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かまいたちの嫁~妖怪女子高生と退魔教師は今日も怪異を斬る~  作者: 鬼喜怪快
第一章 嵐と風吹

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8話 悪夢は続く、目覚めても



 ピピッ! ピピッ! ピピッ! 



 目覚ましのアラームが鳴る。


 社は手を伸ばしアラームを止めた。

 いつもの朝の始まり。

 

 社は先ほどまで見ていた悪夢を思い出す。

 

 かまいたちの女子高校生との婚約――



「ふふふっ……」



 笑いが込み上げてくる。

 とんでもない悪夢を見ていた気分だ。


 武器を渡すことが求婚の証――

 婚約破棄は腕の切断――

 

 ベッドから身体を起こし、

 大きく伸びをした。



「……あと5分寝させてよ」 

 


 隣から女性の声。

 

 社の横で風吹が寝ていた。


 ――いやいや、違う!


 悪夢は現役続行中だった。

  

 

「風吹!

 あと5分じゃないよ!

 どうして俺の部屋で寝てるんだ!」

 


 社は風吹を叩き起こした。

 昨日、風吹をこの部屋には入れていない。


 それなのに横で寝ている。



「先生……おはよ」

 

「風吹、どこから入った!?」


「……どこからって、ベランダの窓」


「……泥棒か、君は」



 社は教師だ。

 風吹は妖怪ながら女子高校生。


 妖怪という文言を省けば、

 この状況は社会的に大変よろしくない。



「自分の部屋で寝るんだ、わかったかい!」


「まだベッドが来てねーんだよ……

 家具一式の納品に1週間かかるみたいでさ」


「ぜんぶ揃ってから

 引っ越して来たらいいだろ!」


「……だってぇ」


「だってじゃない!」


「早く会いたかったんだよぉ」


「……」



 人間と妖怪では、愛の形も違う。

 

 妖の中には、

 人間では到底理解できないような

 愛し方をする種族もいる。


 かまいたちはどうなのだろう?

 

 もし、愛した者の首を切り落として

 部屋に飾るとかなら

 どうしたものか……。


 

 社の背筋が凍りついた。


  

「わたしたち出会ったばかりじゃん。

 だから2人の時間を多くとった方が

 いいと思うんだ」


「風吹……

 俺たちはその……

 2人の時間とかではなくてさ」


「えっ?」


「……わかるだろ?」

 

「まさかもう子作りの話……?」


「へっ!?」

  

「それは少し早くないかな……」


「いや、そうじゃなくてだな」

  

「でも先生が早く欲しいっていうなら……」


「違うぞ……風吹。

 落ち着いて俺の話を聞いてくれないか?」


「卒業まで2年あるしさ……

 ちょっと待って欲しい……かな」

 

「あのさ、

 俺は君の将来を考えて

 鬼切丸を渡しただけだ……

 俺は現役教師、

 君は妖怪だけど高校生だろ……

 結婚なんて考えられないよ」


「……どういうこと?」


「だから、

 俺は結婚なんてする気はないし、

 この話はなかったことに……」



 すると、社の右腕が薄れ始めた。

 

 ゆっくりと手が透けていき、

 向こうの景色が見える。



「わあぁっ!

 腕が……腕が消えていく!?」


『亮介、お前の口から契約を切ろうとするな。

 片腕を持っていかれるぞ』


「!」



 酒呑童子が社の中から声をかけてきた。

 社は言われた通り、

 結婚に関しての話を一旦止める。


 すると、

 消えかかった腕が、

 ゆっくりと色を取り戻した。



『酒呑童子……今のは?』

 

『かまいたち一族の中で、

 お前は完全に婚約者として認知されているようだな』

 

『誰が何を見て認知したんですか!?』

  

『勝手な理由で婚約破棄などしようものなら、

 腕を切らずとも、自然に消されるようだ』


『……そんな恐ろしい契約、

 存在したらダメでしょう!』


『時代の流れか……新しい呪いを見たな』


『感心している場合じゃないですよ!

 なんとか破談にする方法はないんですか?』


『向こうから破棄されれば問題ないのだが……』


『……向こうから?』

 


 風吹が不安そうに社を見つめる。



「先生……今なんて言おうとしたんだ?」


「な、なんでもない!

 また今度話そう!」



 その時だった――



「うおおぉぉーん!」



 地を這うような低いうねり声が聞こえた。



「!」



 社はすぐに気付いた。

 今のうねり声は――妖怪のもの。


 邪気こそ感じないが、

 仲間を呼ぶ時の鳴き声に聞こえた。



「風吹、

 妖怪がこの辺りまで来ている。

 巻き込まれたくないなら、

 大人しくしているんだ」


「今のは、うちの朧車の声だ」


「?」


「マンションの駐車場も契約してて、

 そこに朧車を止めてるんだよ。

 今の声は、わたしを起こすための目覚ましだよ」


「駐車場? 朧車?」


「毎日、京都と岩手の往復って大変だろ?

 朧車の時空間移動なら一瞬だしさ……

 パパが貸してくれたんだ」



 なんて過保護な親なんだ――

 

 社はそう思った。 

  


「やば!

 急がねーと遅刻する!

 じゃあな、先生!

 今日の夜からご飯作るからさ」

 

「俺のことはいいから、

 実家で食べてきたらいい!」


「あっ、実家といえばパパが

 今度先生に会いたいって!

 次の日曜日、

 わたし家に一緒に行こうよ!」


「えっ?」



 実家に行く……

 

 その時、

 社の中で何かが閃いた。

 

 風吹の親に嫌われることになれば、

 自然に破談になる。


 うまくいけば、

 被害なく婚約破棄できる――

 


「……わかった。

 次の日曜日、君の実家に行こう」


「やった!

 約束だぞ!」



 こうして2人は――

 

 日曜日に岩手県の鎌切家まで、

 顔合わせのため向かうことになった。

 


  

 

 

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