表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

10

 僕と哲司は遥の家の庭を囲んだ塀に沿って、まどろんだ明るさの中、肩を並べて歩く。

「俺たち、遥を守ろうな」

 哲司がさりげなく言った。

 それがさまになってカッコいいから、僕は嫉妬してしまう。

「ばーか、哲司が勝手に守れよ」

「おい、お前、遥を見捨てるつもりか」

「違うよ」

「じゃ、だったらなんでそう、意地悪なんだよ」

「意地悪も言いたくなるんだよ」

「賛太らしくねぇな。一体どうしたんだよ」

 僕は答える代わりに溜息を吐いた。

 僕が今回の一騒動で分かったことは二つ。

 一つは犯人の事。

 これは本人も自白したから、あっさり片付いた。

 そしてもう一つ。

 これは中々自白してくれそうになかった。

 でも僕は気づいたんだ。

 遥は哲司が好きだということ。

 あの消しゴムを遥が見つけたとき、もし僕のことが好きなら、一番最初に僕に見せに来たはず。

 だって、僕は、賛太だから。

『マイ ネイム イズ サンタ クロス』

 あの消しゴムが僕の名前と繋がらなかったことは、遥の気持ちは哲司に向いているということだ。

 あの消しゴムは僕の分身だというのに。

 僕は賛太でサンタ。

 サンタクロースのサンタと同じ音。

 普通、一番最初に連想するってんだよ!

 やっぱりまた溜息が出た。

 学生ズボンのポケットにも、消しゴムが一つ入っている。

 これは願いが叶いそうもない。

 人間あきらめが肝心。

 僕はそれを取り出し、力のままに思いっきり上にほうり投げてやった。

 それは暮れかけた空に向かっていった……はずだった。

 だが投げた場所が悪かった。

 まだ遥の家の庭、ちょうど池がある辺りの塀の近く──

「おい、ちょっとそこのお前、待て!」

 後ろから怒鳴った声がする。

 振り向けば西野川が僕を睨みつけていた。

「まさか、お前が、石を投げた犯人か!」

 西野川の手には、さっき投げた消しゴムが握られていた。

「やばい。哲司、走るぞ」

「おい、賛太」

 僕たちは、一目散に駆けだした。

 そんなことをしたら余計にあやしまれるというのに。

「待ちなさい!」

 後ろから西野川の声が聞こえる。

「誤解です。僕じゃないです。李下に冠を正してしまっただけです」

 必死に言うも、僕はなんだか笑けてきてしまう。

 因果応報なんてクソ食らえ。

 運が悪い時は悪い。

 でもいいこともきっとあるに違いない。

 人生山あり谷ありだから。

 今、僕は必死に走る。

 必死になったとき、僕は哲司よりも早く走れることに気が付いた。

 もしかしたら、僕にもまだ逆転の余地があるかもしれない。

 希望が見えたところで、後ろを振り返ると、西野川がまだ追いかけてきていた。

「うわぁ~」

 とにかく、今は逃げるが勝ち。

 でもこの後どうなるかわからないけど、明日は明日の風が吹くのだろう。

 その時、僕は少しだけ今とは違う自分になってそうな気がした。



The End



最後まで読んで下さった方、ありがとうございます。




【補足】

タイトルの消しゴム・ガロアの『ガロア』は英語でgaloreと綴ります。

これは『たくさんの・豊富な』という意味です。

使う時は名詞の後ろにつきます。

例えばこんな風に

I have erasers galore. たくさん消しゴムを持っている。


many(または a lot of) erasersの方が一般的だと思いますが、最近覚えたてで、パッと頭に浮かんでこんなタイトルになりました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ