第32話 サナの帰郷編その1 遠すぎる村
ここはエメル渓谷の入り口。
ベルスの街で起きた、サナちゃん誘拐事件を解決し、新たな愛人兼ボディガードを手に入れたオレは、サナの故郷である、魔境 (たぶん)ティフナ村に向かっていた。
向かっていたのだが……
「なんだこの渓谷……クソデカいんだが……」
目の前には、世界最大の渓谷、エメル渓谷の絶景が広がっていた。
幅数キロはある大地の裂け目、赤黒い岩肌の崖が、数百メートルの深さで切り立っており、底には茶色い濁流の大河が流れている。
その崖の中腹、わずかに削られた道が、ティフナ村へ続く道だった。
「落ちたらいっかんの終わりじゃねーか……オレ達は飛べるからいいけど……本当にこんなとこを通って、村に行けるのか?」
思わずつぶやいてしまうオレ。
「半年前……わたしが奴隷商人に売られる直前に、成金貴族の資金提供で、転移ポートが出来ましたから……それまでは、生きての到達率7割って言われてましたね!」
「危なすぎるだろう……」
”転移ポート”
人間どもの転移魔法で長距離移動するときに使用する、目印のようなものだ。 無秩序に転移すると、事故が多発する為に、こういう制限になっているらしい。
「……それなら、なんで転移魔法を使わねーんだ? サナ、ティフナ村の出身だろう?」
”転移ポート”は、使う前に利用者の情報を登録する必要がある。
そのため、いちど行った場所にしか行けないのだが……なんでこうなっているかは、オレも知らない。
多分色々な利権があるのだろう。
触れないのが大人というものである。
「それが……わたしが奴隷商人に売られた理由が、”村長と公国警察の駐在さんが結託して、魔導麻薬を栽培しているところをみちゃいました!” をしたからなんですが、その時にわたしのポート情報、消されちゃったみたいです☆」
サナが、村を追われることになった理由を、楽しそうに説明してくれる。 はあ、根っからの犯罪者村のようだな……。
「じゃーない、適度に飛んでショートカットしつつ、進むか。 さすがに二人抱えて長距離飛ぶのはきついしな」
「はい! 承知しました!」
なんとなく、サナのテンションも高い。
やはり、生まれ故郷に行けるのは嬉しいのだろう。
「ん、リリ、早く行こう行こう!」
崖の上から、この先を偵察していた銀髪少女が、すたっ、と軽い身のこなしで飛び降りると、オレの手を引いてくる。
コイツはフィノ。
ベルスの街でゲットした、オレの愛人二号兼サナ専属ボディーガードである。
キラキラと輝く銀髪を、無造作にショートカットにまとめ、ツリ目気味の大きな琥珀色の瞳を持つ、つるペタ美少女である。
こないだ誕生日を迎えた14歳。
適度に日に焼けた、しなやかな手足は、とても健康そう。
トップスは紺のラインが入った、フード付きのシャツ、ワンポイントで熊さんバッジをつけている。 ボトムスはふわりと広がる、青のプリーツスカート、足元は動きやすいスニーカー。
おパンツ対策に、黒のスパッツを履かせている。
サナのボディーガードにするにあたり、レベルDと一般レベルであった能力を、毎夜の官能トレーニング(意味深)で、レベルAにまで引き上げた……レベルAへの昇級祝いとして、オレが買ってやった服だ。
……ふむ、こういうボーイッシュなコーディネートも悪くない……フィノは、無表情ダウナーロリを装っているが、なかなかイイ性格をしており、特に耳たぶを責めてやると、あられもなく乱れる、かわいい奴である。
「リリ、朝からセクハラはやめて……」
はっはっは! 頬を染めて抗議してくるのがかわいいな! 今夜は野宿だろうし、元野獣らしく、満天の星空のもとで楽しむのもいいだろう!
「……ごくり……ついに野外でさんぴー……サナ、27個目の性癖に目覚めちゃいます……」
背後でサナが興奮している……いやー、オレの愛人たちはかわいいなぁ!!
*** ***
……すぐに、オレ達は”野外プレイ”など楽しんでいる暇がないことを思い知らされる。
「うおお、あぶねえ! ドラゴン・ブレス!」
青白い閃光が、直径5メートルはあろうかという、巨大な落石を吹き飛ばす。
「ふう、なんだここは……」
「リリ様、お疲れ様です」
「あいかわらず、リリのブレスは凄いね」
二人は褒めてくれるが、エメル渓谷に足を踏み入れて二日目、オレ達はありとあらゆる障害に見舞われていた。
細い崖の道を歩けば、今みたいに落石に襲われる。
川まで下り、防御陣をうまく使って川下りを試みれば、怪魚モンスターに襲われる。
迂回ルートを選択すれば、道が崩落している。
全力のドラゴン・ブレスで横穴を掘り、ショートカットしようとするが、ここらの地層は崩れやすい石でできているのか、周囲の崖を巻き込んで土砂崩れを起こしてしまい、危うく飛んで逃げる。
最終手段、ふたりを抱えて飛ぼうとすれば、台風並みの強風と、砂嵐が襲う。
オレ達は比較的地層がしっかりした場所に横穴を掘り、一休みしているところだ。
「いくらなんでも無茶苦茶すぎるぞ……到着率7割どころか、Sランク冒険者でも苦労するぞ、これは」
「……うーん、おかしいですね。 以前はモンスターと道の崩落ぐらいで、ここまでイベント盛りだくさんではなかったはずなのですが……」
「……それでもじゅーぶん危ない……なにここ、魔境なの?」
ふむ……貴族の資金提供で作られた転移ポートに、村までのフィールドの難易度が上がった……何かの意思があるかもしれないな……そこは村に着いたら調べてみるか。
事件の気配を感じるオレ。
「と、いうことで、飯を食って十分に休もう! 明日はオレのドラゴンの力をすべて使って、強引に突破してやる!」
むぎゅっ
「きゃっ! リリ様、こんなところで」
「リリ、だいたん」
オレは二人を抱き寄せる……さすがに明日の冒険に備えるために、無茶なことはしないぜ?
サナのむにむにおっぱいを枕に、フィノのスレンダーボディを抱いて寝ると気持ちいいのだ。
オレ達は、強度を調整したやわらか防御陣の上で横になると、もふもふ幸せな眠りを堪能した。




