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受け入れ開始

 昼過ぎになり陸上自衛隊の高機動装甲車に先導されながら複数台のマイクロバスが河原崎町の入口である出島に到着した。


 現地での事後処理に思いのほか手間取ったのと、悪路の為に移動に時間が掛かったからだ。


 護衛役として一緒に付いていた仙道が引継ぎと挨拶で、出迎えに来ていた紀一郎と接見する。


「仙道一尉、作戦ご苦労様でした。皆さん無事で何よりです」


 深々と紀一郎が頭を下げた。


「こんな事になってしまって申し訳ない」


「とんでもない。元々うちが持ち掛けた話ですから」


「指示された通り年齢と名前を聞いて、それを書いたメモ紙を身分証代わりに持たせてる。我々は明石隊と違って外語研修受けてないから、それ以上の事はやれって言われても無理なんだがね」


「ありがとうございます。後は僕らが引継ぎますんで、戻って休まれて下さい」


「困った事があったら我が隊以下、いつでも力になるよ」


 こちらに得意満面の笑みを向けて去って行った。


「何で一言もしゃべらないんですか?」


 斜め後ろに控えていた明石にクスクスと噴出しながら尋ねた。


「あいつの事が嫌いなのよ。俺達が行くはずだった作戦横取りしやがるし」


「そんな事言わないで下さいよ。仙道一尉に悪いでしょう」


「気にすんな、あいつも俺の事が嫌いだから」


 過去二人の間に何かあったのだなと思いつつ、それ以上詮索する事はしない。大して面白い話にもなりそうに無いからだ。


「これからの予定はどうなってます?」


「さっきのミーティング通りだよ。テントとベッドの割り当てと注意事項の説明して、その後は飯だな。そんで順次健康診断と風呂と……」


「それなんですけど今日は疲れているでしょうし、診察は明日からって事にしませんか? 夜遅くなると祐木先生達にも負担になりますし」


「OK じゃあそうしよう」



 仙道と紀一郎が話をしていた間もその後も救助した女達の受け入れ作業は粛々と行われていた。


 自衛隊は元々女性隊員が非常に少なく、河原崎町においても例外ではないため警察からも女性職員を借りて来て、男性では難しいケアにあたって貰っている。


 通常の来訪者には長々と出島入国手続きをしなければならないのだが、特例としてさっさと居留区エリアに入らせる。


 怪我や病気の症状が重い者に関しては出島機関内の医療施設に入院という事になった。


 患者は主に怪我を負った人と衰弱している人で、幸いな事に命に関わる状態の者はいなかった。


 予想されていた程の混乱も無く、既に一部職員は帰宅した程だ。


「さっき鎮静剤を打ったから当分は起きないよ」

 

増設された医療施設で治療に当たっていた祐木が、ベッドに眠っている入院患者の隣で心配そうに寄り添っていた美しい銀髪の少女に声を掛けた。


「あの……、この子は大丈夫なんでしょうか?」


 入院しているファンタジー世界の女達を見舞っているのは何故か彼女一人だ。


 実際この子以外にも付き添いたいと申し出た人もいた。


 しかし施設が調整官区内にあるのと健常な者は居留区に入れると決まっていたので認めなかったのだが、河原崎町の人間から見て美人ぞろいの救助者の中でも飛び抜けて見目の優れていた銀色の髪をした少女が、どうしても付き添いたいとの懇願に現場の職員が断りきれず特例として許可を出したのである。


「打撲に骨折、重症だけど死にはしない。友達? 姉妹?」


 少女は静かに首を振る。


「洞窟で一緒になったんです。彼女ずっと酷い目に合わされてて……」


 口ごもるが祐木にはどういう状況だったか、大よそ理解できた。


「君名前は?」


「エレオノーラです」


 恐らくは彼女自身も同じような仕打ちを受けたはずなのだが、それでも気丈に振舞い他者を思いやる姿を見て好感を抱かずにはいられない。


「大変だったね、安心していい。ここは安全だ」


 ただそれ以上掛ける言葉が見つからず、そのままそっとしておいた。


 それからしばらくして医療施設に顔を出した鹿野を捕まえてエレオノーラに居留区まで送らせた。

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