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かまいたちの嫁~妖怪女子高生と退魔教師は今日も怪異を斬る~  作者: 鬼喜怪快
第七章 百鬼夜行の夜

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78話 裸の王様



 一言主神の力で、

 八岐大蛇の能力の発動を

 完全に封じた。


 

「ふざけ……るな」


「ふざけてなんかないよ。

 そして……

 一言主神からの——」

 

『封印の式!』


 

 八岐大蛇が光の壁に囲まれた。


 念には念を入れての

 重ね封印だ。

 

 

「一言主神の効果は3分程度……

 この封印の式は、いまのお前なら

 しばらくは抑え込めるよ」


「……」


「お前はもう、何もできない」


「……クソがっ」

 


 八岐大蛇の能力が封じられたことで、

 店長を捕らえていた封印陣も消滅した。

 


「……ようやく自由になれたで」


 

 店長は肩を回しながら、

 風吹たちのもとへ向かった。


 

 ——————


 

「先生、やったね」


「風吹のおかげだよ。

 俺も呪力に余裕がなかったから

 これを外すわけにはいかなかった」


「へへっ」


「風吹が完全に決めてくれたから、

 成功した封印だよ」

 

「これって、

 婚前の共同作業になるよね?」


「……ならないよ」


 

 そこに店長がやってきた。


 

「大したもんやで、お前ら」


「おっ!

 封印店長じゃん!」


「変なあだ名付けんなや」


「こいつどうすんの?」


「あぁ。

 それはなぁ……」


 

 店長が空を見上げた。


 

「——来たか」


「?」


 

 一帯に黒雲が立ち込めた。


 雷鳴が鳴り響き、

 紫の雷がこちらへ迫ってくる。


 

「八岐大蛇ぁ!

 ぶっ殺してやるぜえぇぇーいっ!」


「鵺ーっ!

 スピード下げてぇ!

 首が折れちゃうよぉ!」


 

 夜行を始末した、

 四天王・鵺と雨女が到着した。


 

「くそっ!

 やっぱり終わってんじゃねーか!」


「だから言ったじゃん!

 ボクたちが行っても

 もう遅いって!」


 

 鵺は足元に転がっている、

 八岐大蛇の頭部を見下ろした。


 

「王様になる前に、

 随分と無様な姿になっちまったなぁ。

 クソ蛇野郎が……」


「ねぇ、鵺……

 あの人間と、あの陰鬱な妖怪……

 妖気に異様な反応があるんだけど……

 誰なの?」


「あの人間は世にも奇妙な、

 酒呑童子を宿す人間だ」


「しゅ、酒呑童子!?」


「で……

 あっちの陰鬱な奴が土蜘蛛」



 即座に店長は突っ込んだ。


 

「誰が陰鬱やねん」


「テメェーだよ」


「殺したろけ?」


「やってみろや昆虫妖怪」



 見かねた社が間に入った。


  

「ふたりとも、

 そこまでだよ……」

 


 その時だった。


 

「!」


 

 その場にいる全員が、

 同時に空を見上げた。


 空気が変わる。


 鵺や土蜘蛛ですら、

 その妖気を感じ取った瞬間、

 表情を変えた。


 一帯に緊張が走る。

 

 すると、

 1台の朧車の姿が浮かび上がった。


 その中から、

 まず火鳥が降りて来た。


 そして——


 金色の髪を靡かせた九尾の狐、

 氷花が、

 ゆっくりと地上へ降り立った。


 

「あれ?

 ねぇ鵺、

 あの人ってマヨヒガで会った

 妖狐のひとだよね……」


「きゅ、九尾の狐じゃねーか!?

 どうして玉藻がいるんだよ!」


 

 氷花は、

 集まる者たちのもとへ歩いてくる。


 

「おいおい……

 まんまの玉藻御前やんけ。

 何を一体どうしたらそうなるねん……」


 

 鵺も土蜘蛛も、

 先ほどまでの喧嘩を忘れていた。


 九尾の妖気——


 その圧倒的な存在感に、

 誰もが身構えた。


 

「玉藻ではないよ……」


 

 氷花は静かに笑った。


 

「わたしは氷花……

 鞍馬山の九尾の狐・氷花さ」


 

 その妖気は、

 その場にいる者たちを

 威圧するには十分過ぎるものだった。


 しかし風吹は——


 

「どのタイミングで

 ブリーチしたんだよ?

 こっちは前髪焦がして

 大変だったのにさ!」


 

 1人だけ考えていることが違った。


 

「お嬢ちゃんは、

 随分強くなったねぇ……

 八岐大蛇を倒してしまうとは

 驚きだよ……」


「まぁね。

 あんたも強くなったみたいだな」


「ありがとう……」


 

 八岐大蛇は地面に転がったまま、

 その場に集まった者たちを見ていた。


 土蜘蛛。


 鵺。


 人間に宿る酒呑童子。


 そして——

 九尾の狐・氷花。


 かつてとは形を変えながらも、

 日本四天王が一堂に揃っていた。


 

「……」


 

 八岐大蛇の瞳が揺れる。


 

「鈴鹿御前……」


「?」


「鈴鹿御前はどうした!?」


 

 その問いに、

 氷花が答えた。


 

「今頃……

 50回目くらいの死を味わっている

 頃だろうかねぇ……」


「……50回目の死?」


「100回死ねば……

 本当に死ねるようにしてあるから……」


「……」


 

 八岐大蛇は言葉を失った。


 土蜘蛛が、

 ゆっくりと八岐大蛇の前に立った。


 

「麒麟はうちのバイトふたりに負けた」


「……」


「夜行は鵺に負けた」


「……」


「鈴鹿御前は九尾に負けた」


「……」


 

 店長は一度言葉を止めた。

 

 そして再び、

 八岐大蛇を見下ろす。


 

「そしてお前は、

 かまいたちと人間に負けた」


「……黙れ!」


「お前が見下しとった、

 かまいたちと人間にボッコボコに

 されたんや!」


「黙れぇ……」


 

 八岐大蛇の顔が歪む。


 

「お前らが掻き集めた新四天王……」


「……」


「全員負けよった」


「役立たずどもがぁ!」


 

 八岐大蛇が大きな声を上げた。


 

「……見るな」


 

 八岐大蛇の声が震え出した。


 

「そんな……

 そんな目で——」

 

「俺を見るなぁ!

 俺を……見下すなぁ!」


「君を殺してやろうと

 ここまで来たけど……」


 

 氷花が、

 冷たい目を向ける。


 

「その無様……

 もう殺す気すら失せたよ」


「けっ!

 こんな奴殺したところで

 面白くともなんともねえや!」


 

 店長が、

 八岐大蛇を見下ろして言った。


 

「ここにいる連中はなぁ……

 誰一人、四天王になりたいと思って

 なったわけちゃうで」


「……」


「全国の妖怪から選ばれて、

 気付いたらそう呼ばれとった」


「……それがどうした!」


「四天王の名前欲しさに、

 仲間集めて王様ごっこしとった

 お前らとはちゃうねん」


「うるさい!」


 

 八岐大蛇が吠える。


 

「おのれ!

 おのれぇ、四天王!」


「……」


「この怨み忘れまいぞ!」


「蛇はしつこいって言うからなぁ……」


「次は必ず!

 次こそは必ず、

 最高のメンバーを揃えて——」


「……次?」


 

 店長が、

 小さく笑った。


 

「お前に次があるわけないやろ……」


「……えっ?」


 

 いつからそこにいたのか。


 店長の背後に——

 巨大な影があった。


 家一軒ほどもある巨大な蜘蛛。


 

「ぎゃあぁぁーっ!」


 

 風吹が、

 その姿を見て絶叫した。


 

「九尾といい、土蜘蛛といい……

 本体を晒すなんて

 数百年ぶりなんじゃねーの?」


 鵺の声をよそに——


 巨大な土蜘蛛の本体が、

 八岐大蛇の前へと降り立った。


 

「まっ……待て」


 

 八岐大蛇の顔から、

 初めて完全に余裕が消えた。


 

「土蜘蛛……

 待て……

 話を——」


 

 巨大な顎が開く。


 

「待てぇぇぇぇぇ——!」


 ——バチュンッ!


 八岐大蛇の叫びが、

 途中で途切れた。


 

 土蜘蛛の本体は

 音を立てながら——

 

 八岐大蛇を、

 頭から貪り喰っていた。




 

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