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竜使いの聖域~少年剣士カミルの探求記~  作者: チャラン
第2章 『広き世界ヴァイテヴェルト』探求の旅(前編)

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第21話 魔剣のソフィー

「私はソフィー。あんたたちは何て言うんだい?」


 銀髪の美女は、透き通った高い声でそう名乗ると、自分の両隣のテーブル席に座った2人の名を聞いてきた。カミルとエミリアは、銀髪の美女、ソフィーの落ち着いた迫力に少しばかり気圧されつつも、


「俺はカミルと言います」

「私はエミリアです」


 と、無礼にならないよう、自分たちの名前を伝えている。


 エミリアは、ソフィーに名乗った後、カミルの方をちらちらと見ており、


(なんでこんな美人にカミルは声をかけたのよ!)


 と、あからさまな表情で、秀麗な切れ長の目を持つ、この銀髪の美女を警戒していた。




 それぞれの思いはあるものの、とにかく、お互いの自己紹介は済んだ。カミルとエミリアは、ソフィーに付き合う形で、今、カフェオレをゆっくりと飲み、ホッと一息ついている。


 しれっとテーブル席に座り、飲み物を嗜んではいるが、大体が年端もいかない16歳のカミルとエミリアは、ギルドの親父の紹介がなければ、海千山千の荒くれ者たちが集まるこの酒場に、入れない身であった。当然、その年齢から言って、酒も飲めないのであるが、酒場のマスターが、ソフィーと付き合うのならと気を利かせ、未成年の2人にも嗜める、カフェオレを作ってくれたようだ。


 カフェオレを飲みながら、カミルとエミリアは、ソフィーと何の気ない談笑を始めているのだが、酒場にいる他の客たちは、その様子を見て、何故(なぜ)かざわついている。


(いったい何なんだろう?)


 自分たちに向けられている騒がしい視線に気づいたカミルは、少し(いぶか)しみ、周りの声を耳で拾ってみたところ、隣で飲んでいる銀髪の美女、ソフィーに関する意外な情報を知り得た。


 カミルが耳で集めたその情報のまとめは、おおよそ次の通りである。


(ソフィーは、ラーヴァルト周辺地域において、実力派剣士として名が通っており、今まで誰ともつるむことなく、一匹オオカミ的に行動してきたらしい。そのソフィーが、年若すぎる自分たちと、さも楽しそうに飲んでいる姿が、周りの客から見て信じられないようだ)


 周囲のざわめきから、ソフィーがとんでもない実力者であるのを知ったカミルは、


(これは大当たりかも知れない)


 と、全く臆さず、心の内でポジティブに考えている。


 ソフィーは、カミルの年らしからぬその思惑を、知ってか知らずか、


「なかなか楽しい酒だね。それじゃ、そろそろ本題を聞こうか。私に用があるんだったね?」


 ほろ酔いの微笑みを浮かべながら、黒髪の彼にそう聞いてきた。ソフィーの方から本題を振ってくれたのを、脈ありと捉えたカミルは、思い切って、


「はい。単刀直入に言います。俺達の旅の仲間になってくれませんか? 長旅になりますが、同行してもらいたいんです」


 考えていたことそのままを、銀髪の美女に伝える。


 エミリアは、竹を割ったようなその言葉を(かたわ)らで聞き、


(本当に言っちゃったよ!? こいつ!?)


 頭を抱えながらカミルの方を向いて、そう心を乱していた。


 カミルから口説かれたソフィーは、その口説き文句が余程おかしかったらしく、上機嫌で声を上げて笑った後、


「カミルと言ったね。おもしろい子だね。あんたどうして私を仲間にしようと思ったんだい?」


 と、ほろ酔いの笑顔を浮かべ、もう一つ質問している。


(ソフィーさんは、どう見ても嫌がってない……もう一押しだ!)


 切れ長の目が美しい彼女の笑顔を見て、そう判断したカミルは、ダメを押すつもりで、


「この酒場にいる人の中で、俺は……あなたが一番強いと感じたからです」


 と、自分の想いを正直に答えた。


 ソフィーにとってカミルのダメ押しは、ハートを射抜かれるほどの効果があったらしく、銀髪の彼女は、熱い想いを受け、一瞬フリーズしてしまった。その沈黙の一拍が場に入った(のち)、ソフィーはまた声を上げて笑い、


「よし! 気に入ったよ、あんた。一人であちこち行くのにも飽きてきたところだ。あんたたちの仲間になってあげるよ。私はここら辺では、『魔剣のソフィー』と呼ばれている。ちょっとした遣い手さ。これからよろしく頼むよ」


 長旅のパーティに加わることを決め、カミルとエミリアそれぞれと、信頼の握手を交わしている。


 どういう風の吹き回しか、このラーヴァルト近隣地域では、並び立つ者がいない程の実力を持つ魔法剣士が、2人の仲間になってくれた。人と人とを引き合わせる縁というものは、全くもって不可思議ではあるのだが、


「…………」


 信頼の握手を交わしたものの、突然の美女の加入に、エミリアは大きく戸惑っている。


 青髪の美少女は、幼馴染のボーイフレンドが口説き落とした『魔剣のソフィー』を、女として、女の立場として、明らかに警戒していた。




 実力者のソフィーを仲間にしたことで、3人パーティになったカミルたちは、もう少しだけ飲み物を楽しみ、親交を深め合った(のち)、酒場から立ち去った。カミルとエミリア、それに新たな仲間となったソフィーは、夕方から酒場に()り、今の時間まで談笑を楽しみ続けたわけであるが、外に出ると、辺りはすっかり暗くなっている。


 良い出会いがあった今夜の締めとして、3人が泊まれる宿を取り、新たなパーティは、ぐっすりと眠らなければならない。

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