第28話 暗躍する組織とスラム少女編3 忍び寄る悪意
オレは、すっかり行きつけとなった、商業街である1番街の食堂を起点に、フィノの足取りを探っていた。
アイツ、スラムに住んでるって言ってたな……情報によると、スラムは3番街にあるらしい。 そちらに行ってみるか。
フィノに何回か飯を食わせ、オレ達は多少は仲良くなっていた。
…………
3番街は、街の南西エリアに位置する。
主に住宅街となっており、きれいに整備された中心街と、郊外に無秩序に広がるスラム街で構成されている。
もともとは、住宅街の廃棄物処理場があったらしく、ゴミの山から金目の物を回収し、日銭を稼ぐ連中が集まったのが、スラム街の始まりらしい。
魔導技術の発達により、廃棄物の直接投棄が無くなってからも、住宅費の安さと、役所の管理が十分に及んでいないという魅力から、どんどん人口が増えているエリアである。
スラム街と言っても、住宅や店舗は十分に整備され、安くておいしい食堂も多い。
スケベな男向けのイメクラや風俗店などもあり、歩いているだけで楽しいのだ。
……おお! なんだあの、”ロリ☆ドラゴンヘルス”という風俗店は! くっ……元ドラゴンとして、非常に気になるが、今のオレは可憐な少女……ああいうお店に入ることは敵わないのであった……あとで変装魔法を使って行こうか……オレは店の場所を魔導通信端末にメモすると、フィノの探索を再開した。
くんくん……リリちゃん探索中……3時間後……
……なるほど、フィノはこの食堂でバイトしてるっぽいな……そして、酔っぱらってふらふらと風俗店を探している男からスリを働く……と。
ただ、あんまヤバイ犯罪には関わっていないようだ。 そういうとこはマジメだな。
オレは、リリちゃん高性能・ノーズと、聞き込みにより、フィノの生活範囲を大体把握した。
この姿だと、結構相手が油断して色々話してくれるので、便利である。
そろそろ夕方なので、街にネオンがともりだす。 大人な時間の始まりだ。
……ん? いまちらりとフィノの姿が見えたような……
ネオンに輝く銀髪が、繁華街の路地に建つ、いかがわしい雰囲気を持つ雑居ビルの裏口に入っていくのが見えた。
これは、チャンスだな……オレは、躊躇なく繁華街に足を踏み入れた。
とたんに、街の雰囲気が一変する。
並ぶ店は、ダーツバーやキャバクラに変わり、ピンクなネオンが目に痛い。
街角には、客引きの黒服が立ち、ぼったくりの風俗案内所に、おのぼりさんを連れ込もうと目を光らせている。
「……ふへへ、ひっく……嬢ちゃん、ウリかい? 50でどうだ? おぢさん、ウマいよ」
「…………」
さっそく、小汚いおっさんがオレに声をかけ、肩を抱こうとしてくる。
めぎっ……
げしっ……!
不快になったオレは、軽く力を入れた膝蹴りで、おっさんの股間を叩き潰すと、路地に蹴り入れる。
音もなくゴミの山に突っ込み、目を回しているおっさん……まったく、下品だぜ……しかも50とか、安すぎるんじゃねーか?
この超絶美脚かつ、たまにえっちな美少女リリ様なら、最低2万からだろう?
……いまは単独行動中のため、ツッコミを入れてくれる奴がいなくてさみしい。
おっさんを手早く片付けた俺は、フィノが入った雑居ビルの前に立つ。
1階、2階は飲み屋となっており、3階、4階は風俗店のようだ……5階は店舗ではなく、窓もない。 おそらく、このあたりを管理してるマフィアの事務所があるんじゃなかろーか?
ただ、フィノからは、”そういう店”で働いてる匂いはしなかった……おそらく、スリ行為の上納金でも納めているんだろうが……
ビルの裏口には、見張りの男が立っている。
ちっ……さすがに今の段階で騒ぎを起こすのはまずいか……まずは、フィノが住んでいる場所の把握だな……オレは、気配を消し、フィノが出てくるのを待つことにした。
……ストーカーとか言うな! ああいう娘は、だいたい体の弱い母親か妹がいると相場が決まっている……まず、家族を助け、そこから攻めれば……くくく。
相変わらず、人助けはするが、ゲスなリリであった。
*** ***
「ん……アタシ、この依頼受けるよ」
ここは、ルードの事務所。
アタシはやっぱ、このシゴトを受けることにした。
報酬でママの病気を治せれば、身体を売らなくて済むかもしれない。 ママも喜んでくれるだろう。
アタシは、自分を安売りしない女なのだ。
「はん、イイ覚悟じゃねーか。 拉致の実行役はコイツ、連絡は魔導通信端末で取りな」
連絡用のアルカディアを渡してくるルード。
拉致実行役の男には興味はない。
これが最近話題のアルカディアか……いまのアタシにはとても買えない代物……同世代の女の子たちは、これで”ちゃっと”や”えすえぬえす”なるものを楽しんでるらしい。
自分とのあまりの差に、思わずため息出ちゃうけど、アタシもそのうち逆転してやる……
「それと……このナイフを使え。 お前はすばしっこいから、飛び道具よりコイツがいいだろう……強力な麻痺毒が塗ってある……殺さずに俺の店に連れて来いよ? あとで使うんだ」
今回のターゲットは女の子だと聞いてる。 おそらく、ルードが経営するいやらしい店で働かせるんだろう……ゲスな男だ……そして、その片棒を担ごうとしている自分にも、嫌気がさす。
「わかった……サンキュ」
「最後に、ターゲットの写真だ。 間違えるなよ」
「!!」
無造作に渡された写真に、アタシは思わず息をのむ。
そこに映っていたのは、アタシとさして歳が変わらない女の子。
気の強そうな金髪の少女に、優しそうで緑髪の胸が大きな少女。
ちょっと変だけど、アタシにご飯をおごってくれた、リリちゃんとサナちゃんだった。




