第16話「兵器と、鎧」
村に帰ってきた俺たちを迎えてくれたのは、ブランシュだった。
「遅かったな。魔術師殿」
「わりい、ずっとここで待ってたのか?」
「日が沈み始めてからは、な」
先日の戦闘があった東門とは真逆の、西側の塀の前。
ブランシュは、そこで待機していたらしい。
「そっか。
そりゃ申し訳ないな」
「いや、気にするな。
今回の騒動の責任は全てこちらにある。
そちらに負担はかけんつもりだ」
「それで?
あなた、何が急ぎの用があったのではなくて?
あの炎熱の子の処遇の話ではないのでしょう?」
サフィーアがブランシュの意図を汲み取り、言葉を投げかける。
「ああ、そうだ。
先にこれだけは決めておかねば、と思ってな」
互いの予想通りだったのか、ブランシュは懐から包装された紙を取り出す。
「まずはこれを読んでほしい。
フレイミアからの、正式な書簡だ」
「書簡……?」
包装が解かれた紙を手渡された俺は、二つ折りのそれを開く。
サフィーアも、それを横から覗き込んだ。
「これは……招待状かしら?」
「ああ。
大オヤ……ゴホン。
国王直々に、今回の騒動に関して正式な話し合いの場を設けたいとの意だ」
「フレイミアの王様から、か」
「うむ。
こちらの王も、事態を重く見ている。
今回の騒動を解決した者……つまりトーヤ殿と、可能であれば国の代表と呼べる者と話がしたい。とな」
「国の代表、ね」
サフィーアに目配せをすると、彼女も頷き返す。
「ええ。
なら、私が行きましょう」
「サフィーア殿が、か?」
「そうよ。
だって私、クロキアの王様なんだもの」
「……」
彼女が軽く放った一言に、ブランシュは押し黙る。
「失礼は承知だが、信じられんな。
決してあなたを疑うわけではなく……むしろあなたを信じるからこそだ。
サフィーア殿、あなたは自身を『顧問魔術師』だと名乗ったはずだからな」
ブランシュはその言葉を信じ切れないのか、もっともな反論をした。
「そうね。
私がそう名乗ったのは事実なのだけれど……あくまでそれは、仮の身分ね。
そうでもしないと、お城の外に出られない。というのもあるのだけれど。
なにより今朝のあの状況で、わざわざ国王であると名乗るほうが不用心でしょう?」
サフィーアがあくまで軽く返答したので、俺も言葉を添える。
「ブランシュ、サフィーアの言ってることは本当だ。俺が保証する。
王様として外に出れないから、顧問魔術師として……ってのは、言ってて俺も無茶だとは思うが。
でも、本当なんだ。
なんなら、ヴェルニグやミラーヤに聞いてくれてもいい」
「ふむ。
一応、筋は通っているが……」
ブランシュの疑念も当然だ。
通常であれば、こんな場所に一国の王がいるわけがないのだから。
「それとも。
私が王であると信じてもらえないのは、この背格好のせいかしら?
もしそうだとしたら、残念ね。
見た目で判断して欲しくないというのは、あなたがその鎧を着ているのと同じ理由だと思うのだけれど。
ねえ───ミス・ブランシュ?」
「……っ」
その一言に、場の空気が凍り付く。
(……ミス・ブランシュ?)
サフィーアは今、確かにこの甲冑の主のことをミス・ブランシュと呼んだはずだ。
「私だって『貴女』を疑おうと思えば疑えるのよ。
今回は兵器の真偽の確認のために来たはずなのに、どうしてそんな招待状を持っているのか。
まるで『フレイミアに非があることを最初からわかっていた』みたいじゃない」
「……その疑念はもっともだ」
「貴女が話を急いでいるのも、怪しい。
それにそちらに非があるのなら、本来はそちらの代表者がこちらに出向くべきじゃなくて?
……なんて風にね」
「……なるほど。
その上で招待を受けるということは」
「ええ」
「仮にあなたが国王ではないとしても。
私たちフレイミアが『国王として招かれた』あなたをどう扱うかを見ることが出来る、と。
そう言いたいのだな」
「もちろん、そう取ってもらっても構わないわ。
ただ、私が国王であり顧問魔術師であることは、どちらも事実。
なんならここで、全力の氷雪魔法をお見せしてもよくってよ?」
「いや……十分だ、あなたを信じよう。
そしてこれまでの非礼を詫びよう、クロキア王」
「ありがとう。
でもそれは、どちらの意味でかしら?
政治的な意味で? それとも───」
「私個人として、だ」
「……そう。
なら、安心したわ」
そこまで言って、サフィーアがようやく王としての空気を消した。
「お互いに、しがらみは無しでいきたいものね」
「その強かさと、頭の回転の早さです。
あなたが王であるということを疑う余地はないでしょう」
「ありがとう。
でも、敬語は要らないわ。
外に出てまで堅苦しいのは嫌いなの」
「……大オヤジ殿と同じようなことを仰る」
ブランシュが、いつかのヴェルニグと同じように頭を抱える。
「なあ。
さっきも言いかけてたと思うんだが……その『大オヤジ殿』ってのは、誰のことだ?」
「ああ、すまない。
フレイミアの国王のことだ。
こちらの国民はみな、王のことを『大オヤジ』と呼んでいるのだよ。
昔の大オヤジ殿の、『国民は皆家族だ』という思想にちなんでだろうがな」
「へぇ、そうだったのか。
なんつーか……良い国だな」
「そう思うか?」
「ああ。
為政者と国民の距離が近いってのは、良い国の証拠じゃねえか?」
「……それ故に、問題もあるがな」
ブランシュはどこか思うところがあったのか、言葉尻を濁らせた。
「まぁとにかく、だ。
その書簡について、こっちはこの二人で招かれるつもりだぜ。
ブランシュがそれでいいなら」
「異論はない。
国にも、そのように伝えておこう」
「ごめんなさい。
それなら、三人だと伝えておいてもらえるかしら?」
「三人?」
「ミラーヤよ。
あの子もきっと来るわ。私の傍から離れないんだもの」
「承知した。
一人増えたところで、大した問題はないだろう。
……これでいいか? サフィーア殿」
「ええ、よくできました」
ブランシュは未だ気乗りしないようだったが、サフィーアの言う通りに敬語をやめたようだ。
「さて、じゃあ細かいことは飯を食いながらにするか。
今朝からなんも食ってねぇもんな」
「そうね。
私もさすがに、お腹が空いちゃったわ」
「ならば今一度、村役場に向かおう。
どうやら、ミラーヤ殿が夕飯を作ってくれているようだ」
「お、そりゃ楽しみだ」
こうして『兵器』の一件は、誰の血を流すこともなく終わりを告げたのだった。
────
──
「おかえりなさい。フィーニャ、みなさん!」
「ただいま。
いい匂いがするわね」
「はい!
わたしはフィーニャが帰ってくるのをずーっと待ってました!
シチューをことこと煮込みながら、です!」
「ふふ、ありがとう」
「ヴェルニグさんや騎士団のみなさんはもう先に食べてしまいましたから。
あとはフィーニャやトーヤさん、ブランシュさんだけですよー」
言いながら、ミラーヤは俺たちを談話室に案内する。
以前に俺たちが地図を広げていた場所は、台所と隣接しているのだ。
「……私の分もあるのか?」
「もちろんです。
ブランシュさんにはたくさん手伝っていただきましたから」
「あら、そうなのブランシュ?」
「いや、私は何もしていないが……」
「いいえ、そんなことはありません。
お台所の火を点けてくださりましたし、そのあとの火加減の調整まで自由自在でした!
炎熱の民のみなさんって、お料理に魔法が使えるんですね……!
ちょっぴりうらやましくなっちゃいました」
「へぇ」
ブランシュのコルヴィに対する姿勢から、彼女はかなり自他に厳しい人物だと思っていたのだが。
思いの外、親切なところもあるようだ。
「……私は、少し魔法を使っただけだ」
「それでもですよ。とっても助かっちゃいましたから。
はい、召し上がれ~」
言っている間に、ミラーヤは手早く盛り付けを終えて配膳をしてしまった。
さすが、このあたりは手慣れたものだ。
「しかし……」
ブランシュはこの場の空気か、もしくはミラーヤの距離感の近さに戸惑っているようだった。
おそらくだが、彼女の予想ではもう少しお互いに距離がある場面だったのだろう。
俺たちは、危うく敵国同士になるところだったのだから。
「ほら、軍人さん。
鎧をしたままじゃ食べられないでしょう?」
「……わかった、馳走になろう」
サフィーアに背中を押され観念したのか、ブランシュは鎧を脱ぎ始める。
アームガードから順番に、手際よく取り外し始めた。
「トーヤ、何をしているの」
「ん? なんもしてないけど」
「貴方にはデリカシーというものが無いの?」
「……え? 鎧脱ぐだけだろ?
下にちゃんと服着てるんじゃないのか?」
「いいから、一度出ていきなさい」
「いや、飯……」
「そんなの後でいいから。ほら早く」
半ば押されるような形で、俺は部屋を後にする。
(……俺が悪いのか?)
力強く閉められた扉の前で待っていると、中から声が聞こえた。
「私は気にしないのだが……」
「ダメよ。
貴女もレディなんだから、もう少し自覚を持たないと」
「わぁ。
鎧って、重いんですねえ」
「あら、髪は長かったのね。
なら、もう少しお手入れをしなくちゃね」
「いや、私は……」
「くんくん……ちょっと汗臭いです」
「確かにそうね。
ほらブランシュ。香水をつけてあげるから、腕を上げなさいな」
「ま、待て。
こんなところでやったら飯にかかるだろう……」
「いいのよ。
むしろ貴女は、香水を口から摂取するぐらいがちょうどいいわ」
「や、やめ……」
「私じゃ腕が届かないわ。
ミーチカ、後ろから支えてあげて」
「はい!」
「くっ……。
ミラーヤ殿、思ったより腕力があるのだな……!?」
「獣人ですから~」
「~~~~~っっ!!!」
ブランシュの悶絶する声を最後に、静かになった。
「はいトーヤ、入っていいわよ」
「……さいですか」
複雑な気持ちで扉を開ける。
そこに座っていたのは、サフィーアとミラーヤ。
そして、赤髪の女性だった。
仏頂面の、しかし恥ずかしそうに膝に手をついて座っている長身の女性。
それが、ブランシュその人なのだろう。
「……こりゃ驚いた」
「ええ。
私なんかより、ずっと女性らしいわ」
「……よしてくれ。私は軍人だ」
「確かに身体は生傷だらけ。
でも、いいじゃない。
フレイミアまでの旅の間、しっかり私たちを守ってくれそうだわ」
俺の世界で言う、スポーツウェアというやつだろうか。
ブランシュが着ているのは、腹部や身体のラインが丸出しになる薄着だった。
その服装は、十分すぎるほどに筋肉のついた、それでいて女性のしなやかさを失わない彼女のプロポーションを際立たせていた。
そしてたしかにサフィーアの言う通り、身体の各所に傷跡は見受けられたのだが……。
しかしそれらは、彼女が軍人としてどれだけの研鑽を積んで来たかの証でもあるのだろう。
「……いただくぞ」
バツが悪くなってきたのか、ブランシュがスプーンを手に取る。
「そうね。
私たちもいただきましょうか、トーヤ」
「ああ」
「ミーチカも」
「いただきます!」
ミラーヤの合図で、俺も席につくことにする。
「……うまい」
意外にも、最初に声をあげたのはブランシュだった。
「うちのミラーヤの手料理、お気に召して?」
「ああ。
……本当に、ここの厨房で作ったのか?
これほど上等なものは、フレイミアの食堂ではまず出てこないだろう」
「えっ、と……。
今日のは、ここにあったもので作っただけですから。
調理道具も食材も、とくに特別なものは使ってないと思いますが……」
「……驚いたな」
「へぇ……。
って、待てよミラーヤ。
この役場にあったってことはつまり、俺らが任務中に使ってた食材と同じってことか?」
ミラーヤの言葉に、俺もブランシュとは違う理由で驚いてしまった。
「たぶんそう、です?」
「そうか……。
作る人間が違うだけでこうも変わるんだな」
改めて、料理スキルの差に驚愕する。
「えっと、香辛料なんかはお城から持ってきたものを使いましたけどね。
ちょっぴりですけど」
「それでもだよ。
俺が作ったら、絶対にこうはならん自信がある」
「ミーチカ、貴女……荷物の中に調味料なんか入れていたのね」
「えへへ。
だってフィーニャにはおいしいものを食べてほしいじゃないですか」
「本音は?」
「私がおいしいものを食べたいからです!
……フィーニャと一緒に、ですよ」
「まったくもう。
……でも、今回は良しとしましょうか。
私だって、作ってもらってる身だものね」
「えへへぇ」
言いながら、ミラーヤは自分の分をぺろりと平らげた。
「さて、おかわりは早い者勝ちです!」
ミラーヤは空になった食器を持って立ち上がったが、すでに平らげてしまった人間はもう一人いたようだ。
「えへへ。
ブランシュさんも、どうですか?」
「……いや、私は」
「遠慮しないでいいのよ。
ミラーヤの手料理に夢中になってしまうのもわかるもの」
「それには俺も同意だ。
ミラーヤの飯は、食えるときに食っておいたほうがいいぜ。
次にいつ食えるかわからんからな。俺もおかわり」
「はいっ。
ほら、ブランシュさんもどうぞ!」
「……では、いただこうか」
笑顔で手を伸ばすミラーヤに、ブランシュは少し恥ずかしそうに器を渡す。
堅物だと思っていたフレイミアの軍人も、ミラーヤの笑顔と手料理の前では絆されてしまうようだ。
「では、三人分よそいますね。
フィーニャはいいんですか? 残り少ないですけど……」
「私は、残ったらでいいわ」
「わかりました」
三人分の食器を持って、ミラーヤが台所へと消えていく。
「で、招待とやらはいつ受ければいいんだ?」
「……ゴホン。
それに関しては、早いほうが良いだろう。
そちらの都合が合えば、だが」
「私はいつでもいいわ。
この村のことと、ヴェルニグへの指示を済ませてからならね」
「だったら、俺もそうなるか?
ここでの問題は、一旦解決したってことだからな」
「そうね。
トーヤには今後も、顧問魔術師として働いてもらおうと思っているわ。
貴方さえよければ、だけれど」
「異論はないよ。
ま、顧問魔術師っつっても、体のいいサフィーアの小間使いかもしれんが」
「ふふ……そうかもしれないわね。
でも、私の下で働けるんだもの。
もっと喜んでくれたっていいのよ?」
「ま、否定はしねぇよ。
ミラーヤの飯もついてくるしな」
どうやら、なし崩し的に俺の立場が決まったようだ。
王城務め……とはいかないのだろうが、衣食住は確保されているし、サフィーアにも近い立ち位置だ。
この世界で生きていくには、これ以上ないポストなのだろう。
「私はあの馬鹿どもの処遇だけ決まれば、明日には動けるのだが」
「ああ、そうだった。
コルヴィたちをどうするかだな……」
「そちらのは書簡には、穏便に済ませたいと書かれていたが……」
「そうだな。
クロキアにも、外の人間を裁くための法はないらしくてさ。
だからここの村長の決定に従って、そのままフレイミアに還そうって方向だ。
もちろん、二度とこんな行為をしないって約束付きでな」
「ふむ……端的に言って、ありえんな。
奴らは家と田畑を焼いてしまったのだろう?
本来なら、死罪が妥当だが」
ブランシュの厳しい意見は、もっともだ。
「まぁ、何の理由も無くやったのならそうかもしれないけどさ。
今日のことで、その理由もわかっただろ?
正義感……って言ったらおかしいかもしれないが、とにかくコルヴィたちは騙されてたんだ。
モノが焼けたのだって、戦いに使ったのがたまたま火の魔法だったからで。
他の魔法を使う国なら、こうはなってなかったんじゃないか?」
「……寛大すぎるな。いや、甘いと言った方が正しいか。
サフィーア殿は?」
「私もトーヤの意見に賛成ね。
結果として、取り返しのつかない被害はなかった。
なら、ここから人の命が失われるのは御免だわ」
「ふむ。
クロキア側からは、恨み言の一つでも出るかと思っていたが……頭が上がらない思いだ。
……いや、そういう暗い言葉をかけてくれたほうがまだ楽だったのかもしれんな」
その言葉に、サフィーアが同意する。
「そういうことね。
今回の件、私だって善悪の二元論で片付けるつもりはないわ。
だから、私も貴女の───フレイミアの王様からの招待を受けることにした。
今まで交流の無かった国同士がここまで関わってしまった以上、お互いの関係を明確にしておく必要があるの。
この問題がきっかけになってしまったことは、お互いにとって楽なことではないかもしれないけれど……それでもきっと、必要なことのはずよ」
「俺はブランシュの気持ちもわかるぜ。
炎熱の民への復讐とか、そういう話になったっておかしくないって感覚はな。
でも、誤解を恐れない言い方をすれば、クロキアの人間はそういう感情が薄いらしくてな。
ここの村長も、家を焼かれたアデレニエも。あんまり炎熱の民を恨んでる様子はなかった。
というか、怨嗟とか憎悪とか……そういう激しい感情が出てこなかったんだ。
村長やサフィーアの決定も、間違いなくそのあたりの感性の違いはあるだろうな」
「ああそうだ。
本来、そういった感情が出て当然なのだ。
私は書簡を読んでまず初めに、あの九人が生きたままフレイミアに還されてきたことに驚いたよ。
コルヴィが人質に取られているのか、とも考えたさ」
「それが違うんだから、俺も驚いたよ。
まぁ、初めは俺もコルヴィたちを恨んでたぜ。
この村の人間が怒りを感じないのなら、俺が代わりに怒ってやる、ってな。
……一時的にではあるが、コルヴィたちをどうにかしてやろうとまで考えてたさ。
っと、ミラーヤ。ありがとう」
三人分をよそい終わったミラーヤが各人に器を渡し始める
「感謝する、ミラーヤ殿」
「いえいえ。
……でも、殺し合いにならなかったのはトーヤさんのおかげだ。って、ヴェルニグさんも仰ってましたよ。
炎熱の民のみなさんが、何か理由を持っていることにいち早く気付いた。と」
「そうなのか? トーヤ殿」
「まぁ……サフィーアやコルヴィたちの話もあったからな。ハナから違和感はあったよ。
死人が出なかったのに関しては、俺が血を見たくなかっただけだしな。
そのおかげで冷静に話ができたのなら、なによりだけど」
「たしかにコルヴィも、『フード付き』がいなければ今頃……とは言っていたな」
「大活躍ね、トーヤ?」
「やめてくれ、くすぐったい。
とにかく、コルヴィたちへの処罰はなしだ。少なくともクロキア側からは」
「ええ。
そのあたりも、そちらの大オヤジさんに持っていくことになりそうね」
「サフィーア殿の仰る通りだな。
これだけのことをしでかしてそちらの好意に甘え続けるだけでは、こちらの面子も何もあるまい。
コルヴィたちには、フレイミアでしっかりと処分を受けてもらおう。
少なくとも、大オヤジ殿ならそう言うはずだ」
「そっか……。
まぁ、それならそれでいいや。
ただし、死刑とかはやめてくれよ。さすがに」
「その点に関してはこちらの王を信じてくれ。
……騒動を起こした側の我々が言えたことではないかもしれんがな」
「大丈夫だ、信じるよ」
「ふっ……改めて、クロキアは甘いな」
「そうかもな。
でも、これがクロキアのやり方なんだと思うぜ。
俺だって別に、人の不幸を願う性質じゃない」
「そう、か……。
もしここがフレイミアなら、言葉よりも先に大オヤジ殿の拳が飛んできているだろうがな」
「おいおい。
フレイミアってのは、そんな物騒なトコなのか……?」
「まぁ、クロキアのように上品な国ではないだろうな。
国王に意見をするのは簡単だが、拳の数発は覚悟しておかねばならん。
そしてこちらも王を張り倒すぐらいの覚悟がないと、意見は通らんよ」
「物騒すぎるだろ……」
「ふ、そう構えるな。
さすがに賓客に対して、そういう振る舞いはせんだろう。
ただ、フレイミアは方法さえ間違えなければ、拳一つで成り上がれる国だとは言っておこう。
私もそのクチで……」
「……ブランシュ?」
「……喋りすぎたな、忘れてくれ。
ともかく、あの馬鹿どもの処分はフレイミアへ来てからとするか」
「ああ、頼むよ」
話がまとまったところで、全員が食事を終えた。
「じゃあ、出発は明日の昼でいいかしら?」
「そうだな、私もそのように支度をしよう」
「改めてよろしく頼むぜ、ブランシュ」
「よろしくね、軍人さん」
俺が差し出した手を、ブランシュが強く握る。
「こちらも、クロキアには頭が上がらんのでな。
王都につくまでの間、しっかりと護衛をさせてもらおう」
かくして、俺たちのフレイミア行きが決まった。
これは当初の予想とはまるで違う、穏便な形での『国交』だった。
この世界の国々も、こうして手を取り合うことができれば良いのに。
いつのまにか、そんな思いが俺の中に芽生え始めていた。
毎日昼12時に、一話ずつ投稿予定です




