第7話 成果報告
群れているヴォルの頭数は確かに多い。だが、先制の突撃を仕掛けた討伐隊の戦闘能力は高く、適度な間隔を保った連携攻撃により、次々と狼犬型モンスターを斬り倒していく!
「ガルルルッッ!!」
「……来い!」
カミルにとって、言わばこの戦闘が初陣になるのだが、鉄の両手剣を構え、ヴォルと対峙する彼は、自分でも何故かわからないほど心が乱れておらず、冷静沈着そのものである。
「ガオッ!!」
突然の先制攻撃で崩したバランスを取り戻し、2匹のヴォルがカミル目掛けて飛びかかって来る! それらの敵の動きを落ち着いて見切ったカミルは、カウンターの斬撃を繰り出し、瞬く間に2匹のヴォルを斬り倒した!
(明らかにヴォルの動きが見えている。それに、迷いのない剣の振り……。どういうことだ? なぜそこまでできる?)
ヨセフは討伐隊を率いて戦いながらも、初めての実戦に臨む息子の様子を気にかけていたが、想像に全くなかったカミルの活躍を見て、目を疑わざるを得ない。
5名の討伐隊各人が奮闘を続けた結果、13匹のヴォルの群れは、程なく一掃された。戦闘中、かすり傷を負った者もいるが、被害は軽微である。
狼犬型モンスター、ヴォル討伐作戦は、成功裏に完了した。
無事に討伐を成し遂げたヨセフたち5人は、戦利品として13本のヴォルの尻尾を回収し、それぞれの活躍に応じた本数を分配した。ここでも討伐隊のリーダーとしてヨセフの統率力が働き、戦利品の山分け時に起こりがちな揉め事などは、発生しなかった。
「みんなよく頑張ってくれた。ありがとう。ここに長居は無用だ。ネプトスに戻ろう」
戦利品を滞りなく分配した後、ヨセフは皆の健闘をそう讃えると、討伐隊と共に港町ネプトスへ向け、帰りの歩みを進めて行く。
ヴォル討伐の成功により、港町ネプトス周辺の危険性は薄くなった。魔物の気配が薄れた北の街道は進みやすく、ヨセフをリーダーとする討伐隊は順調な足取りで、ネプトスのマルテ商館まで何事もなく帰還できている。
「おお! 皆、無事に帰ってきたな! まずよかった」
ライトブルーの外壁が瀟洒な雰囲気を醸し出す商館の前では、マルテが討伐隊の帰りを今か今かと待ちわびていたらしく、ヨセフとカミル、それに手練3人の無事な姿を見て、大いに喜んだ。
「うまくいったよ。茂みの中にいたヴォルの群れを一掃してきた。これが証拠の品だ」
ヨセフが代表して討伐を成し遂げたことを伝え、戦利品のヴォルの尻尾を見せると、マルテは胸を撫で下ろし、
「よくやってくれた! これで私も一安心だよ。今夜はよく眠れそうだ。それでは約束通り、成功報酬を皆に渡そう」
討伐隊の完璧な仕事ぶりをそう讃え、まず、ヨセフの後ろにいる手練3人それぞれに、報酬として800ライヒを渡した。報酬を受け取った手練3人は、ヨセフとカミル、それにマルテと別れの握手を交わした後、その場から立ち去っていく。
討伐隊が解散し、手練3人の姿が十分小さくなったのを見計らうと、マルテは、
「さて、ヨセフとカミルにも、もちろん報酬を渡すんだが、気の置けない親戚同士だ。立ち話で済ますものでもないだろう。商館に入ろう」
ヨセフとカミルにそう持ち掛け、2人と共に商館の応接室へと入って行った。
高級感漂う調度品が置かれた応接室に入り、ヨセフとカミルがテーブルの席に座ると、マルテはまず、ヴォル討伐の成功報酬を2人に渡した。昨日の約束通り、ヨセフは1200ライヒ、カミルは300ライヒの金を受領できている。
きっちりと報酬を支払った後、マルテは使用人を呼び、小声で何やら指示を出している。応接室を出た使用人は、しばらくすると、それなりの大きさがある1つの布袋を手に提げ、戻ってきた。
「せっかく久しぶりに親戚同士、一緒に過ごせたんだ。報酬の金だけ渡したのでは、味気なさすぎるからな。これをお土産にあげよう。カミル、中身を見てごらん」
マルテはカミルの向かい側に座ったまま、使用人から布袋を受け取ると、前のテーブルにそれを置き、中身を確認するよう促す。その言葉を受け、カミルが布袋を覗いてみると、中には調味料と香辛料の詰め合わせセットが入っていた。このセットは、マルテが商売で取り扱っている良品であり、この商館の看板商品でもある。
帰り土産として素晴らしい品を貰ったヨセフとカミルは、とても喜びながらマルテに礼を示した。礼を受けたマルテは、
「いいんだいいんだ。礼を言いたいのはこっちの方だよ。それはそれとして……」
と、手を振りながら話題を変え、成功したヴォル討伐がどうであったか、その詳細な内容をヨセフに聞いてきた。
どうやらマルテは、港町ネプトス自治会の重鎮として、町の安全に役立つ情報を、少しでも知っておきたいようだ。
「ヨセフ、ヴォルは何頭いた? 討伐の最中、何か変わったことを感じなかったか?」
町を想う真摯な姿勢が、そのシリアスな問いかけ方と表情に表れている。ヨセフは、従兄弟のこのような顔を初めて見たが、
(マルテにこういう強い正義感があったのか)
と、新たな良い一面を発見できたことを嬉しく感じ、できる限り誠実な回答を返していく。




