出島徒然話-7
マリシア達は彼の方をずっと見ている。当たり前なのだが紀一郎に心を開いていいる訳ではない。
ベッドの祐木が座っていた場所に腰を掛けた。
「ちびちゃんの具合はどう?」
「大分元気になったみたい。大事にならなくて本当によかった」
目の前の食べ物にはしゃぐルイセを抑える様にライナは抱きかかえている。
子供で回復力が高いせいか昼間の姿が嘘の様だ。
「良かった。これから夕飯なんだけど温もると美味しくないから、先に食べちゃおう」
自身が持ってきたプリンを配る。四個入りで祐木の分もあったのだが、居なくなったので自分で食べる事にする。
「こういうの食べた事ある?」
マリシアとライナはふるふると横に首を振った。
「こんなのは貴族様だって食べてるのを見た事無いよ」
物珍しさからか色々な角度から眺めている。
「食べてもいいの?」
遠慮というよりも畏怖に近い表情で紀一郎を見つめるが、食べる様に促すとスプーンにすくって一くち口の中に入れる。
「どう? 底の黒い部分と絡めて食べると美味しいよ」
ものすごい驚嘆の表情でプリンを腹に収めていく。
甘味料がほとんど普及していないこの世界の住人にとって、プリンの甘さと美味しさは相当な衝撃だっただろう。
「なあ。何であんたはうちらにこんな事してくれるんだ?」
一番最初に食べ終えたマリシアが懐疑的な顔で見つめてくる。
彼女の質問に紀一郎はうーん、と考え込む。彼自身何故こんな状況になったのか飲み込めてないからだ。
「難しい事を聞くね……。しいて言うなら、君らを助けろって言われたからかな?」
「偉い人から命令されたのか?」
「上はそんな事は言わないよ。言ってきた人は……、一応僕より立場が下の人?」
「どういう事??」
紀一郎の説明に混乱してしまう。
階級差の厳しい世界で生きている彼女には微妙なバランスで成り立っている日本特有+河原崎町の人事体系は理解出来ないだろう。
「正直僕もよく分からないんだよ。どうしてこうなっちゃったのか」
「なんだ。あんた下っ端なのか」
「下っ端って……、一応僕はここじゃ一番偉いんだけど、まあまあ上の方だよ」
「でもさっきのユウキって先生の方が偉いんだろ?」
「人事体系が違うからなあ。でもここじゃ祐木先生より僕の方が立場は上だよ。ていうか僕の上司は総督が一人居るだけだし」
「???」
詳しく説明しようとするが、ますます混乱させるだけの様なので止める事にした。
当の本人達でさえ分かっていない不明瞭な河原崎町の力関係を言葉で説明する事は無理な話だ。
「カロ様、この都市国家はボーダーラント王国の所属なの?」
マリシア以上に真剣に話を聞いていたライナが質問してきた。
「僕達の国は日本っていう国だよ」
「ニホン?」
「聞いた事ないでしょ? すごく遠い所にあるんだ。この大陸じゃないもっともっと遠い所」
「シェリオス大陸の外から来たの!?」
「そういう事になるかな」
「すごい……。外の世界の事、もっと教えてください」
予想外の喰い付きとライナの隠そうとしない好奇心に驚かされる。しかし説明するのが面倒なのと、こちらの文明に関する情報は明かしてはならいという決まり事があるので、どうかわそうかと思案していると。
「私も知りた~い!」
背後から不吉な声が聞こえて来た。




