第29話 暗躍する組織とスラム少女編4 サナ、ヒロインらしく誘拐される
はい、サナです。
現在お買い物中です。
やはり、下僕兼愛人としては、衣装にもこだわりが必要です。
以前購入した”せーらーふく”と、魔法学院からガメ……頂いてきた制服がありますので(わたし達は、名誉生徒になりましたので、合法的に着れます。 本当ですよ!)制服系は足りています。
先日の温泉宿で見た、東方系の”キモノ”も良いでしょうか……ただ、巨乳には並々ならぬこだわりのあるサナちゃんですので、やはり、おっぱいを強調できる衣装が最高です!
昨年流行った、童○を殺すセーターは、最高でしたね! リリ様の尻尾を、むにゅりと挟むことも……ふふふ、興奮してきました……
こっちの裏路地には、”そういうお店”があるそうです。
……この時のわたしは変に興奮していて、うかつにも、尾行されていることに気づきませんでした。
*** ***
30分後、雑居ビルを出てきたフィノを尾行するオレ。
本気を出せば、銀髪スリ少女レベルでは察知することは不可能である。
……おっ……路地にある、ボロいアパートに入っていったぞ……足音の数から推測するに、部屋は2階の右奥!
ドラゴン・イヤーの性能は、恐ろしいぜ……まずは、家族構成の確認だな……と考えていると、フィノが急いだ様子でアパートを飛び出していった。
……なんだ? パッと見ただけだが、ナイフを所持していたような……いかんぞ危ない仕事は……まあ、彼女の身のこなしはそこそこだ。 そこまでの危険はないだろう。
オレは、小さく光の翼を出すと、隠密魔法をかけ、フィノの部屋と思しき2階の窓へ飛びあがった。
……部屋には、30代後半の母親が一人、ベッドに寝込んでいる。
髪の色と顔の作り、何より匂いが一緒だ。 彼女がフィノの母親で間違いあるまい……。
見たところ、呼吸器系の流行り病を患っているようだ。 あの病気なら、治癒魔法で治すことができるが、Bランクの治癒魔法が必要だったはずだ。
フィノの稼ぎでは、大変かもしれない。
だが、こちらにはSランク回復魔法を使いこなす、サナがいるのだ。 あの程度の病気を治すことくらい簡単にできる。
ふふん、これはもらったな……明日あたり、サナを連れてきて、フィノの家を襲撃だぜ!
オレは上機嫌で、ホテルへの帰途に着いた。
*** ***
サナです!
裏路地に来ました……なかなか、きわどい衣装を売るお店がいっぱいです……おお、あのヒョウ?が前面にプリントされたシャツ、どういう層が着るんでしょうか……しかもレディースだとっ!?
公国の衣装文化に、サナ感服です!
おっ……ありました! 怪しい照明の、やけにムーディなお店に、○貞を殺すセーターが売っています……しかもこれは新型!? 谷間の部分が縦に開けれるようになっており、いわゆる”胸I字バランス”もできるようです。
……噂では、これは異世界ヤーパンより輸入された最新文化という事ですが……ヤーパンにはどんなヘンタイさんが住んでいるんでしょう……サナ、戦慄です。
わたしは、お店に入ると、やけに手慣れたおばちゃんに試着を依頼します。
こういうのは、バストサイズとのバランスが大切……入念な試着が必要でしょう。
いくつかのサイズを選び、試着室に入ります。 上着を脱ぎ、ブラを外すと、ぷるんとおっぱいが弾けます。 ふふ、Fの世界を超え、もうすぐGへ手が届きます……しかも、わたしはまだまだ成長期……世界を狙えるに違いありません。
……鏡を見て悦に入っていると、何やら足元からふわり、と甘い香りがします……あれ、これって……薬?
……いけません、こんなところで眠っては……
わたし、またあの時みたいに……売られて……リリ様……
気力で抵抗しましたが、襲ってくる眠気は強烈で……わたしは意識を手放してしまいました……
ちりん……リリ様から頂いたイヤリングが耳から外れ、床に落ちて涼しげな音を立てました。
*** ***
りん……
「ん? なんだ?」
ホテルに帰る途中、先に戻っとくぞ、とサナの魔導通信端末にメッセージを送ろうとしていると、オレの右耳に付けたイヤリングが微かな音を立てる。
これは、以前の街で購入したマジックアイテム。 左右で対になっており、お互いに一つずつ着けることで、着用者に危険が迫ったときに知らせてくれるマジックアイテムだ。
……単純にオレ達に似合うから買ったんだが、音がしたという事は……まさか、サナの身になにか危険が?
嫌な予感がしたオレは、アルカディアで通話を試みるも、繋がらない。
くっ……リーベの街で事件を解決した後、最初は犯罪組織の襲撃を警戒していたが、いっこうに何も起きないので、油断していた……くそっ、単独行動させるんじゃなかった。
ここで焦っても仕方ない。
オレは冷静になるため、いちど深呼吸すると、慎重にサナの匂いを探った……心配ない。オレがサナの匂いを間違えることはあり得ない。 四六時中一緒にいたのだ。
「……! こっちか!」
捉えた! オレはサナの匂いを追い、街路に駆けだした。
「……そこだっ!」
裏路地の怪しい衣装屋……サナの匂いはそこに向かっていた。
オレは店に飛び込むと、周囲を探る。
「これは……」
試着室の前に、イヤリングが落ちている。 間違いない。オレとサナがペアでつけているモノだ。
匂いがここで途切れているという事は……そのまま、店の奥から連れ去られたか?
……ギンッ!
「……おい、てめぇ……サナを……緑髪の獣人だ……オレの下僕をどこにやった……答えないと、今すぐチリにしてやる……!」
オレは、慌てて対応に出てきた店員の胸ぐらをつかみ、片手で持ち上げる。
ああ、ブチ切れそうだ……このままこの建物ごと消してやろうか……思わず右手に力が入る……!
「お、お、お助けおおぉおぉ……ウチはルードの旦那の系列店ですから、仕方なったんです……ぐうぅ」
「……てめぇの事情はどうでもいい……サナをどこにやったと聞いてるんだ!!」
”ルード”ね、そいつがこのくだらん悪事の仕掛人か……わかった。 サナを助けた後、八つ裂きにしてチリも残さず粉々にしてやる……!
「あばばば、ゆ、誘拐役の男が、1時間前くらいにぃ……この街区にある、地下迷宮にづれていぎましたぁぁ……アンタを呼び寄せる餌にするって……うぎゅっ!」
ふん、地下迷宮か……小悪党が考えそうなことだ。 オレは、店員を商品の棚にぶん投げる。 大量の変な服にまみれ、気を失う店員。
コイツはただの下っ端だな……消してやってもいいが、警察がかぎつけると面倒だ……オレを呼び寄せる餌といったな。 それなら、すぐに殺されるということは無いだろう。
待ってろよ、サナ! いま助けてやるからな!
ドガッ!!
オレは店の床をぶち抜くと、一気に地下迷宮に向かって縦穴を飛び降りた。




