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出島徒然話-4

「これがご所望の盗撮写真です」


 空自の隊員が調整官室に持ってきた高解像度の写真には馬に乗って移動していると思しき集団が映っている。


「人聞き悪い事言わないで下さいよ」


 紀一郎はさらっと目を通すだけでそれ以上の興味は示さなかった。


「僕はこういうのは専門じゃないんで分からないんですけど、どう思います?」


「襲撃の時間や移動距離、連中の風貌を考えるとかなり確度は高いと思われます」


 ちらっと同席をしている明石一尉を見る。彼も頷いていて肯定を示しているようだ。


「ついでにサービスで連中のヤサも掴んでおきました」


 岩山の映った写真も差し出すと洞窟らしき穴とそれに出入りする人の姿が確認できる。


 荒野のどこかに逃げ去った人間を探すという事は不可能なのではないかと考えていたのだが、想像以上の偵察能力に舌を巻いた。


 高性能の赤外線カメラであれば体温を発生させる人や動物を荒野などで探すのは難しくは無い。逆に人ごみに紛れられるとどうしようもないのだが。


「期待以上の事をしてもらって、ありがとうございました」


「お役に立てて何よりです。それとうちの前田航空基地司令からの伝言で『いつでも力を貸す』だそうです。失礼します」


 意味深な捨て台詞を残して去って行った後、部屋に残っている明石たち幹部職員が、一様に紀一郎を牽制する様に見る。


「そろそろ旗色を決めましょう、三郡調整官殿」


 明石が諭す様に紀一郎に迫る。 


「本当にやるんですか?」


「もちろん」


 彼らの気持ちは分かるのだが、はたしてそれで良いのかモヤモヤがとれない。


「空自の協力が得られたのは結構ですけど、問題は陸上自衛隊を説得できるかどうか…… 僕は軍事的な問題には口を出せませんので、自衛隊からの提案って形にしないといけませんから」


「陸自上層部の説得は俺達がやる。作戦課に知り合いが居るしな。カロ君は総督府の工作に専念してくれればいい」


「わかりました。よろしくお願いします」


 会議は散会して各々仕事に戻っていく。


 紀一郎は自分より何歳も年上のはずな人達がハイテンションで盛り上がってしまっている姿を、冷めた感覚に陥っていた。


 悪党共を掃討してさらわれた女性を救出するという男なら誰しも熱くなる状況なのだが、救出作戦に従事する自衛官のリスクや最終的に責任を負わされる鈴谷八重総督の事を考えると、そちらの方が勝っていたからだ。


「鹿野、悪いんだけどこれを鈴谷総督に届けてもらえる?」


「見えてたんだ? ずっと無視していたから、私が見えてないのかと思った」


「なに言ってんの?」


 実は会議中ずっと鹿野明日実は同席していたのだが、お客さんだったのでずっと蚊帳の外だった。


「この封筒を届ければいいの?」


 中には航空写真と紀一郎がしたためた手紙が入っている。


「中に入ってるのを読めば分かって貰えると思うけど、わかんない事があるなら補足して教えてあげて。基本的に会議の内容だから」


「ん、分かった。でもカロっち、今回の件あんまりやりたくないんだ?」


「何で?」


「だっていつもノリノリだとテーブルをコンコンってやるじゃん」


 しょうも無いところで図星を突かれてしまう。


「軍事行動って事になったら自衛隊の人達が危険になる訳だし、万が一の事があったら鈴谷総督に迷惑掛ける事になるからね」


「振られた癖に今だに鈴谷総督を中心に世界が回ってるのね」


「うるさいよ、さっさと行け」


 憎まれ口を叩き鹿野を調整官室から追い出す。それから一人になった紀一郎は総督府の職員に電話を掛けまくった。

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