やけ酒飲みと
前領主アーネスト・ユクレヒトが死んで以降、微妙なバランスで成り立っていた自由港ワーレンの天秤が帝国側へと傾き続けている。
それは帝国側の代表者であるアンスにとって喜ぶべき状況なはずなのだが、ここ数日ずっと苛立っていた。
政治的・外交的には上手く行っているが、それとは別として個人的な欲求が達成されないでいたからだ。
それを紛らわせようとしているかは分からないが、その夜アンスは部屋で酒を煽っていた。
「くそっ、あの田舎者共が!! 邪魔ばかりしおって……」
イライラの原因は分かっている。
アズベルトがシエリスに命じてエリンシアに張り付いているため、事あるごとに彼女が邪魔に入る事でアンスはその食指を伸ばせずにいたのだ。
「お前達もここで突っ立って無いで、あの野蛮人共を何とかしろ!」
従者達に当り散らす。
しかし勇猛で知られるアズベルト・ロアと部下の騎士達に喧嘩を売るなど、帝国の中央でおよそ戦いとは無縁に過ごしていた彼らに出来ようが無かった。
怯えていた従者の一人が、アンスを何とかたしなめる。
「いずれエリンシア様との婚礼が行われれば正式な夫婦となれるのですから、それまでどうかお待ち下さい」
だが逆にそれが癇に障ったのか、アンスは持っていたワイングラスを従者に投げ付けた。
「貴様に何が分かる!! 今が、今の姿こそが最も美しいのだ。これから日一日と醜く老い腐っていく! この苦悩も美も、何もかもを理解できん馬鹿共が」
十一か十二歳の少女に対してすごい物言いだが、その手の性倒錯者はこの世界でもよくいるのだろう。その事には誰も何も言わない。
胸元にグラスがヒットして服を赤く染めながらも、黙って主の暴風に耐えるしかなかった。
メイドが新しく差し出したワイングラスを飲み干す。
「よし!」
それから何杯か酒を煽って程よく頭に回って気が大きくなったのか、何か決意した様に立ち上がる。
周りがそれをいさめようとするが、それを振り切って部屋を出て行った。
このたび本作を作品賞に応募する事に決心しました。
この章(?)の終わりまでストック分は上げて行く予定ですが、題名含めて全編通してブラッシュアップ作業を行います。
その上で賞用に別作品として上げ直すか修正に留めるかはまだわかりませが、
なろうサイトの末席で細々書いている本作をわざわざ開いて読んで下さった方々にはぜひとも『面白かった・良かった場面』『つまらなかった・意味が分からなかった場面』『ここ変えたほうがいいんじゃ』等々、感想やアドバイスが物凄く欲しいです。
よろしくお願いします。




