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ただ……願う  作者:
番外編
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初めての誕生日

 こんな日が来るとは誰が想像できただろうか。


「……ダメだ。わからない。もう面倒だからやめてもいいだろうか。」


「何言ってんの! 朝霧先輩への誕生日プレゼント選ぶの付き合ってって言ったの実央でしょ!?」


 あぁ、そうだ、その通りだ。

しかし、面倒なのだ。


 付き合って、初めての朝霧先輩の誕生日。何をあげていいのか、正直わからなかった。

いや、あの人なら何をあげてもきっと喜んでくれるのだろうという事ぐらいはわかっている。

でも、どうせあげるならもらって嬉しいものをあげたいと思う。

だから、私は潔く聞いたのだ、何が欲しいですか、と。

なのに……あの男はっ!!


「何でもいい。」


 何を選んでも、気持ちがあれば嬉しい、そういう言葉だという事はわかった。

だから、だから!! 続けて素直に私は聞いたのだ、正直何をあげればいいのかわからないので、リクエストがあった方が助かりますと。

そういうと、朝霧先輩は酷く面白そうに笑った。


「実央が何を選ぶのか楽しみだな。」


 あの人の悪い笑みを見て、私は心に決めた。

絶対この人の欲しいものをプレゼントしてみせると。



「実央って変なところで意地になるよねー。」


「別に。意地になってるわけじゃない。プライドの問題。」


「……どっからどう見ても意地になってるんですけど……。」


 意地になっている人間が、意地になっていると指摘されて、肯定するだろうか。

答えは否だ。と、いうわけで私は朱音の言葉を黙殺した。


 にしても、本当に困った……。

最初にどうだろうかと考えたのは定番のアクセサリーなのだが、あの人がそういうものをつけていた記憶がない。そしてつけたイメージも浮かばない。と、いうわけで却下。

鞄はついこの間破れて、自分で新しいのを買っていたので却下。

時計は今つけているのが相当お気に入りっぽいので却下。

ストラップはもらえば嬉しい、が切実に欲しいと思うものでもないだろうという事で却下。


 本当に欲しくて、もらって嬉しいもの……ダメだ。わからない。

そもそも、こうやって悩んでること自体が、物凄く嫌だ

朱音が悩んでいるときは、朱音が選んだものなら玲衣は何だって喜ぶのに、何を悩んでんだとか、好きな人のために一生懸命になれるなんてすごいなとか、そんな風に思っていたのに……。


 まさか、自分が好きな人のために一生懸命に誕生日プレゼントを選んで、何を選ぶがでこんなにも迷うなんて……バカじゃないのか、私は。

物欲の薄そうなあの人に対して欲しいものをプレゼントなんて無理難題だってことぐらい、頭の中じゃわかってる。


 でも、やっぱり、喜ぶ顔が見たいんだ。

できれば、私が一番喜ばしてやりたい。

そんな、バカみたいなことばっかり思っている自分が、私はそんなに嫌いじゃない。




 結局、これと言ってピンと来るものが見つからず、それでもなんとか選んで朝霧先輩の誕生日を迎えた。

まぁ、たまに平気で恥ずかしことを堂々と言うあの人が欲しいものとして言いそうなものぐらい、本当は見当は付いているのだが……


 朝霧先輩の部屋で2人、何故か私達は向かい合って座ってる。


「……どうして隣に座らない?」


「どうしてでしょうね。」


 やはりこれから戦う相手とは向き合うものだろう。

とか、自分でも良く分からない理由をつけてみる。


 実はただ緊張しているだけ、なんて知られたくないから。


「これ……誕生日プレゼントです。」


「ありがとう。」


 悩みに悩んだ末に手に取ったのはキーケース。

あれ、鍵どこやった?と探している朝霧先輩をよく見ていたのが決め手。

しかし……大見え切った割にそれなのか、という気は自分でもしている。

だから。


「誕生日、おめでとうございます。……………………好きです。」


 付き合う前に一度言ったきり。

いちいち言う必要性をそれほど感じないし、機会もない。

しかし、朝霧先輩はふと、事あるごとにそういう言葉を口にする、似合わないほどに。

知ってますよ、とか、そうですね、とか、いつも簡単に流すのだが、彼はその後決まって聞くのだ。

実央は?と。

そういう時、私は決まって、知ってるでしょう、とか、同じですよ、とだけ答える。

言ってほしいのかな、とは思いつつも、恥ずかしいからそう口にできない。

だから、この機会に。


 朝霧先輩が本当に欲しいものが私の「好き」という言葉だなんてバカップル具合が激しすぎて、自分で自分を殴り倒してやりたいが、私の言葉に嬉しそうに笑う朝霧先輩を見て、自分が間違ってなかった事を悟って、そして結局自分を思いっきり殴りたい半面、私も嬉しくなってしまうのだ。


「欲しいもの、わかったのか。」


「…………いちいち聞かないでください。」


 自分の事をさらに殴りたくなってくるから。


 朝霧先輩が机を挟んで向き合っていた私を手招きして呼ぶ。

それに応じて近づくと、そっと抱きしめられた。


「ありがとう。実央、愛してる。」


 耳元でそう囁かれた瞬間、バッと音がするほど素早く朝霧先輩の腕から抜け出した。

何故って? 恥ずかしいからに決まっているだろう。

この人はバカなのか、キザなのか、少女マンガの読みすぎなのか、何なのか。


「実央、顔真っ赤。」


 ニヤリと意地の悪い笑み。

答えは一つ。

私をからかいたいだけ。


 朝霧先輩は本当に、本当に性格が悪いと最近思う。

でも、なんだかんだ言って結局好きという結論にたどり着く自分自身に、惚気かとつっこんで、やっぱり思いっきり殴り倒したいと思うこのごろである。


お久しぶりです^^


リハビリがてらに書いたのですが、甘すぎて甘すぎて……書いた本人なのに吐き気がしますw

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