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出島徒然話-5

 それから夕刻から夜に掛けて急ピッチで明石一尉たち自衛官は陸自幹部の説得を、紀一郎は総督府内の多数派工作を画策する。


 本来ならば時間を掛けて制圧作戦の立案や議会工作をしたかったのだが、連れ去られたとされる人達の安否と生存率を考えると拙速を求めざるを得なかった。


 知り合いの作戦担当者に頭を下げて救出作戦を作ってもらい、輸送や装備の手配など出島機関に出向している自衛官達の人脈をフルに使って、一つの軍事作戦(正確には警備行動)を行う為に必要な準備を進めて行く。


 ただ頼まれた陸自側の人達も、現金なもので悪者を倒してさらわれた女の子を救出するという直球で男心をくすぐる話に、皆ノリノリだった為ハード面での準備は非常に早く都合が付いた。



「昼間に哨戒線でイザコザがあったって話から、何でこんな事になってんだ?」


「はっ! 三郡調整官殿から調査の依頼がありましたので調べを進めた結果、撃退の必要があると判断されたので上申した次第であります。」


 陸上自衛隊駐屯地の司令室で明石率いる隊員達が熱く森野一佐相手に語っていた。


「現地の女性救出とあるが、それは不味いだろ?」


 同席している副司令の藤原二佐が作戦書を見ながら真面目な顔でたずねる。


「人道的な見地から誘拐された女性の救出も作戦に含まれていますが、あくまで盗賊の掃討による域内の安全確保が作戦目標であります」


 河原崎町は原則として外の世界で起きる問題には、出来る限り干渉してはならないという事になっている。国力差、文明差の都合上どうしてもこちらが肩入れした方に勝利の天秤が傾いてしまう事になるからだ。


 そのため河原崎の住人が直接的・間接的に被害が及ばない限り何もしてはならない決まりなになっている。


「我々にとって直接的な脅威とはならないように思えるが?」


「このまま盗賊達を放置すれば拡大を招き、交易に大きな影響があると考えられます」


 馬に乗り剣や斧を振り回すだけの連中に何が出来るのかと思うのだが、かといって否定する材料を見つけられなかった森野一佐と藤原二佐は、渋々ながら首を縦に振るのだった。


「なるほどねー、下じゃあこんな事になってたんだ。何か言ってた?」


 総督室では鹿野明日実が持ち帰った物を囲んで鈴谷八重達が談義していた。


「いえ、カロっちはこれを見てもらったら分かるって言ってました」


「あいつは何と言ってきているんです?」


 同じく航空写真を見ていた遠野恵三だが、どちらかというと写真より紀一郎が書いた手紙の方に興味があるようだ。


 ちなみに彼は総督官房の官房長という役職に付いている。


 ただ官房といっても本来の役割ではなく、単純に鈴谷を補佐する存在という方が近い。


「いつも通りよ。『全部やっておきました』って」


「なるほど、しかし自衛隊にも食い込んでるとは。相変わらず隅に置けませんね」


 受け取った手紙にざっと目を通す。


「それで鈴谷先輩は、この一件どうするんですか?」


「どうするって言われてもなー、とりあえずは上がってきた案件を決済するだけじゃないかな?」


 相変わらず柳の様な掴み所の無い返しをしていると、部屋のドアをノックする音が聞こえてきた。


「失礼します」


 河原崎町助役の相田貴次が入って来て、一斉に視線がそちらに集中する。


「駐屯地の司令部から安全保障会議開催の打診がありました。鈴谷総督、ブリーフィング室までお願いします」


 『役所の公務員が服を着て歩いている』と揶揄される生真面目な相田が、これまた生真面目に報告する。


「やっぱりね~」


「早かったですね」


「カロっちすごい」


 三人の変なリアクションに、話の流れを知らない相田の顔に『?』の文が浮かんた。

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