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第23話 京、火を踏みとどめるー鎮目の器量ー

第23話 京、火を踏みとどめる ―鎮目の器量―

■ 京・洛中

 京の街は、呼吸を止めていた。

 かつての栄華を誇った大路には、ほこりの匂いと、いぶり始めた焦げ跡の匂いが混じり合う。周りからは町衆の怒号や僧兵の叫び声が響いている


 四条の辻を埋め尽くすのは、白布を額に巻いた興福寺の僧兵。対するは、自らの生活を、命を守らんとして竹槍を握りしめた町衆の群れである。どちらも

手を出さずに様子見ながら罵詈雑言を発して睨んでいる


 一触即発。


 誰かが咳払いをしただけでも、この都は再び灰に帰すだろう。それが小競り合いなら良いがそこから争いに発生して死者です事があったら大変である。


「……これが、乱世の慣例なのかにしてもどっちも意地を張って譲らないのかちっと厄介だな」


 馬を降りた六角義仲は、その光景を冷徹な目で見つめていた。周り見渡して僧兵が居ないかと町衆に近くに居るか確認してから歩いていく

 鎧は着けていない。ただの旅装束である。だが、その背負った「六角」という名門の重みが、目に見えぬ威圧感となって周囲の空気を圧していた。町衆の目は何処かで義仲に期待しているような気持ちで見ているようだ


(一歩踏み外せば、私は『仏敵』として歴史に刻まれる。あるいは、無能な傍観者として笑われるかそれは避けて行くべきだ)


 義仲は自嘲気味に、だが心中に静かな闘志を灯した。


「殿、なりませぬ! ここは三好の、そして松永の仕掛けた罠にございます!ここ我らにお任せして後ろに下がってください!」


 進藤賢盛が必死に袖を引く。賢盛の懸念は正しい。武士が僧兵に刃を向ければ、それは宗教的な大義を敵に与えることになる。六角家としては余りいい手では無いのだ。家臣に判断を仰いで聞いた方がいい場面であるだが義仲は違って見えていた


「分かっている、賢盛。……だが、見てみろ町衆や僧兵は睨んでるが別に手出そうとはしておらぬ。ここはこの義仲に策があるから見て見れば良い。」


 義仲は、震える手で竹槍を構える町衆の老人を指差した。少し険しくも怯えるなと目で合図しながら賢盛に向かって言った


「あれを救えぬ武家に、何の価値がある。父上の定頼公ならなら、こう言われるはずだ。『民を飢えさせるは、主君の業なり』とな。……私は、その業を背負う覚悟でここにいる」

■ 義仲の「鎮目」

 義仲は、左右の家臣を遠ざけ、一人で僧兵と町衆の間に歩み出た。

 刀の柄には手をかけない。その姿は、あまりに無防備であり、ゆえに異常なほどの「器」を感じさせた。

周りを威嚇するように圧感じるのだ

「……待て!そこの保福寺の僧兵や京の町衆手を止めよ!」


 放たれた声は、騒乱を切り裂くほどに鋭かった。

「俺は、六角義仲だ。近江より、都の安寧を祈りに来た参拝客に過ぎん我らと相手したいならば来るが良いどうする?」


 どよめきが走る。

 僧兵の一人が、血走った目で薙刀を突き出した。

義仲の喉元でピタリと止まり息荒くしながら言った


「六角! 名門が何だ! 我らは仏法の正義を執行しているのだ! 邪道な町衆を成敗する邪魔を致すな!これこそ仏の意思で我らの使命である!」


「仏法だと?それだと仏は武士や山賊などの乱世の乱れ創る者と関係ない町衆までも斬る事が仏陀やお主らの意思と云うか!」


 義仲は一歩、踏み込んだ。薙刀の先が喉元に迫るが、微塵も動じない。 逆に怖い目つきで睨め返しながら顔突き出してさらに大きな声で吠えた


「貴様らが守っているのは仏か、それとも三好から受け取った銭金か。……答えろ。貴様らが今日この都を焼けば、明日の朝、どの仏が貴様らを救うというのだ仏を信じてる者としては許されないぞ。」


「それは……!」


「仏法とは、人を救うためのことわりだ。人を殺めるための免罪符ではない。……引け。今この瞬間、この辻で流れる血は、すべて俺が引き受ける。六角の名にかけて、その罪を冥府まで持っていってやる!」


 義仲の眼光に、僧兵たちがたじろぐ。

 それは武力による威圧ではない。己の命を「盤上の駒」として投げ出した者だけが放つ、絶対的な気魄であった。

■ 均衡の崩壊と、静寂

 義仲は次に、町衆へと向き直った。

「お前たちもだ。怒りは分かる。だが、ここで刃を立てれば、明日からの京は『戦場』に成り果てる。子供たちに、戦火の味を覚えさせたいか」

 町衆の老人たちの手が、わずかに震え、竹槍の先が下がった。


(……間に合ったか何とか血で血を洗う前に止められたか)


 義仲の背中を、冷たい汗が伝う。

 僧兵の長が、苦々しく吐き捨てた。


「……今日は引く。六角殿、貴殿の器量に免じてな。だが、筒井の衆も動いている。次に火がつく時、貴殿に止める力があるかな」


「……あいにくと、私はしつこい性質でな。火がつくたびに、水をかけに来るさそして明日明後日来てやるさ。」


 僧兵の列が、ゆっくりと引いていく。

 京は燃えなかった。……今日のところは。

■ 夜・宿所にて

 独りになった義仲は、暗い空を見上げていた。


(止めたのは、たかだか一日の平和に過ぎない。筒井順慶は、今この瞬間も泥沼の中で喘いでいるだろう。……そして三好長慶。あんたの沈黙が、一番不気味だ何を考えてこの騒動起こした?)


 巨星・定頼とい父が去り、新たな世代が継承するのは、輝かしい領土ではない。

 血と泥にまみれた、終わりなき「選択」の連続なのだ。


「……夜が、長いなこの夜明けて平和守られるば良いが…」


 義仲は、冷めた茶を一口啜った。

 近江の虎は、まだ牙を隠している。だが、その爪痕は、確かに京の石畳に刻まれた。

第23話までお読みいただき、本当にありがとうございます!

今回のエピソードは、物語全体の中でもかなりヒリヒリする**「一触即発の瞬間」**を描きました。いわゆる「なろう」的な無双シーンではありませんが、義仲という男の「器」が試される重要な局面です。

後書きとして、今回の執筆意図やポイントを整理してみました。

■ 「戦を止める」という、もっとも困難な選択

 今回のテーマは**「抜けば終わり、抜かねば崩れる」**という極限状態です。

 読者の皆様も感じられた通り、義仲が立たされたのは、まさに針のむしろのような境目でした。

* 京という「火薬庫」のリアル

 当時の京は、特定の誰かが支配しているようで、実のところ「誰も責任を取りたくない」空白地帯でした。僧兵には宗教的な正義があり、町衆には守るべき生活がある。どちらも「自分が正しい」と信じているからこそ、一度火がつけば誰も止められない。そんな時代の「ままならなさ」を意識して書きました。

* 「武将」を捨てて「為政者」になる

 義仲がここで選んだのは、派手に敵をなぎ倒す「武将としての勝利」ではありませんでした。彼が選んだのは、「何が起きても俺が全責任を負う」と言い切る、逃げ場のない孤独な覚悟です。

 正直、武士としては最高に「損な役回り」です。ですが、誰かが泥を被らなければ京は灰になっていた。その重圧に一人で立ち向かう義仲の背中を書きたかったのです。

■ 執筆こぼれ話:言葉の「真剣勝負」

 実は、派手な合戦シーンよりも、今回のような「言葉一つで場を沈める」シーンの方が、書いていて圧倒的に緊張します(笑)。

 義仲をあえて護衛もつけずに一人で前に出したのは、**「誰かが命を懸けて責任を引き受けた」**という事実を、群衆に突きつけるためでした。奇跡的に収まったのではなく、義仲が「六角」という看板を賭けて無理やり止めた。その「代償」の重さを感じていただければ幸いです。

■ 次回の展望:止めたことで動き出す「波紋」

 さて、火は消えたのではなく、地下でより熱く、深くくすぶり始めました。

* 三好長慶:この「余計な真似」を、あの怪物はどう料理するのか?

* 筒井順慶:義仲の覚悟を突きつけられ、彼は何を思うのか。

* 朝廷・将軍家:この「近江の虎」の活躍を、京の権力者たちはどう利用しようとするのか。

 次回からは、この「止めた結果」が牙を剥いて義仲に返ってきます。

 物語はさらに政治的な深みを増し、加速していきます。引き続き、お付き合いいただければ嬉しいです!

> 【作者よりお願い】

> もし「義仲、かっこいいじゃん!」「筒井の今後が気になる!」と思っていただけたら、ブックマークや評価、感想をいただけると執筆の大きな励みになります!

> 皆さんの反応が、義仲の「次の一手」のエネルギー源です。

>

次は、義仲を「都の救世主」として持ち上げつつ、裏でハメようとする三好長慶の冷徹な招待状が届くかもしれません……。

また次のエピソードでお会いしましょう!


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