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竜使いの聖域~少年剣士カミルの探求記~  作者: チャラン
第2章 『広き世界ヴァイテヴェルト』探求の旅(前編)

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第26話 ハンネスの手ほどき

「ふむ。やはり最初に会ったときの見立て通りじゃな。カミル、お前さんには魔法の適性がある。特に風属性の魔力を潜在的に高く持っておるようじゃ。幾らかの日数を使って稽古をこなしていけば、風の魔法を習得できるじゃろう」


 ハンネスは、カミルにそう伝えると、魔法力の高まりにより発現していたオーラを、徐々に収束させた(のち)、彼の右腕から手を放した。どうやら魔道士ハンネスは、カミルの魔法適性が、これから行っていく稽古に足るものかどうか、体の気脈に魔法力を通すことによって調べていたらしい。


「さて、次はエミリアの方じゃが、お前さんには期待しているんじゃ。右腕を出してみなさい」

「期待……ですか? 私に?」


 指示を受けたエミリアが、怪訝な顔で右腕を差し出すと、ハンネスは再び魔法力をゆっくり高めながらその腕を手に取り、体の気脈を通じて彼女の魔法適性を調べ始める。


「ほう……。これは想像以上じゃ。長いこと生きてきたが、これほど高い魔法適性を持った者に、わしは出会った経験がない。エミリア、お前さんには高度な稽古を施せそうじゃ」

「本当ですか!? 私の魔法適性って、そんなに高いんだ。そういえばエルマーお爺さんも、基礎的な魔法を教えてくれたときに、私を褒めてた気がする」


 気脈を調べ終え、発現していた魔法力のオーラを収束させたハンネスは、エミリアの言葉を聞いてしばらく考えを巡らせていたが、


「そうか。やはりエルマーも気づいていたようじゃな。だからお前さんたちをわしの所に寄越したわけか。よし、分かった。それでは、場所を移して稽古を始めるぞ。3人ともついてきなさい」


 方針がしっかり決まったらしく、カミル、エミリア、ソフィーに移動の指示を出した。


 カミルたち一行は、背を向け、先を行くハンネスに置いていかれないよう、後を小走り気味についていく。




 ハンネスの家から見て北東の方角に移動した4人は、今、ところどころに低草が生えているだけの、だだっ広い平地に立っている。ハンネスとカミルたちがやって来たこの広場は、人目につきにくい、ラーヴァルトの町外れにある。それゆえ、ここで何かしら変わったことをやったとしても、そうそうは目立たない。魔法の稽古を集中して行うのには、ちょうどよい場所と言えよう。


「ハンネス爺さん。爺さんは、さっき、私の魔法適性を調べなかったけど、あれはどういう意味? まあ、なんでなのかは何となく分かるけど」


 町外れの広場に茫洋(ぼうよう)と立ったまま、ハンネスを見ていたソフィーだったが、先程の老翁の行動に、少しだけ引っかかりを感じていたらしく、彼女は思ったままを尋ねてみた。


 ハンネスは、ソフィーの問いかけを予想していたようで、うなずきながら、


「お前さんが察している通りじゃよ。『魔剣のソフィー』の通り名と、十二分な実力を持つお前さんに、わしが教えてやれることはない。その代わりと言ってはアレじゃが、ソフィー、お前さんには、稽古のサポートを頼みたい。つまり、わしと一緒に、カミルとエミリアの先生になってほしいということなんじゃが、引き受けてくれるか?」


 銀髪の彼女にそう答えると共に、修行のサポートを依頼している。


 カミルとエミリアに魔法の稽古を施すに当たって、ハンネスから頼りにされたソフィーは、


「そんなところだろうと思ってたよ。まあ私は、カミルとエミリアのことが気に入って、旅の仲間になったんだからね。2人が強くなるんだったら協力は惜しまないよ」


 という彼女らしいさっぱりとした返答で、先生役を引き受けた。


「ありがとう。すまんなソフィー。2人を教えるのに、わしだけでは手が回らんところがあってな。よし、それではいよいよ稽古に入ろう。まず何から始めるのか、というわけじゃが……」


 稽古の手助けを受諾してくれたソフィーに、ハンネスはそう礼を述べると、広場の地面に置いていた2本の杖をゆっくりと拾い上げ、


「カミル、エミリア、これを持ってみなさい」


 魔法の教授を受ける2人に、それらを手渡した。カミルが受け取った杖の方は、全体が緑がかっており、もう一方のエミリアが持っている杖は、何の変哲もない棒切れのように見える。


「ハンネスさん。この杖は何なんですか? ただの棒切れかと、見た感じで思ったのですが、握ってみるとそうではないようです」

「ほう。エミリア。お前さんは気づいたか。なかなか感心じゃの。お前さんたちが握っている杖は、鍛錬杖(たんれんじょう)と言ってな。潜在魔法力を引き出す稽古を行うとき、昔からよく使われておる杖じゃ」


 ハンネスは、魔法適性が高いエミリアの感受性に少々目を丸くしていたが、彼女を褒めるのもそこそこに、2人に渡した杖が何であるのか、その解説を始めている。


「カミルに渡した緑色の鍛錬杖は、その色が示している通り、風の潜在魔法力を引き出す触媒として作用する。風の魔法の適性を持つカミルが鍛錬杖を握りしめ、精神を統一させていけば、杖は魔力を帯び、やがて全体が緑色に光り輝くであろう。そうなれば、風の魔法ヴィントの習得は、できたようなものなんじゃが、そこに到達するまでが難しい」


 ハンネスの解説を聞いたカミルは、ものは試しと思い、目を閉じて鍛錬杖を両手で握ると、精神を統一し始めた。


 鍛錬杖は、カミルの潜在魔法力を引き出す触媒としてわずかに働き、握りしめられた部分から、かすかな緑光を(にじ)ませている。

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