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かまいたちの嫁~妖怪女子高生と退魔教師は今日も怪異を斬る~  作者: 鬼喜怪快
第七章 百鬼夜行の夜

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79話 百鬼夜行の終幕



 突如現れた、

 土蜘蛛の本体。

 

 土蜘蛛は

 音を立てながら、

 八岐大蛇を頭から貪り喰った。



「やめろ!

 喰うんじゃない!

 殺してくれ!

 喰わずに殺してくれぇ!」

 

 ——グチャッ! グチャッ! グチャッ!


 大きな咀嚼音を立てて、

 土蜘蛛の本体は、

 八岐大蛇を喰らい尽くした。



「思いもよらぬお宝ゲットや!

 俺の傀儡コレクションに八岐大蛇が

 入ったで」


「店長って、

 喰った妖怪を傀儡に変えてるのかよ?」


「そやで、

 勝ったもんの特権や」


「怖っ……

 わたし絶対に店長には

 食われたくないんだけど」


「従業員を喰うわけないやろ、

 あくまで俺に戦いを挑んできた奴に限る」


「……でもさ。

 店長、八岐大蛇と戦ってないじゃん!」


「!」


「封印されて騒いでただけじゃん」


「……お前言い方な」



 そこで社が、

 みんなを纏めるように口を開いた。



「とりあえず、

 新四天王騒動は一件落着じゃないか?」


「……」


「土蜘蛛が言ったように、

 周囲から選ばれた四天王と、

 自ら名乗った四天王では底力が違った。

 さすが四天王と言ったところだよ」



 しかし、

 その社の言葉に物言いが入った。


  

「ちょっと待って先生!」



 割って入ってきたのは風吹だった。



「あいつ倒したのは

 わたしなんだし、

 さすが四天王っておかしいじゃん?」


「えっ?

 あっ、ごめん。

 もちろん一番の功労者は風吹だよ」


「わたし頑張ったのにさぁ。

 存在を忘れられてる気がするんだけど」


「何を言ってるんだよ。

 風吹の大活躍があってこその勝利だよ」


「……そうかな?

 四天王だけを褒めてたように聞こえたけど……」


「誤解だよ風吹……。

 ここにいるみんなが、

 お前の頑張りを知っているんだ。

 特に店長は、すべての戦いを

 見ていたんだろ?」


「……ふーん。そうなんだ」



 風吹がそっぽむいた。

 

 何やら機嫌を損ねさせて

 しまったようだ。


 そこに火鳥が

 耳打ちするように

 小声で話してきた。


 

「あの……社さん」

 

「!」

 

「鎌切さんは——


 ——なんですよ」


「えっ!

 そうなの?」


「この眼で見たので、

 間違いありません……」


「……」


 

 社は風吹の方を向き直した。

 風吹はなぜか不貞腐れている。



「風吹……」


「……なんだよ?」


「さっきの戦いは、

 さすが風吹だと思ってたよ……。

 可愛くて、強くて……

 えっと……

 すごく可愛かった!」



 社は顔を真っ赤にし、

 言い慣れないセリフを風吹に聞かせた。



 すると——



「ちょっと〜っ。

 みんなの前でやめろよぉ〜。

 2人の時に言えばいいのにさぁ。

 ラブラブのお惚気コンビに

 思われるじゃんかぁ〜」



 風吹が欲しかったのは、

 称号でもなんでもない。


 社からの称賛——


 むしろ、

 頑張ったことへの

 労いの言葉などではなく、

 

 ——可愛い


 という言葉が欲しかったようだ。



「いくらなんでも

 これだけひとがいるんだ……

 キスとかはダメだぞ」


「大丈夫だ。

 しないから……」


 

 風吹が舞い上がる横で、

 鵺が雨女の襟を掴んで持ち上げていた。



「もう帰んのかい……」


「もう殺す奴もいねぇーんだ。

 ここにいたって仕方ねーだろがよ!」



 雨女が襟を掴まれながら

 みんなに頭を下げている。



「あばよ……」


「鵺、今度はもう少しゆっくり

 飛んで——」


 

 次の瞬間——



「きゃあぁぁぁぁぁぁっ!

 首があぁぁぁー!」



 鵺と雨女は弧を描き、

 猛スピードで夜空へ消えていった。



「相変わらずせわしない奴やで……」

 


 風吹たちが、

 鵺たちの去っていった先を

 眺めていると——

 

 氷花が朧車に乗り込んでいった。

 

 火鳥も慌ててみんなに挨拶をして

 駆け込んでいく。


 

「わたしたちは鞍馬山に

 戻らせてもらうよ。

 また近々会うことになる

 だろうしさ……

 その時はよろしく頼むよ」



 そう言うと、

 朧車とともに霞となって消えていった。

 

 いつもの氷花なら、

 何かひとつ嫌味を残していきそうなものだった。


 だが今日は、

 笑顔すら見せなかった。

 


「なんだよ、

 愛想のない女狐だな。

 何急いでんだよ」


「鞍馬山が奇襲を受けたらしい。

 天狗の爺さんも仲間も

 皆殺しされたんやと——」


「!」

 


 風吹と社の息が詰まった。



「牛丸さんが死んだって?

 嘘つけよ!」


「ほんまや……

 鈴鹿御前にやられたみたいや。

 詳しくは確認できてへんけど、

 それをきっかけに、九尾へ目覚めたんやろ」


「……」


 

 風吹は言葉が出なかった。

 

 そんなことになっているとは、

 まったく知らなかったのだ。



「わたしってば浮かれてさ……。

 全然空気読めてない奴じゃん……」


「これからアイツら大変やで……」


「葬送の儀の準備とかあるからだろ?

 わたしこの前、にいにの葬送したばかりだから、

 何か手伝えるんじゃないかな……」


「ちゃうちゃう。

 大変なんは、主が死んだということや。

 つまり、管理地域一帯を守る主が、

 いなくなったってことが大変なんや」


「主が死ぬと、ヤバいのかよ?」


「あの天狗の爺さんは、

 もしもの時に備えて

 火鳥に色々仕込んでたみたいやから

 最悪の状況にはならんやろう……」


「最悪の状況って?」


「主不在の土地は、

 他所の主に狙われる……

 つまり領土争いが始まるんや」


「!」


「まぁ、それに備えて

 火鳥に権限譲渡してたんやろうし、

 九尾も復活した——

 周りの妖怪も迂闊には手を出せんわな」


「なんだよ……

 みんな弔うことよりも

 領土争いとか考えるのかよ」


「そんなもんやで妖怪も人間も……

 悲しんだり弔ったりする

 暇のある奴は、

 だいたい寝首をかかれよる……」


「……」



 風吹にとっては、

 氷花や火鳥に悲しむ時間がない——


 その事実が気の毒で

 仕方がなかった。


 

 風吹の父である風善も地域主だ。


 店長の話から父の責任の重さを知り、

 風吹は風善の苦労を一層理解したのだった。



 ——————



 その頃、

 街を覆っていた結界は消え、

 百鬼夜行に参加していた妖怪たちは、

 新四天王の敗北を知り尻尾を巻いて

 逃げていった。


 新四天王が

 計画していた百鬼夜行の夜は

 失敗に終わった。

 

 風吹たちの活躍で、

 妖怪も、人間も、街も、

 いつもの平和を取り戻した。


 長い戦いは、

 ついに終幕を迎えたのだった。


 


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