仙道中隊の霹靂
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夜が更けていき日付も変わって多くの人々が寝静まった頃、河原崎駐屯地の作戦司令室では多くの幹部達が緊張した面持ちで詰めていた。
「おはうよございます」
「ご苦労様です」
不意に扉が開き鈴谷八重が入ってくる。座っていた自衛官達は一斉に立ち上がり各々挨拶をする。
「おはようございます。座ってください」
直るように促すと、また一斉に元に戻った。
「あと十二分程で作戦開始となります」
「そうですか。何か問題は?」
「ありません。夕方より偵察部隊を送って監視させています。洞窟から連中の出入りは何度も確認されているものの、ほとんどは巣に帰っています」
参謀格の人間が鈴谷に説明を始める。
「連れ去られた人に付いてはどうですか?」
「確認は取れていません。洞窟の中にいるか、元々いないかのどちらかです」
今回の作戦は相手が相手なので、すでに勝てるかどうかではなく人質(別に質に取っている訳では無い)の救出に興味の対象が移っていた。
鈴谷のテレビ演説は町の人からの反応は良好で、今回の軍事行動は概ね好意的に受け入れられている。救出がかなえば更なる支持の上昇が期待できるだろう。
「総督、作戦開始の御命令を」
様々な打算が入り混じった中で大きなテーブルの向かいに座っている森野一佐が鈴谷に指示を求めた。周囲の目が一斉に集まってくる。
ここで指示を出せばもう後戻りする事は出来ない。
少しだけ目を閉じて呼吸を整えると、静かに口を開いた。
「何よりもまず、隊員達の安全を優先させてください」
鈴谷が静かに頷いた。
それを見た森野は部下に指示を出すと、その部下は作戦開始の打電を打った。後は報告を待つだけである。
不思議な事に命令を出してしまうと、それまであった何か重たい物を背負っている感覚は消えて無くなり、何故か清々しい感情すら抱いていた。
「お見事です、鈴谷総督」
森野もハリウッド映画で聞いた事ある様な台詞を吐いている。彼も何か思う所があるのだろうか。
「作戦開始! 繰り返す 作戦開始!」
上からのGOサインが出ると待機していた派遣部隊の兵士達が一斉に動き始めた。
三機の輸送ヘリ『チヌーク』とそれを護衛する戦闘ヘリ『アパッチ』のエンジン音が鳴り始め、テールローターが回転を始める。
仙道要一尉率いる強襲部隊が一斉にチヌークへ走り出す。
「急げ! 急げ! 急げ!! 夜が明けちまうぞ!」
「イエッサー!」
威勢の良い声があちこちから聞こえ、非常に素早い動作でヘリの中に納まって行った。
ヘリがゆっくりと浮き始め、深い々い暗闇へと飛び立っていく。
見送りに出てきている他の隊員や、派遣部隊の家族達が手を振って彼らを送り出していた。
作戦は王道かつシンプルでアパッチから大量の催涙弾をアジト入口周辺にばら撒まき、一斉に部隊を降下させる。
さらに降下した部隊が洞窟内部へ催涙弾を打ち込み、中の盗賊を無力化させてから一気呵成に突入するというものだ。
パイロットから冗談混じりのアナウンスを発する。
「目標まで約四十分、快適なフライトをお楽しみください」
その後に芝居がかったアナウンスも流れてきた。
「諸君! 仙道一尉だ。卿らには日頃の訓練同様の働きを期待している。何事も正確さが物を言う。健闘を祈る!」
勝利は約束されている。問題はどこまで作戦を完璧に遂行するかだ。
何ともいえない高揚感が隊員達を覆っていた。




