あの日の記憶
あれから何時間経っただろう?
ルミナスは監禁されている中でふとそう思った。
一日一食でる食事は粗末な物。そして魔力を封じる鎖。彼女たちにもう残りの体力はほぼなかった。
このままだと逃げるのはおろか、生存することすら危うい。彼女たちもそれは感じ取っていた。しかしそれをわかっていても彼女たちは何もできない。ただただ時間だけが過ぎてゆく。
そしてルミナスは体力を温存するために睡眠をとることにした。
そして彼女は長く深い眠りにつく。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ルミナス?どうしたの。ボーっとして」
ルミナスは目を覚ました。誰かに声をかけられたのだ。目の前には花畑が広がっており一人の人物がいる。
「姉様..........」
目の前の人物、それはアモール王国第第一王女にしてルミナスと一番仲の良かった 聖女”エンゲル王女〟その人である。彼女は今の状況を思い出す。確か自分はエンゲル姉様と花を摘みに来ていたと思い出す。
「大丈夫です、姉様。」
「ホント〜?ルミナスはすぐ無茶をしちゃうからお姉ちゃんは心配だよ〜」
「大丈夫ですって姉様」
ルミナスは少し笑みを浮かびながら答える。
「じゃあそろそろ帰りましょうか」
「はい姉様」
彼女たちは歩き、宮殿の中に入る。そしたらそこで一人の人物と出会う。それはアモール王国第一王子 賢者”フェンリル〟であった。彼女たちは挨拶をする。
「こんにちは。フェンリル兄様」
「やあ、二人とも。こんにちは」
彼はアモール王国創設以来の天才と言われており次期国王候補で二番目であった。しかし世論はエンゲル王女を推している。そのため二人の仲は犬猿だと思われることもあるがそれは違う。賢者フェンリルは極度のシスコンであった。
「なあ二人ともこの後お兄ちゃんの部屋で二人のファッションショーをやらないか?他の兄妹たちには断られてしまってね。どうかな?」
「遠慮させていただきます」
「ね、姉様そんなにはっきりと.......」
「そ、そうかい.............」
そして彼はその場から去っていった。
「ルミナス。ああ言うのはハッキリと断ると効果があるのよ〜」
「は、はぁ」
ルミナスの口からは気の抜けた返事が出た。彼女たちは幸せだった。
あの日までは。
そこから数週間後。急にフェンリルの性格が急に変わってしまう。彼は部屋に閉じこもるようになり自分の兄妹たちには嫌悪の視線を向けるようになる。エンゲルが訳を聞こうとしても部屋に入れてもらえない始末。
国王もそのことについて不安に思っていた。そしてその不安は的中してしまう。
王都の中央で火の手が上がる。それは偶発的ではなく必然的なものだった。その火災はフェンリルの手のものが起こしたのだ。その火の手は一瞬で宮殿まで回り宮殿は火の海に。
そしてそのどさくさの中、国王は暗殺された。そしてこれはフェンリルの手のものが殺したのではなく、フェンリル本人が命を奪ったのだ。実の子が親を殺す。
命を奪い取るのは簡単だが、それを実行するのは簡単ではない。なぜなら自分の良心がそれを止めるからである。生半可な覚悟がなければそれは実行できない。
だがもう一つ方法がある。それはその時点で心が壊れているかである。そしてフェンリルは後者。しかしなぜ心が壊れたのかはわかっていない。
そして次の彼の標的は幼いながら王位継承争いに割って入るであろうルミナスであった。
その時ルミナスとエンゲルは一緒にいた。そしてそこに向かう一つの陰。もう結果はわかるだろう。
エンゲルはルミナスを守ろうとした。それは損得から決めた行動ではなく本能からのものだった。「ルミナスを守りたい。」それはエンゲルの切実な想いだった。
そして王家御用達の暗殺者とエンゲルはぶつかる。最初は暗殺者の方が有利に戦闘を運んでいたが、徐々にエンゲルの緊張は解け、戦いは互角に、そして熾烈になる。
そして結果は相打ち。
彼女は命を賭してルミナスを守ったが、守られた側には心に簡単には治る事の無い深い傷が残る。そしてその後、彼女は逃げるように学園に留学をし、自分の祖国の事について多くは語らなかった。
そして自分の過去については特に。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ルミナスは目を覚ました。
あの光景はもう過去のものである。
そして自分が犯した過ち。それを悔い無い日はない。彼女は姉に謝り続けている。
「姉様、私が未熟者でごめんなさいッ」
牢屋の中でそのか細い声だけが響いていた。
しかしその時、廊下から足音が聞こえる。それはカッカッカッと今まで聞いたことのない足音とテンポだった。
そしてその足音は止まった。
その人物は誰か、まだ彼女たちには見えない。なぜならその前に立ちはだかる人物がいたからである。
そして次の瞬間ものすごい風と轟音が石造りの廊下で響く。
それは戦闘の音だった。
強者同士の。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ーー2時間前
黄昏の時間も過ぎ暗く深い夜の帷が降りる。それを彼、ルクスはワインが入ったグラスを片手に椅子に座り見据えていた。
現在夜8時。
ランプの光だけが彼の部屋を照らす。そしてそこにはもう一つの陰が。
彼の名前はイケ・イルムンタ。セブンナンバーの一人である。
「旦那様、準備が完了しました。」
「そうか」
イケさんの主は簡潔にそして堂々と頷く。この威圧には並の者なら耐えられないだろう、と彼は思う。
そして今回の作戦の概要を説明する。
「では今回の作戦の内容を説明します。まず例の建物、そして学園を1000人規模の警察官で固め主様には地下通路を用意しているのでそこから入っていたただきます。その後はお好きにしてください。我々は誘拐された生徒たちの安否を確認次第保護します。旦那様の復讐の邪魔になるようなことは致しません」
彼は言葉に気をつけながら言うがどこかが主の気に障ってしまったようだ。
「復讐?」
その圧倒的な存在感。それはやはり何かに不満を感じているようだった。彼は自分の軽薄の口の聞き方に後悔する。
「すみません。旦那様のお気に触るようなことを申して」
「復讐なんて要素あったっけ?」
「え?」
「へ?」
そこで両者、沈黙する。彼の主が何かを言っていたのだ。それを彼は聞き取ることができなかった。
失礼を承知で聞き直そうとしたがその必要はどこにもなかった。
「いや、なんでもない」
「わかりました」
「作戦の開始は、」
彼は主の耳の近くで小声で喋る。
「そうか」
主はコクリと頷いた。こうして準備は完了した。
そして作戦の開始の合図がそろそろ出る、はずだとイケさんは思う。
そして次の瞬間彼らがいた寮は大爆発を起こした。




