全ての悲劇は勘違いから始まるのだ。
大会まで残り1週間と少し。
僕は待ち合わせ場所常連のシチ公銅像前でメアリーと待ち合わせしている。
そして獣人の少女、メアリーがやってきた。大会前の最後のすり合わせみたいなものを今日やる。
僕としてはカフェでチーズケーキを堪能したいのだけど、メアリーはまだ来ない。
そういえば前回もチンピラに絡まれて遅れたとか言っていた。どうも遅刻体質なようだ。
僕は前世の公園などによくある備え付けの時計を見る。
とその時僕は後ろから肩を叩かれる。そういえば今見えないから時計を見ても意味がない。
僕は振り返る、そういえばこの動作にも意味はない。目が見えない設定はなかなか難しい。
しかし後ろの人物が誰かは把握している。獣人の少女、メアリーだ。
「やあ、メアリー早速行こうか」
と僕はベンチから立ちカフェの方に足をむける。しかしメアリーは動かない。
「どうしたんだい?」
僕は彼女に聞く。早くチーズケーキを食べたい。
「フラウス、私強くなりたいの!」
「ほう」
僕は一応頷く。
そして彼女は話を続ける。
「フラウス、あなたの実力は素晴らしいわ」
「ありがと」
「だから私を大会に向けて強くして欲しいの!」
「へ?」
ちょ、ちょとまて。僕のシナリオにはこんな展開ない。
異世界ってご都合主義じゃないの?
僕は動揺する。
その動揺で空間が揺れてるように見えた。実際見えていないが。
僕はメアリーに問う。
「ぐ、具体的に強くなると言ったってどうするんだ?」
「あなたに訓練をしてもらいたいの」
僕のツケ耳がピクリと彼女の言葉に反応する。この演出やってみたかったんだよね〜
「わかった。初歩的なことしか教えられないけど許してくれるかな?」
「ええ、喜んで」
僕は頷く。
この日から彼女の特訓がスタートして、僕の師匠パートのスタートである。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
彼女は今滝に打たれている。現在絶賛修行中。
彼女は僕が作った道着のような物を着て修行に励んでいる。
修行と言えば道着だよねーなんて思いながら僕は彼女を眺める。そしてチーズケーキを一口。
ちなみに滝に打たれることに意味はない。
強いて言うなら精神的に成長するぐらいかな。
あまりにオマケがない訓練だがかっこいいからよし。
「メアリーどうだい?この修行法は?」
「正直キツくて何の効果もないクソみたいな訓練だと思うけどフラウスがやらせると言うことは何か意味があるんですよね!」
うん、ごめんメアリー。
僕は彼女の純情に心が痛くなった。今度埋め合わせするから、今回は許してくれ。
そして僕は何となく効果を考える。
「そうだね、効果は魔力制御の上達や魔法の威力倍増、とかかな?」
「すごい効果ですの!」
ごめんよメアリー。効果は何もないんだ。
僕はそろそろ言い訳が苦しくなった為真面目な訓練を開始する。
「それじゃあメアリー次に移ろうか」
「はいですの!」
メアリーが体についた水を乾かし道着から古びた服に着替え終わった後僕らは剣を向き合う。
彼女は真剣。それに対し僕は木の枝だ。
「フラウス、本当にそれでいいですの?さすがのフラウスと言っても流石に防ぎきれないんじゃ?」
「安心してくれ。僕は君の攻撃を一回も当たる気はないから」
メアリーは少しムッとした顔で僕を見る。なぜムッとしたかわかるかは彼女の顔の筋肉の軋みを感じたからだ。
「私けっこう子供の中では強い方ですよ?子供大会では何回も優勝していますのよ?」
「それは君の剣筋を見ればわかることさ」
「わかりましたわ!」
そう言い彼女が僕に切り掛かる。しかし僕はそれを華麗に回避。
彼女は驚きの色に顔が染まっていた。しかし彼女は地面に着地した瞬間また攻撃。
しかしそれすらも僕は避ける。そして彼女の手を掴み、柔道の要領で背中から倒す。
僕が改良してみた背負い投げである。倒れた彼女は今も驚きの顔をしていた。
「それじゃ、反省点を教えようか」
僕はそう言い彼女の手を離す。彼女はゆっくりと起き上がる。
「まず最初の一撃。あれだと攻撃が直線すぎて簡単に避けることができる。もしできるなら相手にすぎ近くで変則的な動きを見せたり蛇行で相手に近づいてもいい。こんなとこかな」
「なるほどですの」
「それと二撃目。あれは瞬発力は良かったけど一撃目と攻撃の仕方が全く同じで相手としては避けやすいことこの上ない。それにメアリー君はどうして魔法を使わないんだ?」
「それは.......」
「それは?」
「フラウスをケガさせちゃうからですの」
と僕はあまりの予想外の回答に思わず思わず吹き出してしまう。
「それはどう言う意味?」
僕は少し彼女の冗談が面白くニヤケそうな顔の筋肉を押さえ彼女の話を聞く。
「私生まれた時から魔法の才能はとてもあって、だけど私は剣の道に進みたかった。だからできる限る魔法は使わないようにしているんです。それに私魔法はすごいけど魔力量は少なくって」
と彼女が割と真剣に話をする。
僕はとりあえず彼女が魔法の才能があると言うことを真実として考える。
うんその気持ちわかるよ。自分を特別な存在だと認識したかったり、その事を本当だと思ってしまう、思い込んでしまう事。
思春期であるあるの事だ。そしてそれがいつしか大病へと導いてしまう。
しかし否定すれば彼女はもっと、自分は周りに理解されない存在や、観測不能の存在とか、意味深な事を考えてしまう。それも大病に繋がってしまう。
そうあの大病は焚き付ければ焚き付けるほど燃えなく否定すれば否定するほど逆に燃え盛ってしまうのだ。
そうまるで禁断の恋のようにあの禁断症状も思い込みから始まる。
僕はまず黙って彼女の話を聞くことを選択する。
「それじゃ、君の魔法の実力を見せてもらえないかな?」
「え、でも.......」
と彼女はやらない方を選択しようとする。そうだよね。
自分の嘘、メッキが剥がれそうな時って怖いよね。
安心して。僕は笑わないから。
なぜなら僕もあれの被害者なのだし。彼女は魔力回路に魔力を流し込む。
その量は常人と同じほどの量だった。彼女はそれを魔法に変えようとする。
空間に多数の魔法陣が浮かび上がる。
しかし発動がなかなかしない。僕は優しい目で彼女を見守る。そして彼女は魔力を空中に離散させる。
どうやらメッキが剥がれてしまったようだ。
「クッ、今日は魔力が足りなく魔法が発動できませんでした」
彼女は悔しそうに言う。
「そう」
僕は優しく頷く。もういいんだよ。
そう言いたくなったが僕自身も同情が一番嫌だった。
同情はしない。たとえそれが見え透いた言い訳でも。
「今日は一回帰ろうか」
僕はメアリーに話しかける。
「はいですの」
と言い彼女は街の方に歩き出す。僕らは森を後にした。
そして僕はチーズケーキを食す。
チーズケーキはどんな時でも甘かった。
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