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出島徒然話-5

 安全保障会議では盗賊群の現在状況と強襲作戦の概要が説明された。


 紀一郎からの説明で大まかには事前に分かっていたのでそれ自体はスムーズに進み、作戦実行の具申が上程された。



 その後緊急に召集された総督府の代表委員会で議題に掛けられる。


「何かご異論は御座いますか?」


 中には何か言いたげな顔をした委員もいるのだが、何も言わずに黙ったままだ。


「それじゃあ了承っと……」


 コーン! と小気味の良い音を上げて鈴谷は総督印で決済書類に判が押される。


 委員会では安易な軍事行動だとした反対もあったのだが、動機の純粋性と多数派説得工作に押し切られて進められた。


 総督府と自衛隊がGOと言っているものを止める方法は限られている。


 代表委員が大多数で反対すれば何とかなるだろうが、それも紀一郎の切り崩しにあって不可能なのだ。


会議は幕を閉じて出席者達は、はれそれぞれ散っていった。


「準備が完了しだいテレビ演説を行います。スピーチ原稿を作成中ですので後で目を通しておいてください」


「いつ頃出来そう?」


 総督室に戻ると遠野が今後のスケジュールを説明してくれる。


「もう少し時間が掛かりますので、一旦家に戻られても構いませんよ」


「そうねぇ、どうしようかしら?」


 作戦案が通ってこれで暇になる者とこれから忙しくなる者とに分かれていた。


 自衛隊は作戦開始に向けて蜂の巣を突いた様な状態になり、逆に紀一郎たち出島機関は救出者の受け入れ程度なので、既に通常業務に戻っている。


 鈴谷たち総督府側はその中間だろうか? 広報は忙しそうだが、代表委員や鈴谷の側近達は暇をしていて家に帰った人もいる。


「鹿野ちゃんはもう帰った?」


「まだ事務室に居ると思いますが」


「呼んでもらえる? カロの所に行って伝えてあげないとね。それと私も一旦帰るわ。鹿野ちゃんと一緒に出るから、あとお願いね」


「一緒にですか?」


「どうせ私車だし。出島まで送って上げられるでしょう?」


「分かりました。また後で」


 鹿野を呼んで出島に伝える内容を聞かせた後、総督室の遠野達に別れを告げ、二人で学校の本庁舎を出る。


 駐車スペースに向かうが、外は既に真っ暗になっている。日本にあった頃は街灯があったのだが、今は節電の為に灯火管制がしかれていて、本当の意味で暗闇なのだ。


 車も乗車規制がされていてヘッドライトなども無く完全に夜の帳が下りていた。


 外を歩く人はほとんどおらず、昼間と夜間とではまったく違う町のようになっている。


「鈴谷先輩の車に乗せてもらって、助かりました。出島行きの車ってほとんどないから、どうやって移動しようか悩んでいたんですよね。歩くのはさすがに怖いし……」


 鈴谷には公用車が割り当てられている。自分だけ特別扱いをする事はと以前断ったのだが、安全上必要だと周りに押されて使用しているのだ。


「そっか、鹿野ちゃんにはこれからも連絡役をやって貰う事があるだろうから、学校から行き来できる様に頼んでおくね」


「本当ですか!? 頑張ります!」


 暗闇の中で目をキラキラさせて喜ぶ。


「ところで鹿野ちゃん。例の女の子達って見た?」


「見てないです。こっちと向こうを行き来してたし、なるべく隔離したいからなんとか、かんとか……」


「見てみたくない? 下の男子達が妙に肩入れしちゃう程の、カワイ子ちゃん!」


 回転の速い彼女は瞬時に理解した。


 条例で『河原崎町の中には絶対に外部の人間を入れてはならない』という規則がある。


 である以上鈴谷が何をしたいのか、何故自分と一緒に帰るなどと言い出したのか。


「もしかして……、本気ですか?」


 一応疑問系で聞いてきているのだが、鹿野には命令形で言っている様に聞こえた。


 あの南部や遠野、そして紀一郎達を絶対的に従える『女王蜂』を相手にしては断る事など出来はしない。


(そういえば、この人すっごい気分屋で気まぐれだったんだ……)


 暗闇で鈴谷の瞳がギラッと輝いた様に見えた。

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