仙道中隊の霹靂 その2
先程のやり取りから時間が過ぎて明け方近くになった頃、何やらアジト出口の方から騒がしくなる。
「ん? どうした?」
銀髪の少女が眠っている部屋で見張りをしていた男がウトウトとしながらも、外の異変に気付いた。
聞き覚えの無い音が断続的に鳴り響き、さらには洞窟の中に煙が立ち込め始める。
「襲撃だー!!」
誰かが金切り声で叫んだ。
襲撃を受ける可能性は想定していなかったのか、中にいる男達がバタバタと無秩序に動き回る足音が色々な方向から聞こえてくる。
そうしている間にも、どんどん煙が充満していく。咳と涙が止まらなくなり、目を開ける事も困難になる程だ。
程なく洞窟の中に煙が充満してほとんど前が見え無い状態になる。男共には住み慣れているはずの洞窟内であるのだが、まったく身動きが取れなくなった。
ドドドドドドドドドドドドドドドド
ガガガガガガガガガガガガガガガガ
聞きなれない大きな音が洞窟内に響き渡り、その音の合間に肉が弾ける音も聞こえる。
「ひぇぇー!!」
「ゴホッ、ごほ…… ま、魔法使いだー!」
「たす、たすけて……」
恐慌と混乱の中で阿鼻叫喚があちらこちらで上げられていた。
「コホ、コホッ…… 一体、なに、が……?」
眠っていた女達もさすがの騒ぎに起きていたのだが、煙にやられて起き上がれずにいた。
「武器を捨てろ! 両手を頭に付けろ!」
「仰向けに寝そべろ!」
片言の変な言葉が聞こえてくる。
彼女には何故か分からないが、ひたすら同じ言葉を繰り返していた。
それからしばらく様々な衝撃音や足音等が続くが、時間の経過と共に足音の数は段々と少なくなって静かになっていく。
女達は逆に恐さを感じる静けさの中、収まらない煙で動けないまま時間が過ぎるのをじっと耐えていた。
洞窟の外では後方と後詰めの隊員達が展開している。
「貴明! 首尾はどうなってる?」
着陸しているヘリの地点で指揮を取っていた仙道一尉が、副官の西森貴明三尉を呼びつけた。
「軽症者は数人出ていますが、重症者も戦死者も出ておりません。大戦果です!」
戦死者ゼロという報告に安堵と歓喜が湧き出て来るのを感じている。
「じゃあ後は例のお嬢さん達だな」
「確認が完全に取れてる訳では無いのですが、複数人いるという事です」
インカムで常に現場の情報が入ってくる自衛隊の部隊であっても、混戦状態では中々に難しいのだ。
今回の作戦の戦訓は日本本土のゲリラ戦や対テロの市街戦にフィードバック出来るなと、野心家で理論家の彼は考えていた。
「まだどこかに盗賊共が潜んでいるかもしれん。作戦が完全に終了するまで気を緩めるなと、全員に通知しろ」
「はっ!」
仙道は檄を飛ばした。
それから少しすると洞窟に入っていた隊員が、女性を抱える様にして外に現れる。
「上々だ」
「ですね」
まるで映画の主人公がヒロインを救い出すラストシーンの様な光景に、自然と顔が綻んでいく。
「じょう……じ」
「あれ?」
しかしニコニコと眺めていた仙道達の表情は長くは続かず段々と青ざめていき、
「うそ……」
「どうすんだ、これ……」
仕舞いには黙りこくってしまうのだった。




