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永久凍姫と時忘れの王国  作者: とらうつぼ
第1章『フレイミア』
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第5話「薔薇と、林檎」

翌日。


俺はミラーヤと二人で街に出ていた。



その理由は、サフィーアから重要な任務を拝命していたからだ。


国王から直接承った、勅命の内容とは───





「異世界に来て最初の仕事が、まさかメシの献立決めとその買い出しとはな」


「でもでも、大事なことですよ?

 わたしたちの作ったお昼や晩ごはんが、フィーニャの力になるんですから」


「ま、たしかにな。

 そういえばミラーヤは、サフィーア専属の調理師だったっけか」


「はい!

 朝昼晩、フィーニャのご飯は全部わたしが作っています」


「ほー、そりゃ立派なことだ」


「えへへ、ありがとうございます」


「ちなみにサフィーアは、嫌いなモンとかはないのか?」


「はい!

 フィーニャはなんでも食べますよ!」


「意味はわかるんだが……なんか面白いな、その言い方」


「そうですか?

 ちなみに、わたしもなんでも食べます!」


「そうか。

 まぁ、言ってみりゃ俺もなんでも食べるからな……。

 となると、これは思ったより難しい任務かもしれないな?」


「ふふ、そうですね。

 でもでも、なんでも食べることはいいことですよ。きっと」


「かもな」



冗談を飛ばしあいながら、城下町を歩く。


昨日は暗くてよくわからなかったのだが、ちょうど王城からまっすぐ下ったところに大きな市場があるようだった。



「んじゃ逆に。

 サフィーアが特別好きなもの……とかは、あるか?」


「フィーニャのすきなもの、ですか……。

 うーん……強いて言えば、リンゴでしょうか?」


「リンゴ」


「はい、リンゴは健康にとても良いとのことです。

 たしかに、おいしいですからね!」


「まあ、おいしいけれども」


「あとフィーニャは、リンゴは長寿の秘訣だとも言っていました」


「長寿の秘訣、か……。

 そういえばまた話は変わるんだが、サフィーアって何歳なんだ?」


「……だめです」



突然、ミラーヤの顔から表情が消え失せる。



「ん?」


「だめです、とーやさん。

 それにふれては、いけません……」


「どうした、急に。

 なんかカタコトになってっぞ」


「わたしもむかし、ふしぎに思ったんです。

 それで、お城のみなさんに聞きました。

 そしたら……」


「そしたら?」


「……誰も、知りませんでした。

 それどころか、誰も先代の王様すら知らないそうです。

 それで、結局フィーニャに直接聞いてしまったわたしは……おそろしい罰を受けたんです」


「どうなったんだ?」


「一ヶ月間、おやつ抜きです……!

 おやつだけじゃなく、フィーニャと一緒にお風呂に入るのも禁止されました。

 ……あれは、あれはこの世で最も恐ろしいおしおきでした……!」



当時のことを思い出したのか、ミラーヤの犬耳がしゅんと垂れ下がった。


たしかにこの懐き具合を見ると、サフィーアが彼女を『優秀なペット』と表現していたのも理解できる。



「そ、そうか……。

 それはまぁ、災難だったな」


「はい……だからいけません、トーヤさん。

 トーヤさんまで、あの地獄の一ヶ月を経験する必要はありません……」


「う、うむ。

 忠告ありがとうな……。

 じゃあ、まずは八百屋か果物屋にでもいくか」


「はい……」



(サフィーアって、本当に何歳なんだ……?)




────

──




ほどなくして、食料品の市場にたどり着いた。


広い街道の左右に、様々な種類の店が競うように出店やテントを張っている。



「ここはそこそこ活気があるな」


「そうですね。

 この城下町の市場は、クロキアでも一番の規模ですから。

 ここをまわれば、だいたいの食材が揃いますよ!」


「へぇ……たしかに、色んな匂いがするな」



肉、野菜、果物。


見渡す限りに、食料品の店や露店が広がっている。



それらは雑然としているように見えて、互いが互いのスペースに侵入しないように並んでいるようだった。


場所の取り合いにならないよう、何かしらの取り決めがあるのかもしれない。



(ほー……)



大通りから少し外れた路地を覗くと、屋台も見えた。


そちらはきっと、その場で買い食いができるタイプの出店だろう。



食材から、ファストフードに至るまで。


ミラーヤの言う通り、ここだけで食に関するほとんどのものが揃いそうだ。



しかし集まる人の多さ故に、気を抜くと彼女とはぐれてしまいそうにもなった。


俺には土地勘がないので、なおさらだ。



「果物屋はどこだろうな」


「この先に、わたしがお世話になっているお店があります。

 まずはそこに行きましょう!」


「あいよ」



人混みの中、ふさふさと揺れるミラーヤの尻尾を追いかける。


獣人の尻尾は、こんな時には便利な目印にもなるらしかった。





────

──




「おじいさん、今日も来ましたよ!」



ミラーヤがひとつの店の前で声をあげる。


どうやら、件の果物屋についたらしい。



「おおいらっしゃい、ミラーヤちゃん。

 今日も元気じゃのう」


「はい!

 なんといっても、このお店の果物を毎日食べてますから!」


「はは、そりゃうれしいのう」



ミラーヤが声をかけた店の奥からもうひとり、人の好さそうな老婆が現れる。



「あらミラーヤちゃんじゃないか。

 今日は、彼氏さんと一緒かい?」


「ち、違いますよ、おばあさん!

 この人はトーヤさんです!

 トーヤさんは、えっと……とにかく、すごい人なんです!」


「あはは、そうかい。

 変わった格好だね、外の人かい?」


「えーっと……はい、きっとそう、です?」


「だろうね、見ない顔だと思ったよ。

 これからごひいきに頼むよ」


「よろしくお願いします」


「しばらくは、トーヤさんも一緒に買い物に来ますので!

 覚えてあげてくださいね」


「なるほどのう。

 見たところ、お兄さんもミラーヤちゃんと同じぐらいの歳じゃろ。

 たくさん食べて、うちの味を覚えてもらわんとな」


「あはは、違いないねえ」



よく喋る爺さんが店主で、もうひとりが奥さんだろうか。


陽気だが、年相応の落ち着いた老夫婦だ。



「で、今日は何を買いにきたんだい?」


「んーと、なんでしたっけ?

 トーヤさん」


「リンゴ、だろ」


「あ、そうでした!

 5つ、お願いできますか?」


「はいよ、リンゴ5つだね!

 ほらアンタ、お会計」


「わかっとるわい」



ミラーヤに促され、財布を持った俺が店主と銀貨や銅貨のやり取りをする。


店主の手には深い皴が目立ち、相当な高齢であることが伺えた。


150年は生きる氷雪の民でこの見た目ということは……もしかすると、100年近くこの店をやっていてもおかしくないということだろうか。



「まいどあり」


「ありがとうございます」



会計が終わると、婆さんの方が何かを運んできていた。



「ほら、これ。

 よかったら、二人で食べな」


「いいんですか!?

 ありがとうございます!」



彼女の手には、皿に乗ったリンゴが二切れ。


どうやら、俺たちのために切ってくれたらしい。



「トーヤさん、いただいちゃいましたよ!」


「これは……ありがとうございます」



手渡されたリンゴを頬張ると、口の中に瑞々しい甘さが広がった。



「うん、うまい」


「ん~! おいしいです!!」


「ははは、相変わらず嬉しそうに頬張るねえ。

 ミラーヤちゃんが食べてるのをみると、こっちまで嬉しくなってくるよ」


「えへへ」



たしかに昨日からのミラーヤの食べっぷりを見ていると、彼女に何かを食べさせたくなる気持ちもわかる気がする。



「じゃ、また来てくんな」


「はい!

 ありがとうございました!」


「ごちそうさまです」



ミラーヤの元気な挨拶と共に、俺たちは店を去る。



「えへへぇ。

 ご厚意、いただいちゃいましたね」



まだリンゴの甘さが口の中に残っているのか、ミラーヤの表情がさきほどにも増してゆるゆるだ。



「いいご夫婦だったな」


「はい!

 歳をとるなら、ああいうおばあさんになりたいですねえ」


「はは。

 差し入れはありがたかったが……ミラーヤなら、人に出す前に自分で食っちまうんじゃないか?」


「むむ、失礼ですね!

 わたしは『つまみぐい』も、お仕事なんです。

 フィーニャが食べるものに、変なものが入っているといけませんからね!」


「たしかに。

 じゃ、天職ってやつだな」


「むう……なんだかほめられてる気がしません」


「褒めてる褒めてる」


「そうですか……?」



ミラーヤは少し頬を膨らませたが、すぐに元の表情に戻った。



「では気を取り直して……次はどこに行きましょうか」


「そうだな、じゃあ───」





────

──





「それで、トーヤ。

 外はどうだった?」



無事に買い出しを終えた俺とミラーヤは、王城に戻っていた。


そして二人でサフィーアの昼食を作り終え、執務に追われる彼女を昨日と同じ食堂にご招待したというわけだ。



「ああ。

 サフィーアの言ってた通り、綺麗な街だったよ。

 さすがに夜と昼じゃあ景色が違ったがな」


「そう。

 それはよかった、のだけれど……本当にそれだけかしら?」



そう言って、サフィーアはこちらに意味深な視線を向けてくる。



「……はあ。

 王城周りの地理と、クロキアの雰囲気。

 それから、この世界の通貨の価値を学ばせてもらったよ。

 これでいいか?」


「期待通りの答えをありがとう。

 どうやらミーチカの買い出しを手伝わせて、正解だったみたいね」



そもそも今日の買い出しは、サフィーアの勅命。


……と同時に、彼女なりの企みだったのだろう。



クロキアについて。


そして、この世界の通貨や常識を俺に学んでもらうために用意した、都合のいい『おつかい』だ。



さらに言えば、俺がその狙いを理解できるであろうと考え、ミラーヤの傍につけたのだろう。


もっとも、俺がそのことに気づいたのは、この昼飯を作っている最中だったのだが……。



「ったく。

 何かしらの目論見があるなら、先に言ってくれ。

 こんな風になんにでも表と裏を用意されたら、こっちもさすがに息が詰まるぞ」


「ふふ……ごめんなさいね。

 為政者たるもの、それぐらいはできないと務まらないのよ。

 でも、安心したわ。

 お金の計算ができるなら、学び舎の小等部に通ってもらう必要はなくなったわね」


「おいおい……まさか、そこまで考えてたのか?」


「場合によっては、ね」


「はぁ……王にそこまでご深慮いただいていたとは、恐悦至極でございます」


「半分冗談よ。

 謝るから許して頂戴」


性質(たち)が悪い」


「ふふ。

 それについて否定はしないけれど……これは貴方にとっても悪くない提案だったのよ?

 もし学び舎に通ってもらうのなら、この城に住んでもらうつもりだったんだもの。

 そうしたら、ミラーヤの料理が毎日食べられるじゃない。

 ミラーヤだって、トーヤのことは嫌いじゃないでしょう?」


「はい!

 トーヤさんは一度お教えしただけで、お釣りの計算もすぐにされていました!

 わたしは暗算ができるようになるまで5年かかったのに……尊敬です!」


「5年って……。

 ちなみにサフィーア、それはこの国の───」


「この子が特別。

 獣人とか関係なく、ね」


「だよな、安心したぜ」



足し算引き算レベルの暗算ができるようになるまで5年……と聞いて驚いたが、それはどうやらミラーヤが数字に弱いだけらしい。


さすがに、この世界の平均的な学力がそのレベルだとは俺も思いたくなかった。



「にしても……あれだな、街が静かだったのはちょっと驚いたな」


「あら、何かあったの?」


「いえ……?

 わたしは、いつもの商店街だったと思いますよ?」


「あーいや、何かの異常ってわけじゃないと思うんだが……」



ひとつ前置きをして、続ける。



「商店街にも、食材屋が並ぶ通りにも、活気はあった。

 活気はあったんだが……笑い声や大声を出している人がいなかった、のかな。

 肉屋の店主も笑顔だったが、どこか淡々としてた印象があったんだ。

 それがなんかこう……逆に、妙だなって。うまく言葉にできないんだが、活気があるのに静かっつーか」


「そう……」



サフィーアは、あごに指をあて考える。



「たしかに、クロキアの人間は少し淡泊かもしれないわね」


「そう、そうなんだ。

 ドライ、っつーのかな」


「ミーチカは、どう思う?」


「ええと……わたしは、静かな街は好きですよ。

 好きですけど……たしかに、たまに外の国からくる行商さんたちは、みなさん明るいですね。

 おおきな声で話されますし、口を大きく開けて笑っているお顔がとても印象に残っています。

 ……わかりませんが、トーヤさんが言っているのは、そういうことでしょうか?」


「ああ、まさにそんな感じだ。

 クロキアの人間には……なんつーか、それがない気がする」


「そう。

 じゃあ、きっとトーヤの言う通りなのでしょうね。

 クロキアの人間は、トーヤの思う以上に落ち着いていて、不必要に騒がない。

 よく言えば理知的、裏を返せば消極的なのかしらね」


「勘違いしないでほしいんだが、悪く言うつもりはないぜ。

 果物屋の店主も肉屋のじいさんも、俺に親切にしてくれた。

 皆、良い人ばかりだったよ」


「ええ、わかっているつもりよ。ありがとう」


「ふむふむ……。

 トーヤさんは、色んな事に気付かれますね」


「まぁ、どうしても異世界人だからな……。

 逆にこのあたりの感覚を合わせていかないと、とは思うよ。

 むしろ、この国にとっては俺が異端なんだから」


「……それについて、ひとつ思い当たるとしたら。だけれど」



サフィーアはリンゴ入りのポテトサラダを一口飲み込んだあと、言った。



「クロキアの人間は、寿命が長いと言ったでしょう?

 今回のトーヤの違和感は、きっとそれが原因ね」


「寿命が?」


「ええ。

 長年生きていると、どんどん感覚が鈍くなってくるのがわかるの。もちろん、私も含めてね。

 新しいモノへの感情の起伏が薄くなる、というのかしら。

 周りの人間は皆知っている人間ばかりになるし、日常に刺激が無くなってくる。

 だから……トーヤも今日、色んな人に奇異の目で見られたのではなくて?」


「まあ、少し視線は感じたな。

 俺が異世界人だからだと思ってたが」


「いいえ。

 貴方が異世界人かどうかに関わらず、皆貴方が初めて見る人間だとわかっているのよ。

 さっき言った通り、クロキアの人間は大体の街の人間の顔を覚えているもの」


「……なるほど」



たしかに、最初に出会ったときにもサフィーアはそう言っていた気がする。



「同じ場所に住む人間のほとんどが、顔見知りなのね。

 だから、クロキアの人間は争いを好まない。

 長寿だからというのもあって、小さなことで諍いを起こしても、長い目で見ればお互いの不利益にしかならないことをわかっているの。

 国民全員が隣人みたいなものだし、本当に長い時間を共にしているからね。

 自分が譲ることで決着するなら、それを選ぶわ。そしてお互いがそうするなら、尚良い。

 ……事なかれ主義、とでも言うのかしらね」



それは、俺の住んでいた国でもわずかに共通する部分があるのかもしれない。



「それでも、今日会った人たちは俺に親切にしてくれた。

 長年同じ人間と過ごしてると、どうしても閉鎖的になりそうなもんだが……そんなの関係なく、俺を受け入れようとしてくれてた。

 なんつーか……懐が深いっつーのかな」


「貴方がミーチカと一緒だったから、というのもあるでしょうけど」


「たしかに、それはデカいかもしれん。

 でも……それを差し引いても、いいところだと思ったよ。クロキアは」


「フィーニャが治めている国ですから、あたりまえです!

 フィーニャの優しいところが、国の人たちに伝わっているんですよ。きっと」


「ふふ……そうだといいわね」



そう言ってサフィーアは、慣れた手つきでミラーヤの頭を撫でる。


ふわりと撫でられたミラーヤは、気持ちよさそうに目を細めた。



(……ふむ)



そして、いつの間にか俺は。



どうすれば恩返しができるのだろうか、と考えていた。



俺を拾ってくれたこの国に。ひいては、サフィーアに。



「ご馳走様。

 サラダ、美味しかったわ。

 トーヤが作ったのでしょう?」



しかしその思考はサフィーアの声によって、形になる前に霧散してしまった。



「ん、ああ……そうなんだが、よくわかったな」


「リンゴを見ればわかるわ。

 ミーチカの切り口よりも荒いし、大きさもバラバラね」


「あー……」



たしかに、俺は料理に自信があるわけではない。


特にプロの調理師でもあるミラーヤと比べれば、足元にも及ばないだろう。



しかし、そんな些細なことでわかってしまうものなのか、と感嘆してしまう。


毎日ミラーヤの料理を食べているサフィーアだからこそ、だろうか。



「でも……とっても優しい味付けだったわ。

 こんなに美味しいものを食べさせてくれたんだもの。

 私も、お昼からまた頑張らなくちゃね」


「……そりゃどうも」



サフィーアは俺に真っすぐ微笑んだあと、両手を胸の前で合わせて言った。



「そうだわ。

 トーヤも、私専属の給仕になってみるのはどう?」


「給仕?

 ミラーヤと同じような、か?」



サフィーアの提案に、ミラーヤが尻尾をピンと立てる。



「わ、いいですねそれ!」


「ふふ、でしょう?」


「じゃあじゃあ、トーヤさんには、毒に慣れる訓練からしてもらわないとですね!」


「あら。

 面白いわね、それ」


「だったらまずは、ハルムの葉からですね!

 一口食べただけで、その日は手足が麻痺して何もできなくなっちゃうやつです。

 これを三食に混ぜても平気になってからが本番ですよ!」



そういえばミラーヤは、調理師と言えど王のための毒見役なのだった。


俺も同じ仕事に従事するなら、毒への耐性は必須ということか。



「……勘弁してくれ」


「ふふ」


「えへへ」



二人はそっくりな顔で笑ったが、笑顔の理由は違うように見えた。



「じゃあ……私は執務に戻るわね。

 午後はミーチカに、魔法の詳しい使い方でも教えてもらいなさいな」


「はい!

 おまかせください!」


「ありがとう。トーヤ、ミーチカ。

 久しぶりに楽しいお昼だったわ。

 ……本当に、貴方が給仕になってくれればいいのにね」



ドアを閉める際にサフィーアが呟いた言葉は、俺の耳には届かなかった。







「えへへ。

 褒められちゃいましたね、トーヤさん!」


「褒められたのか? あれは」


「はい!

 フィーニャがあんなことを言うなんて、トーヤさんには本当にお料理の才能があるのかもしれませんよ!」



(……給仕、ね)



昨日からずっと考え続けている、この世界での俺の身の立て方。


彼女らの放った言葉は、それとリンクした。



言うなれば、『国王専属給仕』という職業。



それはもちろん、肩書としては立派なものだろう。


職として安定もしているだろうし、その道を目指す人間にとっては、人生の目標として掲げられるような名誉なものなのかもしれない。



しかし今の俺には、自分が毎日王城の厨房に立っている姿がうまく想像できなかった。



「……きっと、俺には無理だな。

 サフィーアの言葉の毒は耐えられても、毒草には耐えられそうもない」


「そ、そうですか……。

 ちょっと残念です」



しかし、少しばかり料理の勉強をしてみるのも良いか。と思えたのだった。






────

──






太陽が下を向き始めた頃、俺とミラーヤは中庭に出て来ていた。



「こういい天気だと、眠くなってくるな……」


「はい、絶好のひなたぼっこ日和ですね……!

 クロキアは年中涼しくて、でも陽が当たるとあったかくて。

 とってもいいところなんですよ!」


「俺も、暑いよりは涼しいほうが良いな」


「ですよね、ですよね!

 でもどうしても暑い日には、フィーニャをぎゅーってしにいくんです。

 フィーニャのからだは、冷たくって気持ちいいんですよ!」



その姿を想像して、笑ってしまう。


一国の王を保冷剤代わりにするのも、きっとミラーヤぐらいのものだろう。



「で。

 今のミラーヤは、魔法の先生だったか?」


「えへへ。

 といっても、私にできることはあまりありませんよ。

 今日フィーニャに言われているのは、トーヤさんの魔法を見極めること。です」


「見極める、っつーと?」


「えっとですね……んーっと……」



ミラーヤはそう呟きながら、指をくるくる回したり、首をかしげたりしている。


頭の上で大きな耳がぴたりとくっついているが……どうやら説明は苦手らしい。



「なんにせよ、まずは魔法を使ってみるか。

 俺も、魔法を使う時のあの感覚に慣れとかねぇと、って思ってたところだ」


「そうですね!

 実際に見せていただくのが、いちばん早いかもです」



ミラーヤはそう言うと、庭園に生えていた花を一輪摘み取った。



「ではトーヤさんには、これに魔法を使っていただくことにしましょう」



ミラーヤがもってきたのは、薄い桃色のバラ。


この中庭の庭園を見回すと、いたるところに生えているようだった。



「バラ、ね」



そういえば、薄い桃色のバラで、どこか特徴的な名前の品種があったはずだ。


ちょうど最近、その名を耳にしたような気がするが……。



「はい。

 フィーニャから、トーヤさんは氷雪系魔法が得意だと聞きました。

 なので、まずはこのバラを氷漬けにしていただきます……!」



そんな余計な思考は、ミラーヤの一言で霧散してしまった。



「ん、ああ。了解だ」


「でも……氷雪系魔法が使えるだなんて、なんだか素敵ですね?

 まるで、トーヤさんはクロキアに来るのが決まっていたみたいです」


「たしかにな。

 そもそも、なんで俺は氷の魔法が使えるんだろうな……」



俺は氷雪の民の血筋でもなければ、氷自体に何か特別な思い入れがあるわけではない。



元から氷魔法の資質のようなものがあったから、クロキアに飛ばされたのか。


それともクロキアの近くに飛ばされたから、氷の魔法が使えるようになったのか。



(ふーむ……)



どこか禅問答のようになってきたが、きっと考えても答えはでないのだろう。


そもそも、俺がこの世界に飛ばされたこと自体が、不自然な事実なのだから。



そう考えながらもミラーヤからバラを受け取り、それを右手に掲げる。



「ま、いいか。

 んじゃやるぜ」


「はい!

 ぞんぶんにお願いします!」



存分にやると、昨日の河のように大規模な影響が出てしまう可能性があるだろう。


今回はなんとかして、一輪のバラに合った量のマナとやらを探ってみるとしよう。



(……集中だ)



やはり、魔法というのは難しい。


バラの中にあるマナの流れを探り、その大きさを推し量る。



流れがつかめたら、そこに俺のマナの波長を合わせるように調整し───





『奪う』。





ぱきり、と何かが折れるような音と共に。


俺の手の中では、凍結したバラが白く染まっていた。



冷凍バラの、出来上がりだ。



「ふう……。

 今回はそこそこ上手くできたな」



無駄にマナを消費することもなく、茎から花弁の先まで綺麗に凍結したバラが手の中にある。


風も起こっていなければ、バラ以外のものに影響は出ていない。


魔法というものに、徐々に慣れてきた証拠だろう。



「どうだミラーヤ?

 なんか、わかったか?」


「……???」



ミラーヤは目を丸くし、頭の上にクエスチョンマークを大量に出していた。



「えーっと……すみません、トーヤさん。

 いま、何をされましたか?」


「え?

 普通に氷魔法を使ったつもりなんだが」


「……うーーーん?????」



ミラーヤのクエスチョンマークが、さらに増えていく。



たしかに、ミラーヤの言ったような『氷漬け』の状態にはなっていない。


彼女の想定では、氷の塊の中にバラを閉じ込める感じだったのだろうか。



しかし、俺が魔法を行使すれば『バラ自体が凍結した』のだ。


俺はこれしか魔法の使い方を知らないので仕方がないのだが……およそ、ミラーヤの予想とは違った結果だったのだろう。




「マナは流れた……けど、どこかに行っちゃった?

 氷雪系魔法の匂い……よりも、フィーニャと同じ匂い……?」



ミラーヤはどこかひっかかるところがあるらしく、ぶつぶつと何かを呟いている。



「もしかして、なんか魔法の使い方間違ってるか?」


「あ、いえいえ!

 でもその、なんといいますか……。

 ……ひとまず、そのバラをいただいてもいいですか?」


「ほいよ」



凍り付いたバラを、ミラーヤに手渡す。



「つめたっ……」



手渡した瞬間、ミラーヤは小さな悲鳴を漏らす。



そして。



「あれ……?」



ミラーヤが少し力をこめた瞬間。


バラは、くしゃりと音を立てて崩れ去った。



そしてバラだったものの破片は、彼女の手の上から塵のように舞い上がり、大気にとけてしまった。



「……」



大きく口開けて空を見上げること、十数秒。


ようやくミラーヤは俺の方に向き直る。



「トーヤさん、ひとつわかったことがあります!」


「おう」


「わからないということが、わかりました……」


「……そうか」



無知の知。


ミラーヤが放った一言を端的に表すと、それだ。



うむ、素晴らしいじゃないか。


自分がモノを知らないということを知覚するのは、真の知の始まりだという。



「……いや、先生がそれじゃダメなんじゃないか?」


「あうう……そうですよねぇ」



ミラーヤは、またも耳をしゅんと下げてしまった。



「正直なところを言うと、不思議なんです……。

 氷雪系魔法なんですけど、そうじゃない、みたいな。

 もう少しお時間をいただけると、なにかわかるかもしれないんですが……」


「氷魔法じゃない、ね」


「はい……。

 何か、トーヤさんの方で心当たりはありませんか?」


「そうだな……」



俺は、かいつまんでいくつかの話をした。


そもそも魔法やマナについて、俺は感覚的にしか理解してないこと。


最初に氷の器に向けて魔法を使ったときも、バラと同じように凍結し、最後には崩れてしまったこと。


そしてサフィーアがその氷塊を触ったときに、ミラーヤと似た小さな悲鳴をあげた事。



「なるほど……」


「どうだ、なんか足しになったか?」


「うーん……ほんの少しだけ、もしかして、とは思いましたけど……」


「どんなことだ?」


「……いえ、きっと私の気のせいです」



ミラーヤは何か心当たりがあるようだったが……少し首を振り、続きを話すのをやめてしまった。



「トーヤさんの魔法については、フィーニャともういちど話してみます。

 お時間をいただければ、私の鼻でなにかわかるかもしれません」


「そっか」


「お力になれず、すみません……」


「ああいや、こっちこそなんかすまんな」


「あ。でもでも、かわりに私がお教えできそうなところがひとつ見つかりましたよ!」


「なんだ?」


「それはトーヤさんが、感覚だけで魔法を使われている。ということです!」


「そう言われれば、そうなんだが……。

 むしろ魔法って、感覚以外にやりようがあるのか?」


「えっとですね。

 魔法が発現する瞬間というのは、大きく分けて『マナ』と『行使』の二つの過程があるんですが……」


「ほう」



少し専門的な話になってきたので、興味をそそられる。


が。



「……先に、お茶にしましょうか」



ミラーヤはにこりと笑い、ティータイムの準備を始めたのだった。





────

──





「ふむ……。

 昨日の紅茶とは、またちょっと違うんだな」


「えっ。

 わかるんですか、トーヤさん!?」


「いや、まぁ。

 なんかちょっと甘い匂いがするな、とだけ」



それは以前なら気付けなかったような、ほんの少しの匂いの差だ。


やはりこちらに来てから、五感が研ぎ澄まされているような感じがする。



「すごいです、トーヤさん!

 今日のお茶は、昨日の茶葉に加えて少し甘めのものを混ぜてるんです。

 でも、本当に少しだけなんですよ。本来の香りを邪魔しない程度に、です!」


「へえ」



ミラーヤには申し訳ないが、俺には匂いの違いがわかっても、紅茶の良さはわからないらしい。


もう一口飲んでみても、喉を潤すものという感想以外に特別なものを感じられなかったからだ。



「ではではお茶のおともに、クロキア自慢のドライフルーツも召し上がれ~」


「ありがとう、いただくよ。

 ……で、ここからは座学の時間と」


「はい!

 ええと、どこまでお話ししましたっけ」


「魔法は『マナ』と『行使』に分かれる、って話だったか」


「あ、そうです!

 マナの流れや掴み方は、魔法を使えるならもうご存知ですよね?」


「まあ、たぶん……?

 感覚でやってるから、本当にこれでいいのか、って感じはあるが」


「良かったです。

 じゃあ、今回お伝えしたいのは『行使』と呼ばれる方ですね」


「そっちは、全く想像がつかんな」


「そうですね、もしかするとトーヤさんは『行使』を一切していないのかもしれません」


「と、いうと」


「魔法には本来、向かうべき場所というのがあります。

 その場所や方向を教えてあげなければ、魔法はマナの流れや自然現象にしたがってあふれかえるだけです。

 たとえば氷雪系魔法なら、てのひらの上に不規則な形の氷が出来たり、目の前でできた氷の塊が地面に落ちるだけですね」


「ふむふむ」


「『行使』が上手くできる人は、魔法に目的を持たせることができます。

 たとえば、氷の塊を前方に勢いよく発射したり、人によってはとても緻密な形をとらせたりすることもできますね」


「あー……なるほど?」


「……というのがわたしが教えられたときの言葉なんですが、わかりますか? トーヤさん」


「たぶん、だが。

 『マナ』の扱い方で魔法の大きさや威力が決まり、それをうまく『行使』することでベクトルを付与したりできる。ってことだな」


「べくとる、ですか……?」


「ああ、えーっと……ミラーヤの使った言葉でいうと『向かうべき場所』だな。

 例えば『前の』『細い範囲に』と指定すれば、氷魔法の影響範囲を調整して『氷の道』を作ったりできると。

 そういうことだろ?」



それがもし炎の魔法なら、手が火炎放射器がわりに。


水の魔法なら、噴水やジェット噴射にもなるのだろう。



「はい!

 その認識で合っていると思います。

 ちなみにもっと詳しく言うと、『行使』というのもひとつの魔法だ。なんて言われていますが……。

 それは、学者さんたちが研究されている分野のお話ですね。

 わたしたちが普段使う魔法程度なら、そこまで知っておく必要はありません」


「了解。

 だいたい想像はできたよ。

 で、その『行使』ってのはどうやって覚えたらいい?」


「お、早速やる気ですね!

 すばらしいです!」



ミラーヤが、チップ状になったリンゴを一つ頬張る。



「『行使』は、それほど難しくありません。

 魔法を放つときに念じるんです。えいやー! って」


「……なんか急にアホっぽく」


「ほ、本当なんですよう!

 ええと、わたしが習ったときは……『世界に影響を与える範囲を具体的に想像する。出来る限り緻密に、空気の一粒まで計算するように』。

 と、言われました」


「想像する、か」


「前に、いけー!

 って念じるだけなら、ほとんどの人ができます。

 でも、想像した通りの形をとらせるのには、それなりの才能や努力が必要と言われてますね」


「ほー……」


「ちなみに、クロキアの方々が昔からやっている遊びに、それを使ったものがあるんですよ。

 水の中に手を入れて、その中でどれだけ複雑な形の氷像を作れるか……というものですね。

 それは本当にただの遊びなんですが、それが上手な人は、魔法が使うのも上手ということです!」



水の中で氷像を作る、か。


たしかに昨日感じたように、水の持つマナというものはとんでもなく流動的だ。


その中の限定的な範囲だけを捉えながら魔法を行使するのが大変だというのは、想像に難くない。



「ふむ……。

 なんにせよ、やってみるか」


「がんばってください!」



俺が立ち上がると、ミラーヤは二つ目の乾燥リンゴを口に入れながら激励を飛ばしてくれた。



「このへんでいいか」



俺が選んだのは、中庭でも土が剥き出しになっている地面。



「まずは適当に」



そしてそこに向けて、今までの感覚で魔法を放つ。



かちり。



音と共に、掌の周りに半径30センチほどの凍結した地面が出来た。



白くなった土はガチガチに凍っており、手でつついてもびくともしない。


意図せずこんな地面を踏めば、間違いなく転んでしまうことだろう。



と。

ここまでは、予想通りの結果。



「んじゃ、次はベクトルをつけて……」



凍結した地面の少し横に、掌を当てなおす。



(世界への影響を計算する、か)



よくわからないが、ミラーヤは念じるものだと言っていた。


それはきっと、言葉で説明して理解できるものでもないのだろう。


なら、数を試してみるしかなさそうだ。



今回は試しに、直線状に凍結させてみるとしよう。


理想は幅10センチ、長さはまっすぐ5メートルほどだ。


静止した地面はマナの流れが掴みやすく、感覚を合わせるのに苦労はしなかった。



「これで……っ!!」



力をこめ、魔法を放つ。



中指の先から線が走るように、地面が白く変色する。



そして出来上がったのは───歪な線。


直線といえば直線なのだが……まるで子供が木の棒を引きずって歩いた跡のようなシロモノだった。



「うーん、いまいちか」


「こればかりは、慣れですからね。

 でも、初めてにしてはすばらしい出来だと思いますよ!

 この調子なら、あと数日練習するだけで一般的なクロキアの人と同じぐらいにできると思います!」


「それは褒められてるのかどうなのか……」


「いえいえ、むしろ十分すぎるぐらいですよ、トーヤさん!

 普通は長い時間をかけて『マナ』や『行使』の感覚を覚えていくものです。

 十年以上かけて覚えるものを、昨日魔法を覚えたばかりの人ができちゃうんですから。

 正直いって、ずるいです!」


「そうか……。

 なら、素直に褒められておくことにするよ」


「フィーニャの言ってたことじゃないですけれど……トーヤさんなら、本当に魔法を職業にできるかもしれませんね」


「魔法を?」


「はい。

 誰でも魔法が使えると言っても、やっぱり向き不向きというものはあります。

 中には才能があって、それを戦いのために活かそうと磨く人もいます。そんな人は、騎士団の魔術師様になられたりもしますね。

 もちろん、戦いだけが魔法の使い道ではありませんが……」


「騎士団っていうと、昨日のヴェルニグとかいうおっさんのことか?」


「あ、あはは。おっさん、ですか……。

 そういえばトーヤさん、ヴェルニグさんに怒られたらしいですね?」


「ああ、サフィーアのことをサフィーアって呼んだらな。

 今思えば、当然っちゃ当然なんだがな。

 ヴェルニグはサフィーアのことを『我が王』なんて呼んでたし」


「それは……そうかもしれません。

 ヴェルニグさんは、ほんとうに立派な騎士団長さんですから。

 特に、フィーニャに対する忠誠心は人一倍です。

 ヴェルニグさんのその意志の強さが、昨日はトーヤさんと合わなかったのかもしれませんね」


「なんだ、あのおっさん騎士団長だったのか」


「はい。

 ヴェルニグさんは、クロキアの方にしてはとてもお身体が強いんです。

 魔法もうまく使われますし……。なのでその実力で、とても若くして騎士団長になられたんだとか。

 少なくとも、私がフィーニャに拾われる前から、あの鎧を着て玉座を守られていますよ」


「へぇ……。

 ま、たしかにあの鎧を着てあんな場所にいるならそうか」



それにしてはいささか短気な気もするが、あれぐらいの頑固さがあってこその忠誠心や実力なのだろう。



「次に会ったら、きっと仲良くしてくださいね?」


「考えとこう。

 あちらさん次第だがな」


「あはは……。

 トーヤさんも、ちょっぴり頑固さんなのかもですね……」



頑固、か。


『マイペース』、『ドライ』と同じぐらい言われたことがある言葉だ。


無論、褒められたことではないのだろうが。



「よいしょっと……。

 にしてもうまいな、この果物」



テーブルに座りなおし、茶菓子に手を伸ばす。


リンゴを始めとしたドライフルーツはどれも一口サイズに切られており、食べる人のことをよく考えられていた。



「果物は乾燥させると、甘みがぎゅ~ってなりますからね。

 お茶のお供にはぴったりなんです!」


「なるほど」



ひとつ摘まむと、口の中にじんわりと甘さが広がる。


きっと砂糖は使っていないのだろうが……天然の砂糖菓子と言えるかもしれない。



「……果樹園もいいかもな」


「えっ?」


「俺の魔法が役に立つなら、果物農家になるのもいいかもなって。リンゴとか栽培してさ」


「く、果物農家ですか……。

 また、おはなしが飛びましたね……?」



またミラーヤの大きな耳が、頭の上でくっついた。


どうやら彼女は、考え事をするときに耳を内側に向けてこすり合わせる癖があるらしい。



「はは、いきなりすぎたか」


「うーん……たしかに、リンゴ農家という道もあると思います。

 トーヤさんがおいしいリンゴを作ってくだされば、フィーニャも喜ぶでしょう。

 でも、トーヤさんの魔法がそれに役に立つかというと……」


「まぁ、そうだよな」


「はい。

 クロキアにはすでに美味しいリンゴやブドウを作られる農家の方がいらっしゃいます。

 わたしが買う果物も、いつも決まった方々のものですしね。

 だから今からトーヤさんが果樹園を始められるのは、無理とは言いませんが、その……」


「ありがとう、大丈夫だ。

 ただの思い付きだよ」


「そ、そうですよね。

 安心しました……」



そうだ。



一口に身を立てると言っても、そう単純な話ではない。


俺はこっちの世界にくるまで、本当にただの学生だったのだ。


自分に何ができるだろうかと考えても、簡単に思いつくものではないのだろう。



(氷魔法が役に立って、俺の特性を生かした職業。か……)



未だ漠然としていたが……少しずつ、俺の中で何かが形になり始めていたのだった。


毎日昼12時に、一話ずつ投稿予定です

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