謳い文句は温泉街
僕は温泉に入るためイケさんたちと別れた。
「らっしゃい!らっしゃい!お兄ちゃん寄っとかない?2ゼニ安くしとくよ!」
と野菜屋のおじさんが。
「ちょと、お兄さん!今ならこの鶏肉に鶏肉もつけちゃうよ!」
と肉屋のおばさんが。
どうやら商店街は活気がいいようだ。
通りを歩くだけでこの勧誘。
買い物に来た人たちは対応が大変そうだなと思う。
ちなみに今、僕は押し売りされた、ホットドックやら、アイスやら、炭酸やらを飲み食いしながらこの商店街を練り歩く。うん、あのね、普通にこれ美味しいわ。
まあ全部で五万ゼニぐらい取られたところはマイナスポイントだけどね。だけど僕の今回の目的はホットドックでもアイスでも、炭酸でも押し売りでもない。
今回僕の目当ては温泉だ。
だけどその肝心の温泉が結構歩いてるのになかなか見つからない。僕は少し不安になり適当な街の人に声をかける。
声をかける人は街に詳しい人がいいのでご老人に声をかける事にする。
「あの、すみません。ここ温泉街と聞いたんですけど肝心の温泉がどこにあるか知りませんか?」
お婆さんは僕の言葉にウンウンと深く頷きながら答える。
「それはねぇ、この坂道をだっ〜と言ったところを左にグル〜と回ったところにダ〜ンとあるのよ」
なるほど。分からん。
詳しくは分からんが僕はその言葉をヒントにして温泉を探すことにしようとする。
「ありがとうございました」
「はい、気をつけてね。あ、それと」
「まだ何か?」
お婆さんが何かを言いそうだったので僕は進めていた足を止める。
「この街、近い内に出た方が良いよ?魔女の実験が始まるからね。ひゃっひゃっ!」
と笑い婆さんは去っていった。魔女の実験?
それはテセラの報告にはなかったはずだ。だけど僕はその単語をそんなに気に留めなかった。
僕にとって、関係のないことだと思ったからだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
僕はお婆さんの言う通りに進み温泉の大体の位置を特定した。僕は目の前の大きな建物を下から見上げる。
この建物のロゴ見たことがある。それも最近よく見たことがある。この2本の刀が交わっているロゴ。
確かこのロゴをウルティオ国の首都で見た。もっと詳しく言うとテトデナ商会のロゴと全く同じ気が.........
だけど僕はもしかしたら似ているだけ、もしくは自分の勘違いかもと期待して店内に入る。
その瞬間店員さんが猛スピードで外に出て貸切の看板を置く。そして店員さんたちが床にあるレッドカーペットの両端に並んでいる。
それはまさに壮観。
これで僕は確信するテトデナ商会だ。
そして僕は考えたくないことを考えてしまう。僕は一人の店員さんに声をかける。
「もしかしてだけど、この街には温泉が何個あるの?」
まさか温泉街と謳っていたこの街にこの店舗以外温泉がないと言うことはないよ、ね?
僕は少しドキドキしながら聞く。
「そうですね、ここを含めると.........三つですかね?」
三つか〜
少し渋いな〜
まあ一つの街に温泉が三つもあったらこの世界では多いほうか、と僕は少し肩を下ろす。
そして再度店員さんに聞く。
「ここ評判いいの?」
「そうですね、この店舗は商店としてよりも温泉で商売をしております。それに予算を方も温泉の方に大きく投資したのでここの温泉は結構好評ですね」
その言葉を聞き、僕は少し安心する。
「さっき貸切の看板を置いていたけど今日は僕の貸切なの?」
「もちろんその通りです。主様」
やっぱり持つべきものは友達だ。
よし、貸切だからゆっくり入りますか。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
僕は前世から温泉やお風呂が結構好きだ。
日本人だからと言うのもあるけど、まず温泉に入ることでその日ついた体臭をリセットできると思っているからだ。臭いが酷すぎると目立つし、心も傷つく(自分の)。
だから僕は毎日お風呂は欠かさず入っていた。それともう一つ理由がある。
それは僕の家族、神谷家はみんなお風呂、温泉好きだったのだ。
特に姉さんが温泉が好きだった。ちなみに僕と姉さんの歳の差は八。その為俗に言う姉弟喧嘩はしなかったなと今になって思うが別にしなくてもいいものだ。
と話が逸れてしまったが僕は今から温泉に入る。この温泉にどのような効果があるのか少し楽しみだ。
そして扉を開けると、そこには先客がいた。
それはイケさんではなくディオだった。ディオは僕はみるなり立ち挨拶をする。
「主様、お久しぶりです。」
と頭を下げる。ちゃんと彼女はタオルを体に巻いている。僕も腰から下は一応タオルを巻いている。
僕は羞恥心はほとんどないけど倫理観はあるし、相手が不快に思うことはなるべくしない様にしているから一応露出に関しては注意はしているし、そもそもディオがいることはもう分かっていた。
ディオも僕が来ることを分かっていただろう。だから彼女は慌ててもいないし動揺もしていない。
それとここは混浴だ。ていうか混浴しかなかった。まあ正直どうでもいいけど。
僕は露天風呂ならそれ以外は温泉についてそれほど気にすることはないかな。
そしてディオの挨拶を適当に交わす。
僕は体を洗うために桶に水をため、それをまず体に掛け、そして石鹸を全身につけまた桶に今度はお湯にし、石鹸を流す。そして温泉に入る。
いい湯加減だ。
「フ〜〜」
と僕は声を出す。
「主様、お湯加減はいかがですか?」
といつの間にか隣にいるディオが質問する。
「うん、いい感じの湯加減だ。気持ちいいよ」
「そうですか!」
彼女はなぜか嬉しそうに声を上げる。
彼女はお風呂好きだからもしかしたらここの管理者なのかもと僕は予想するが聞きはしなかった。
僕は景色に集中する。
いい景色だ。
感想をそう一言。そして僕は先ほど少し気になったことについて質問をする。
「ねぇディオ」
「はい、なんでしょう?」
「僕、今日さ、まだ泊まる宿を見つけてないんだよね」
「わかりました!ここは宿泊施設も兼ねているのでどうぞお泊りください!」
うんうんディオならそう言ってくっると思ってたよ、と僕は人の善意を利用する。ごめんね。少しの罪悪感が残る。
ディオが僕を見る。
「主様、私のタオル取ってみますか」
ディオは笑いながら言う。
うんうんいつものディオだった。
僕は「遠慮しておくよ」と一言。
そしてのぼせそうだったので上がることにした。




