出島徒然話-9
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@mojishowky
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祐木がそうしたように今度は紀一郎が入れ替わりで居なくなってしまう。
「あーあ、行っちゃった」
初めて会うマリシア達を前にして自分も帰ろうかと思ったりもするのだが、紀一郎の話を律儀に守り鹿野は彼女達と一緒に過ごす事にする。
始めは気を使ってたどたどしかったが、元々人付き合いが上手く同年代の女子同士という事もあってすぐに打ち解けていった。
「失礼します」
調整官室で書類と睨めっこをしていた紀一郎の元に、空自所属の館林がたずねて来る。すらっとした体躯に陸の自衛官には無いスマートな印象の好人物だ。
「相変わらずワーカホリックだね」
紀一郎と会う時は何故か忙しくしている時ばかりだったので、彼の中ではそういう評価になっている。さっきまでマリシア達の所でサボっていたのだが。
「ご苦労様です。どうしたんですか?」
「今回の作戦で出島機関との連絡役で派遣される事になってね」
「三佐のあなたが?」
「下っ端過ぎると舐められるだろ? よろしく」
キリっと空自式の敬礼をした。
「さっそくだけど何か手伝う事があるかい?」
「今の所は何も。鈴谷総督の演説前にミーティングがありますんでそれまでは適当に時間を潰していて下さい」
「そうか……、じゃあ僕は待機室に居るから、何かあったら呼んでくれ」
もう一度敬礼をして退席する。
「そうだ、前田司令にお礼を言っておいて下さい。空自の後ろ盾を得られたんで今回はスムーズに話を進められましたから」
館林は満足気に右手をサムス・アップさせて行った。
テレビ演説の時間が近付き、出島でもミーティングが行われていた。
明石など上級職員に加えて連絡官なども出席している。
「河原崎時間で午前四時、日の出前に攻撃が開始されます。連れ去られた女性とは別に捕らえられている人がいる可能性があります。我々としてはその受け入れという事になりますので、各準備をお願いします」
今後のスケジュールや作戦の概要などが話され、これからの出島機関の役割などが話された。
「僕からは以上です。何か補足でありますか?」
いつもの会議同様、明石が次いで話をしようとするが、
「それと……」
「それと人質の中に盗賊の一味が紛れてしまう可能性も考えられるから、選別も必要になるだろうね」
明石が話そうとすると、それに被せるように発言した。言おうとした事を館林に言われてしまう。
思わず視線を向けるが、それをかわす様ににっこりと微笑んだ。
階級が一つ上の館林を前にしてやり辛そうだ。だからこそ三佐の彼をここに寄こしたのだろう。
「なるほど、それも十分考えられます。身体検査は十分にお願いします。他に何かありますか?」
「今居る子達もそうだけど、衣類なんかも必要になってくるんじゃないですか?」
館林が提案を出してくる。縫製するとか町から古着を集めるとか考えたのだが、面倒なので報償費で外から買う事にした。
「ナルトラウシュから古着なんかを運んでもらう事にしましょう。他には?」
会議室に沈黙が流れる。
開始十分も経たずに話が終わってしまう。正直なところ会議の為の会議をやっている感じではあったのだが。
「まあそんな所だろ。後は寝所の設置くらいだし」
「それは明日作戦が終わってからでお願いします」
「ああ分かってる」
明石と紀一郎のやり取りに引っかかる所を感じたのだろう、館林が口を挟んだ。
「何でまたそんな?」
「テントを建てる場所は決まってるんですよ」
「それで?」
「そこには例の女の子達も居るんですけど、まだ救出作戦の事を言ってないんです。救い出せるまでは黙っておこうと思って」
少し遠まわしな言い方だが、すぐに意図を察して納得する。
「なるほど、これは失礼」
「じゃあこれでミーティングはお終いです。一応何かあったら召集が掛かる事になりますから、連絡が取れるようにしておいて下さい」
会議は解散し各々散っていく。
「加賀君はもう帰るのかい?」
「今日はこっちに泊まります。さすがに言いだしっぺですから、作戦の時は起きておこうと思いまして」
紀一郎は外に出た。
出島にいる人達はいつも通りの作業をしているのだが、紀一郎がそうだからなのか彼らがそうなのかは分からないが、何か興奮しているように感じて見える。それでも刻一刻と作戦開始の時間が近付くにつれて気持ちが確実に高まっていくのだった。
作戦開始時間まで仮眠を取るつもりだったのだが、結局眠れずにその時を迎えることになる。




