。
……残念なことに、美少女とはいえ、オレ達は生きているので体臭もすれば、トイレにも行く。
野営道具や食料も持ち運ぶので、着替えは最小限に……
小川で行水をしたとはいえ、色々とクサくなってしまうのだ……だがしかし、オレは性癖のデパート! クサいのもイケてしまうのだ!!
「……なんかスゲーこと言ってる人がいる」
ほんのりクサいオレ達は、2時間余り歩いた末、ティフナ村の入り口に到着した。
「「「…………」」」
オレ達は、声もなく立ち尽くしていた。
村の看板には、サイケデリックな字体と色使いで「快楽とバイオレンスの殿堂、ティフナへようこそ」と、殴り書きがされている。
端にはべっとりと血のりのようなモノまで付着している。
「あら、サナじゃない。生きてたのね……ふふ、友達まで連れて……アナタ達も好きねぇ」
「ここはティファナ村よ。 ……買いなの? ウリなの? 女の子同士の店もあるわよ……それともクスリ?」
村名を紹介する第一村人が、ヤバイ注射器を持った、やけに露出度の高いクソビッチ(推定)だ。
村の中からは、怪しい音楽と嬌声、たまに悲鳴が聞こえてくる。
「……なにこれ? 世紀末テーマパーク? アタシ、今すぐ帰りたいんだけど……」
「……半分ネタだと思ってたけど、話よりひでーじゃねーか! おいサナ、どうなってるんだ?」
「い、いえ……さすがにここまで酷くなかったですが……3割は話を盛っていたので……な、何事でしょうか?」
「あ、あの第一村人は、パン屋のジョアンナさん? いつの間にあんな姿に?」
なんでパン屋が春(隠語)の斡旋とクスリの売人をしてるんだよ!? 地元民が引く状況、やっぱりなんかおかしいぜ……
オレ達は意を決し、ティフナ村に足を踏み入れた。




